[BlueSky: 543] Re:534 環境農家の経営状況(ご参考)


[From] Minato Nakazawa [Date] Sat, 21 Aug 1999 15:14:25 +0900

中澤@東京大学人類生態です。

(件名:[BlueSky: 534] 環境農家の経営状況(ご参考)に於て)
Fri, 20 Aug 1999 22:45:11 +0900頃,AIKAWAさん:
> 農水省が、農薬や化学肥料の使用を、地域の慣行の半分以下に抑えている
> 稲作農家について調査した結果が新聞に出ていましたので紹介します。
農水省のサイトで,詳細な資料が公開されています。主な内容が
テキストなのに,Adobe Acrobat Reader 4.0Jをインストールしな
いと読めないという非利便性(※)が嫌ですが。URLは下記の通り。
http://www.maff.go.jp/work/990811-4.pdf
統計情報部の担当部局や問い合わせ先も出ています。

#(※)Acrobat 3.0Jをインストールしてあるマシンで読むためには,
#Reader4.0Jをインストールするだけでは3.0JのExchangeが起動して
#しまうので,一旦ダウンロードした後で4.0Jから開くという操作が
#必要なのです。Adobeへの文句というべきかもしれませんが。

同じプレスリリースでも,食品流通局からの「今後の食品産業環境
対策の推進の方向について」
http://www.maff.go.jp/work/syokusan.html
みたいにHTMLの場合もあります。

ここを読むと,生ゴミ処理の観点からも農業との連携が不可欠である
とか,食品産業はゴミができるだけ出ないようにしなくてはならない
とかいったことが書かれていて,心強いです。

相川さん:
> まとめ:経費と労働時間は大幅に増えるが、販売価格が高く、所得も多い。
たしか,信濃毎日新聞の報道では,「減農薬・減化学肥料」だと
所得も低くなるのでメリットに乏しいという論旨だったと思います。

「環境保全型農業」とされているものには,「(1)無農薬・無化学肥料」
「(2)無農薬」「(3)無化学肥料」「(4)減農薬または減化学肥料」の
4形態があります。前掲URLの表2から該当部分のみ引用します
(数字は慣行農法に対する割合%)。

対比項目 (1) (2) (3) (4)
粗収益/10a 132.5 125.2 110.9 96.1
経営費/10a 109.5 112.2 98.3 100.0
所得/10a 170.1 146.4 131.3 89.7
所得/労働1時間 113.2 86.9 111.0 79.5
収量/10a 81.1 83.4 84.3 88.9
販売価格/60kg 172.4 159.9 136.5 111.3
労働時間/10a 150.3 168.6 118.3 112.8

(3)と(4)を比べると,労働時間すらほとんど差がないので,やるなら
中途半端ではいかん,ということでしょうか。

もちろん,(1)をやれるような農家は最初から条件がいい可能性
(selection bias)があることに注意する必要はあります。環境保全型
にしても10アール当たり収量が慣行農法の81%以上は維持できる程度
には肥えた土地であり,かつ高い金を出して買ってくれる消費者が確保
できている,ということです。あと,地域間の物価の差を調整してある
のかどうかも不明ですね。その辺がちょっと弱いです。

それでも,「無農薬・無化学肥料」には所得の上でメリットがあると
いってよいと思います。10アール当たりの所得が慣行農法の1.7倍と
いうのは凄い値です。1.7倍の販売価格に支えられているわけで,
売れなかったら駄目ですが。
#産物にそれだけの差があるのかどうかは不明ですが,少なくとも
#消費者は差を認めているわけです。ある意味,消費者の信仰を利用
#していることになるのかも? この辺り,難しいです。

ご参考まで。

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Minato Nakazawa, Ph.D. <minato@sv3.humeco.m.u-tokyo.ac.jp>
Department of Human Ecology, Univ. Tokyo


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