[BlueSky: 5400] Re:5399 日本の人口減(家族)ついて


[From] Minato Nakazawa [Date] Thu, 02 Oct 2003 11:38:22 +0900

中澤@2児の父だけど単身赴任中(なるべく毎週末帰っていますが)です。

どこかで何度か書いたと思うのですが,人が死ななくなれば,
出生率も低下するのが当然です。そうでなければ地球が人で
溢れてしまいます。少子高齢社会は,先進国の公衆衛生政策が
求めてきた到達点なので,考えねばならないのは,いかに
少子高齢でもうまく成り立つような社会構築をするかという
ことでしょう。日本は少子高齢化の速度が欧米の多くの国よりも
速かったので,その悪影響が強く見えるような気がしますが。

長縄さん[5392]が
>当時「一姫二太郎三サンシー」というCMがはやり,アメリカからサンガー夫人が来
>日し、産児制限・家族計画の声が大きく、それは社会的な合意になっていました。
と書かれていますが,地球規模では人口爆発のリスクの方が
大きな問題になっていますし,女性の健康や人権(自己決定権
など)のためにリプロダクティブヘルスとかリプロダクティブライツ
を重視すべきだということになっているので,今だって日本を含む
先進国の保健医療の専門家は途上国に行って家族計画を推進するような
指導をしています。途上国側でも,多くの国では,保健省がそれを
当然のこととして受け入れて旗を振っています。
イスラム圏だけはちょっと違うところもありますが。
その当時の日本と同じ状況でしょう。

子供数が,資産や寿命と逆相関の関係にあるという研究があります。
これは,生物が自己の生存に費やすコストと,次世代を残すために
投資するコストがトレードオフの関係にあるからだという説明が
されています。詳しくは,
http://phi.ypu.jp/demography/longevity.html
をご覧ください。
時間が無いので詳しくは論証しませんが,これをちょっと拡大解釈
すれば,自己実現を追及すれば,次世代にかけるコストは減らざるを
えないので,子供数も減って当然となります。
社会経済学者のイースタリンのモデルは,そういうことを念頭に
おいて立てられていると思います。
関心のある方は,http://phi.ypu.jp/demography/demotran.html
をご覧ください。

葛貫さん[3597]
>アンケート調査というと、 [5371]でご紹介した「食卓は語る 食
>の実態から見えてくる問題」にでてきた正解主義と「ま、いいか」、
>「できる範囲で」と「できるだけ」等々の落差があり、どこまであ
>てになるのかなとも思います。
社人研のこの調査は,かなり時間をかけて練られたものが
継続的に実施されていますし,回収率もかなり高いので,
アンケート調査としての信頼性は高いと思います。
ベトナムの公務員とかだと,実際の値と目標値が合わないときは
実際の値を書き換えたりする(!目の前でやられてびっくりしました)
のですが,日本では,むしろ正直に答えるという規範意識の方が
強いような気がします。

>この理想や予定が、ご夫婦の希望というより社会的な規範、世間体
>に支配されたもので、それが標準、常識よみたいな話になってしま
>ったら、子供がほしくてもできない不妊症や不育症の人達には辛い
>「モラル」になるのではないか、と思いました。
この調査で,理想とか予定とか言っているのは,厳密に人口学的な
意味で定義された質問なので,たぶんそういう話にはなりません。
たしか,理想子ども数は,何の制約もなかったとしたら,子ども数は
何人が理想ですか? といった感じの質問で,予定子ども数
は,現在何人子どもがいますか? ということと,今後何人の
子どもが欲しいですか? ということ(たぶん文言は違いますが
内容的には合っているはずです)を質問して,それを合計した
値だったはずです。もちろん,理想は社会規範から作られるという
側面もあるにせよ,それは個人の意思決定が個人の属性と社会状況
の両方によるものである以上,仕方の無いことです。
希望子ども数という概念も別にあります。
もちろん,理想とか予定といった単純化された言葉と数字だけが
マスメディアを通して一人歩きする危険(たぶん,葛貫さんはそちらを
心配されているのですよね?)は怖いですが,調査そのものは
きちんとされているはずです。

>不妊症、不育症の原因が、先天的なものなのか、生活環境・習慣等
>によりもたらされた後天的なものなのか、後者であったら、改善の
>余地があるのか、これから研究されていくのかな。
両方あります。
「人口大事典」の中で生物学的出生力のところを担当したので
詳しく書きましたが,ぼくは,個人的には,肥満と低出生には
関連があるんじゃないかという仮説をもっています。

>生殖医療に関する社会・倫理的な問題をはじめとした種々の問題に
>ついてもこれからガイドラインをつくっていかなければならないし。
そうですね。

>慎重は兎に角として、高学歴や高収入があることは、暮していく上
>でプラスになることが多々あるだろうけれど、子育て等に適性があ
>るのは望ましいのは、1週間、山で一緒にキャンプ生活して苦にな
>らないような人(急場で、能書きを垂れたり、指示をとばしている
>ばかりではなく実務的に身体を動かせる。疲れ果てた時に、根性!
>精神力!とかいう精神論をぶつより、場の雰囲気を変えるユーモア
>を発揮できたり、甘い紅茶やチョコレートをちょこっと出せる。
>数日、雨で一緒にテントに閉じ込められても苦にならない、等々)
>だと思うんだけれどな(笑)。
同感です。

>子育てというと、確かに負担も大きいけれど、大人だけで生活して
>いたらしないだろうなと思うような、発見や遊びをすることも、
>ままあり、楽しいですよ(^^)。
>http://www.geocities.co.jp/NatureLand-Sky/1243/chestnut.html
これも本当に同感です。親が思いつきもしないことで熱中している
ので,面白さに気づかされたことも何度もあります。
数学者の藤原正彦さんが最近のエッセイで書かれていたのをみて
「発見ノート」を真似しようかと思ったくらいです。
子供が成長するにつれて,かかわっていく社会が変わるので,
こちらもだんだん地域社会のつながりが広がっていくのも
面白い点です。

講義前で時間がないのですが,ついつい反応してしまいました。

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Minato Nakazawa <minato@ypu.jp> http://phi.ypu.jp/
Associate Professor for Public Health and Informatics,
School of Nursing, Yamaguchi-Prefectural University
Phone +81-83-933-1453 / FAX +81-83-933-1483


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