[BlueSky: 61] Re: 複雑学?


[From] "Kaz. Yokoyama" [Date] Mon, 12 Jul 1999 14:54:48 +0900

後藤さん,紺野さんこんにちは,

和尚.横山@農環研です。
紺野さんの「人類小型化他」と,後藤さんからの「複雑学?」との問いかけにお応えします。

子供のころ30年くらい前に見た,テレビ番組ウルトラQに「人類8分の1計画」と言うの
がありましたね。その時の動機も確か食糧問題だったと記憶しています。
私たちの考えもあんまり進歩してないみたいですね。

遺伝子なんかいじっても生物の大きさを大幅に変えることは当分無理でしょう。
だって,遺伝子の協調発現による表現型形成のしくみは殆ど解ってないし,
大きさが変わると言うことは物性的意味からも大変化です。おそらく進化的
単位の時間がかかるでしょう。形態を司るとされるホメオboxとかいじっても,
無脳児を作り出すのがせきのやまでしょうね。

環境やエネルギーなど人間の存在を支える必須の資源について考える場合,時間軸に
直交する方向,つまりその時にどれだけ仕事をしたかではなく,時間軸にそった方向,
その仕事をどれだけ長く持続させられるかで考えてみる必要があると思います。

人間の欲求は限りが無く,私もやりたいことは山ほどあります。今までは科学技術がそれ
を可能にしてきたのも事実です。しかし,立ち止まって考えてみると科学技術が可能に
したのは,資源の一時的消費効率を飛躍的に高めた,言い換えれば未来の資源を
現在に,一気に消費させただけで,新たな資源を創出してくれたのではなかったのです。
その事に気づいた今,それでも「もっともっと」と希望するのは無邪気すぎると言わざるを
得ません。そしてそれがあたかも可能なように吹聴するのは科学者として知的誠実さに
欠けると考えます。ですから,人類の持続的生存のために私たちの生活水準が1960年
代に,あるいはもっと前に下げる必要があるということなら,私は同意します。

そもそも現在の豊かさが,世界中のどこかの無知と貧困によって支えられていることを忘
れないでくださいね。そう言う意味で前投稿では「豊かさの意味」と申し上げたのです。
それでも「もっと豊かさを」と言われるのであれば,どうぞご自由にと言うしかありません。

更に申せば,環境など,多くの要素が動的に相互作用しながら時間発展するシステム
の未来を予測することは不可能なことは,非線形系でのカオスの発生が実証したではな
いですか。だとしたら,私たちは未来に対して十分悲観論者であり,自らの行いには
慎重であるべきなのです。それが未来の地球の生き物に対する知者としての責務だと
信じます。

しかし,現実には私たちは余りにも楽観論者過ぎたようです。

現在登録されている人工化合物はなんと約2000万種,そのうち既に実際流通してい
るものが20万種に上ります。この中で,単独での人体への毒性が調べられているもの
はわずか2000種に過ぎません。この2000種にしても,今や環境中に遍在する界面
活性剤など他の物質と共存条件下でどんな作用をするのか全くの未知です。20万の
物質の組み合わせの数は2の20万乗ですよ。とっても調べることさえ不可能です。
それらが,生態系に及ぼす影響??予測不可能と言うしかないでしょう・・・・・

それだけのものを私たちは既にぶちまけてしまって,後は何とかなるさで来てるわけ
です。使える資源は未来のものまで使ってしまって,問題は先送りです。きっと22世紀
の教科書で私たちの世代は大悪人か,道理をわきまえぬ大うつけでしょうね。

個人的意見ですが,これからの科学技術は人間のハンディキャップを補うために使わ
れて欲しいです。強靱な肉体と反射神経が無いと事故を起こしてしまうハイパワーカー
ではなく,歳をとって足が弱くなった老人でも郊外のスーパーに一人で買い物に行ける
ようにする一人乗りの電気自動車とか。寝たきりになった人でも世界中の人と意志疎通
ができるバリアフリーなコンピュータネットワークとか・・・

これからはこういう製品が競争力を持つ(その会社の株は上がる)と思います。

以上,分解して(科)考え(学)られない複雑なこと諸々を一生懸命考えることを
勝手に「複雑学」と称しています。

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Kaz. Yokoyama kazunari@affrc.go.jp


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