[BlueSky: 5813] Re:5780 食と農シンポジウム


[From] Minato Nakazawa [Date] Tue, 24 Feb 2004 11:42:14 +0900

中澤です。昨日の朝,締め切りを2ヶ月過ぎた原稿を書き終えた
のでやっと一息つけました(といっても昨夜のうちに修正指令が
届いたので,まだ終わったわけではないのですが)。

>と「枕草子」http://phi.ypu.jp/ に書いていらした、
東大にいたときのweb日記にはそういうタイトルをつけていましたが,
今は日記というほどのものではなく,ただのメモですので,文章に
なっていないものが多々あります。

>主催者側が、当然のように土台というか、前提としているものに、
>疑問を感じられたということですか?
>内部にいると見えなくなってしまっていることが、あると思うので、
>いつかお時間がある時にでも、お話をうかがわせて下さい。
そこまで深い話ではありません。
あのシンポジウムは,大都市と農村というあり方を所与のものとして,
その間のギャップを埋めるために流通を進歩させてトレーサビリティ
という仕掛けを考えました,という場だったのですよね。少なくとも
基本的には。

でも,いくらいい仕掛けを考えても,情報というものが,

伝えようとして選ばれた(しかも伝えることができる)ものしか
伝わらない点

に限界があって,まさにそこに不安の原点があるのなら,そもそも
大都市と農村というあり方をやめて地産地消を進めたほうが不安解消
には効果的なはずです。しかし,これは生産と切り離された大都市での
生活というあり方をやめよう,とか,流通はなるべく減らした方がいい
ということですから,流通の方や消費生活アドヴァイザーの方が参加
されているセッションでは言えませんよね。その「立場」を全否定すること
になりかねませんから。
# もっとも,「難しい話はわかりませんから,安全は専門家にお任せ
# して云々」と言われたときにはカチンと来て,よほど言ってやろうか
# と思いましたが。
# 専門家に任せられないのが問題だという話をしているのに全く伝わって
# いなかったわけですよね。

長野市では近郊の農家の方が毎朝野菜を運んでくる無人販売所が増えて
いて,新鮮ですし,朝行けばその方と話をしたりすることができます。
そうすることで近くなる距離というのは,生産現場の動画配信で近く
なる距離や,棚に並んでいる野菜がどこからどういう経路できたかと
いう情報を知ることで近くなる距離とは,たぶん少々異質なものだと
思うのです。自分でリンゴの木の世話をして(といっても全部した
わけではなくて,簡単な作業だけですが)得られたもぎたてのリンゴ
の美味さというのは,いくら流通の技術が進んでも大都市では得られ
ないでしょう。認知が脳だけではなくて,五感でなされる以上。
たぶん,どれだけ技術革新が進んでも,人間の認知機能
の方が変わらない限り(まあ,そっちが変わってしまう可能性もなく
はないですが),この違いは埋められないような気がします。

さらに余談ですが,例のシンポジウムの最後にちょっと触れた食品安全委員会
ですが,今日の午後,第5回のリスクコミュニケーション専門調査会
を一般公開で開くそうです。
http://www8.cao.go.jp/shokuhin/osirase/risk_annai.html
ご参考まで。

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Minato Nakazawa <minato@ypu.jp> http://phi.ypu.jp/
Associate Professor for Public Health and Informatics,
School of Nursing, Yamaguchi-Prefectural University
Phone +81-83-933-1453 / FAX +81-83-933-1483


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