[BlueSky: 5548] 都市と田舎


[From] "suka" [Date] Thu, 27 Nov 2003 10:42:44 +0900

みなさん
       須賀です。

横山さん:
> 私は都市環境が殊更子育てに不適切な環境とは思いません(ことさら良いとも
> 勿論思いません)が、そんなことよりもっと重要な変化が人間社会に起きている
> ことを本書は明解に示していると思いました。

考えてみれば、ひとことで都市環境といっても、たとえば近代以前
だとか昭和のはじめごろなどにさかのぼって想像してみれば、今
とはずいぶんちがっていたでしょうね。

たとえば京都のような古い町には、独特の都市文化があったでしょう
し、子どもが育つ環境としてみたときにも、今とはちがった側面が
おそらくたくさんあったのではないでしょうか。イスタンブール、パリ、
ジョグジャカルタ、など、その都市が位置する地域や文明の性格にも
よって、いろいろだったのではないかとも想像されます。都市人口の
なかに占める子どもの割合、そして子ども居場所そのものが小さく
なったことも、最近の日本の都市の変化としては大きなものかも
しれませんね。

今、近所へ引越しするため、家のなかの片づけをしています。
それで気がついたのですが、今から10年や20年位まえでも、わたし
はたくさんの「手紙」を書き、またひとからももらっていました。今なら
電子メールですませてしまうようなことでも、便箋やはがきに書いて
送っていたわけです。インターネットのおかげで、みなさんのような
方々とも知り合うことができるようになりましたし、少なくともわたし
にとってこのことは、今のところ困ることよりも恩恵として感じること
の方が多い変化です。そしてこの変化は、よい面とわるい面の両方
をともないながら、都市にも田舎にも起こりつつある変化ですね。

子どもの数と子どもの居場所が少なくなったこともまた、大都市だけ
ではなく長野県のような田舎にも共通したことがらです。わたしは関西
から長野県に移り住んできましたが、子どもの頃から地元に住んで
おられる方々の話をうかがうと、そう思います。道路が舗装されたり、
田畑が区画整理されたりして、学校の行きかえりなどに道草をして
虫を追いかけたり花をつんだりした環境はなくなってしまったといいます。

子どもが大人や他の子どもたちと接する条件も大きく変わったのでは
ないでしょうか。子どもが親や学校の先生以外の大人と接する機会は
昔に比べるとずっと少なくなったのではないかと思われます。いろいろ
な年齢の子どもたちが群れて遊ぶ場も少なくなったことでしょう。昔の
ように、たくさんの大人や子どもたちの間で育つのが、人間の子どもの
一番自然な育ち方なのでなはいかとも想像されるのですが。きっと
先史時代の子どもたちはそうして育ってきたことでしょう。

そして、こういう変化の結果として、今では特に若いおかあさんたちに
育児の負担が大きくのしかかるようになっているのではないかと思います。

又聞きなので、確かなところはわかりませんが、今日本ではひとりの
子どもを成人まで育てるのに平均して約2千万円かかるそうです。1年に
平均すれば約100万円です。これは家計への負担になりますから、
共働きで収入を増やすか何かしなければ、子どもをふやすことは
むずかしくなります。昔に比べたら、収入全体に占める割合はむしろ
小さくなっているのかもしれませんけれども、子どもの面倒をみるための
負担は金銭的なものだけではありません。子どもたちが道草できるような
環境をとりもどしたり、いろいろな年齢や立場の大人が一緒に子どもの
相手をしてあげられるようにするなど、社会的なサポートをふやすことを
もっと考えてもいいように思います。

こういうことはもちろん行政だけの力でできることではありません。
地域のひとたちが自発的に動いて、それを行政がサポートするという
かたちをとることになるのでしょうね。けれどもたとえば、今自分が仕事
をしている長野県の組織の仕事を通じてこういうことをしたいと考えると、
ものすごくたくさんの部局が関わってきて、その壁をのりこえるのは
一筋縄ではいかない大事業だな、という気がしてきます。

これに似たことを、子どもが育つ環境について考える場合にかぎらず、
いろいろな場面で感じます。たとえば、長野県のある町で、希少な生物
のあつまる生息地になっている休耕田があります。今は農家に助成金
が出るので、草刈などの手入れがなされていて、それが生物たちに
とっても良好な生息環境を保つことにつながっています。ところが、
その助成金がもうすぐなくなるそうなのです。そうなると、農家の方々
も高齢化していることですし、手入れはだんだんむずかしくなりますし、
お金にもならないならいっそ住宅地か何かとして転売したいと思われる
ようになるかもしれません。それならいっそ、行政のなかの環境部局が
動いて環境保全の見返りとして助成金を出せるようにすればいいのでは
ないかと思うのですが、行政の環境部局にはそれだけのお金はない
だろうなあ、ほかの仕事がいそがしすぎて他の部局に働きかけて調整を
するだけの人的・時間的な余裕も今はないだろうなあ、という気がして
きてしまったりします。

そうかといってあきらめてしまったのでは元も子もないので、とりあえず、
あきらめずにいろいろ考えてみよう、みなさんにもお話して、ご意見を
きいてみよう、そう思って、このメールを投稿することにしました。
みなさんはこういったことについて、どんなふうにお考えになりますか? 
忌憚のないご意見やアイデアをおきかせいただけましたらさいわいです。

   須賀 丈


▲前の記事へ ▼次の記事へ △記事索引へ △青空MLトップへ

(注)この記事が最新である場合,上記「次の記事へ」はデッドリンクです。