[BlueSky:06112] Re: 科学技術振興についてのパブコメ


[From] "SUKA Takeshi" [Date] Wed, 15 Sep 2004 10:33:41 +0900

ゲンゴロウさん みなさん

     須賀です。ご返事ありがとうございます。

ゲンゴロウさん:
> で、いつも、真っ先に科学素人の私が口を挟んでしまい申し訳ない
> のですが、感想を・・・

いえ、これはゲンゴロウさんのような方にもぜひ発言していただきたい
テーマです(別にわたしは文部科学省の担当者じゃないので、その立場
からじゃなくて、ただ個人的にそう思っているだけなのですが)。

こういうパブリックコメントって、普段から科学技術政策に関心をもって
いるような(たぶん国民全体からみるとひとにぎりの)ひとたちの目にしか
とまりにくいのではないでしょうか。それでは十分に国民の声を反映した
議論になっていかないのではないか、それではいかん、と思ったので、
多士済々のこの青空メーリングリストのみなさんにもお知らせすることに
したわけです。なぜなら、これは「科学技術」という「業界」だけにかかわる
テーマではなくて、「科学技術」が生みだすものを通じて、生活や環境や
社会や文化にもはねかえってくるテーマだろうからです。

> 須賀:
> > 文部科学省が、科学技術の振興についての意見を募集しています。
> > http://www.mext.go.jp/b_menu/public/2004/04090701.htm

ゲンゴロウさん:
> この↑中のこの部分↓を、さらっとですが読みました。
> −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
> 「科学技術基本計画のポイント」
> http://www.mext.go.jp/a_menu/kagaku/kihon/point.htm
> −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
>
> 要は、科学重視主義の上の考え方での意見募集で、主眼は、
> すでに決まっていて、「国際競争力を持てる科学者の養成」に
> なるような、そんな気がしました。

補足しておきますと、上の「科学技術基本計画のポイント」は、
2001〜2005年度を対象とした現行の「第2期」の計画についての説明
ですね。そして今回の意見募集は、それにひきつづく「第3期」の計画
をつくるためのものです。ですから(少なくともかたちのうえでは)「第2期」
の計画だけにしばられる必要はないし、むしろ情勢の変化もみすえて
内容を変えていくことが前提になっている、と理解していいのではない
でしょうか。しかし、計画をつくるひとたちに対して外からの情報がない
と、思考が同じようなところをぐるぐるまわってしまう可能性があります
ので、もしこれを変える必要があるなら、どんどん意見を言っていくのが
いいと思います。

ゲンゴロウさん:
> 科学省ならば、それでもいいのですが、文部科学省が、それで
> あると、ちょっと考えてしまいます。(まあ、これだけを打ち出して
> いるのではないでしょうが・・・)
>
> とにかく、仮に、もしも、ということで、言うのですが、、
> 教育が、優秀な人材の育成を主眼に置くと、それは、教育の
> 過程が、優秀な人材の発掘になってしまい、副産物で、優秀で
> ない人間の教育がなおざりにされ、結果、優秀でない人間を
> どんどんと生産してしまうことになるような気がします。

確かに、科学技術振興のための政策が、ノーベル賞受賞者をふやすという
ように脚光をあびるひとにぎりのひとたちをつくりだすことや、経済的な国際
競争力を高めるというようなところにばかりかたよって(重点配分されて)
しまうと、別のところに問題が出てくるでしょうね。おっしゃるように、学校での
科学教育をどのようにしていくかということもそのひとつでしょう。それから、
今、地方分権がひとつの課題になっていますが、地方にいろいろな権限を
移したときに、それらの政策上の課題に対応できるだけの科学技術関係
の担当能力が自治体にできているか、というようなこともあると思います。

ゲンゴロウさん:
> 優秀でない、私の様な者には、もっと、ゆっくりと考える時間が
> 欲しかった。

わたしも、もっと、ゆっくりと考える時間がほしいです。

というか、話題がちょっとずれてしまうのですが、国民や政府のなかで、
科学技術を振興することについて、長い視野での合意形成が十分にできている
と果たしていえるでしょうか。

科学技術の振興のために、どういう政策がとられると、どういう影響が生活や
環境や社会や文化におよぶのか、といったことをもっとじっくりと吟味すること
が必要な気がします。

きのうご紹介したこの本:
 伊勢田哲治 『疑似科学と科学の哲学』2003年 名古屋大学出版会
の 「第4章 科学と疑似科学と社会 ―代替医療を題材に」 をよんで
みると、西洋近代医療とその枠におさまらない「代替医療」の関係、
ルイセンコ事件、水俣病事件、進化教育に対立する創造科学、といった
事例を検討しながら、政策問題としてこれらをどのように判断したらいい
のか、そしてその判断の根拠はどこに置くことができるのか、といったこと
が論じられていました。そして社会的価値判断と知的価値判断を混同
しないこと、そのうえで、両者のバランスをうまくとって政策判断する必要
があることが(ここでわたしが紹介できるよりもずっと緻密に)説明されて
いました。この内容は第5章で「もうすこしフォーマルに」説明されると
予告されています。

科学技術政策に興味をおもちの方にもおすすめしたい本です。

ゲンゴロウさん:
> 上記のページに「21世紀の展望」とあり、
> 「 人口問題、水・食料・資源エネルギー、温暖化、感染症 等
> 地球規模問題への対応、国際貢献」とありました。
> 正に、環境が重視されていますね。

そうですね。そしてそれをどんなふうに重視するかを考えることも大事な
ことだと思います。

今日はこれから野外調査に出かけてきます。

    須賀 丈




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