[BlueSky:06272] 自然保護について


[From] "Yamaguchi" [Date] Wed, 15 Dec 2004 17:07:07 +0900

皆さんご無沙汰しています。琉球大学の山口です。

> 日本農業を駄目した「農業保護政策」と同じで、「保護/援助」しても被保護、被援助
> 者は決して守れません。どんどん駄目にするばかりです。これは日本のお坊ちゃん、お
>
> 嬢ちゃんも同じですね。黄土の例では、中国政府は一生懸命木を植えさせようとして、
>
> 一本木(日本の某大学の偉い先生の妄言に乗って、これがポプラだから最悪なんですけ
> どね)を植えたら小麦粉を何グラムって配った。援助したわけです。日本のODAのお金
> もだいぶ入っていたかもしれません。その結果何が起きたか?土地の人は小麦粉が美味
> いことを知ったが、山に木を植える大切者は理解しなかった。ある日、予算が尽きたら
> 、彼らは山の木を切って薪にし、小麦粉で出来た食べ物を食べだした。小麦粉を買うに
> は現金が要る。現金を得るためには都会に行くしかない。かくして農村部は荒廃し、人
>
> 々は依存心のみを手にした。日本の農業も、社会も、教育も似たような構図があるんじ
> ゃないでしょうか?

上の和尚さんのコメントに触発されたのは、昨日から元役人で某大学のH教授
(サイトのURL: http://www.eurus.dti.ne.jp/~hisatake/ )
と、中央省庁の役人による地方行政の保護支配思想についてやり取りしていたからです)。


痴呆行政を作ったのは中央省庁の責任であると責めたら、いつも聞いていたお返事がありました。

それはともかく、「自然保護」という言葉は反古にできませんかね。
環境省がサンゴ礁の保護だとか言って、自然再生計画という見当違いの自然干渉を
やろうとしています。自然は保護するものだと勘違いしている世間に受けは良いかも
知れない計画ですが、ろくでもないことが進行する予感がします。

先日私がやった講義(テーマ:造礁サンゴの繁殖戦略)で学生から毎度おなじみの
質問が出ました。下がその質問と私の回答です。

Q サンゴを人工繁殖させて増やしていくことはできないか、人為的に交雑させて白化に強いサンゴやオニヒトデに捕食されにくいサンゴは作れないか

A 人間から見て都合のよい性質を持ったサンゴを交雑で作るというような、サンゴを栽培生物のように考えて管理しようと考えること自体が環境保全の立場から見て根本的に間違っている。同じ種であっても自然選択で白化に強いサンゴの系統集団が生き残っているケースがあるらしいので、自然の営みにむやみに干渉すべきではない。

造礁サンゴは減っても自然に回復する力をもっているので、それが回復できない場合は何らかの問題があるはずである。その問題を解決しようとせずに人為的に増やそうとしても望ましい結果がでるはずがない。オニヒトデの大量発生による食害があっても自然回復は必ず起こっている。それが場所によって回復が進まないで思わしくない状態になっているならば、サンゴの生育と回復を阻害している環境悪化や人間による過剰な干渉などがあるのだろう。サンゴが旺盛に生育できるような自然環境を保全するため、沿岸環境の破壊と水質汚染を防ぐ事が基本である。

山口正士
903-0213 沖縄県中頭郡西原町千原1
琉球大学理学部海洋自然科学科




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