山口さん 和尚さん みなさん
須賀です。
山口さん:
> それはともかく、「自然保護」という言葉は反古にできませんかね。
このことばをつかわずにすませられるようになればいいなあ、と
わたしも思ってきました。ただ、つかわないわけにいかないときも
あるので、そういうときのために、わたしはこういうOHPを用意
して、もう何年もつかっています。(またこの話題ですか、といわれ
そうですが。)
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自然環境の「保全」と「保存」
「保全」=conservation(人間のため)
「保全」とは、「…にそなえた節約」、つまり将来の消費にそなえ
た天然資源の節約のように、最終的には人間のために自然環境を保全
しようということを意味している。
「保存」=preservation(対象のため)
それに対して、「保存」とは「…からの保護」、つまり生物の種や
原野を損傷なり破壊なりの危険から保護することを意味している。
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こういうものをお見せしながら、どちらも重要だと思いますし、互い
に重複する部分もありますので二者択一のようにいつでも分けること
のできるものだとも思いませんが、状況によってどちらに重心をおい
て考えるのがいいかは変わってくるのではないでしょうか、といった
ことばをつけくわえます。
上の「保全」と「保存」の説明は、沼田眞編『自然保護ハンドブック』
(朝倉書店、1998年)の294〜295ページにある鬼頭秀一さんの文を
拝借したものです。J・パスモア著/間瀬啓充訳『自然に対する人間の
責任』(岩波書店、1998年)の123ページにもよく似た表現があります。
こういったことばの意味のちがいは、自然環境の保全について日ごろ
からよく考えておられる方々のほとんどにとっては、おそらく常識に
近いようなことなのではないかと思いますが、一方、「保護」と別の
自然環境の「保全」とはなにか、ということについて、社会のなかで
の対話というか理解の共有が足りているかといえば、まだそんなこと
はないと思います。この点、山口さんと同じ意見です。
わたしも、何かの会合のときに上の説明をしたあと、県の自然保護の
担当者から、目からうろこがおちた、という意味のことをいわれて、
え? このひとも? と逆に驚いてしまったことがあります。
連想で話が飛びますが、たまたま目にしたある文にこんなことばが
あって、印象に残りました。
「…お上の説教ではコモンズはできない。地域をリードする小さな
リーダーがちょぼちょぼいることがとても大事だと思いますね。
ただし、回りの人がすぐにリーダーに付いていくわけではない
ので、リーダーになる人は辛抱強くなくてはなりません(笑)。」
(『たぁくらたぁ』創刊第2号 「公」のないニッポン
茅野実(長野県環境保全協会会長)インタビュー)
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須賀 丈(SUKA Takeshi)
〒381-0075 長野市北郷2054-120
長野県環境保全研究所(飯綱庁舎)
自然環境チーム 動植物生態グループ
Tel: (026)239-1031 Fax: (026)239-2929
E-mail: suka-takeshi@pref.nagano.jp
○4月から所属先の名称が変わりました。
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