[BlueSky: 5265] Re:5264 「環境保全」


[From] "suka" [Date] Thu, 31 Jul 2003 19:55:36 +0900

葛貫さん みなさん

       須賀です。

葛貫さん、ご返事をいただき、ありがとうございます。

葛貫さん:
> 現地だけではなく、そこに暮らしていない外の人からの思い入れのよ
> うなものも入ってくるわけで。

この話の流れからはちょっとずれてしまうような気もしますけれど、
ある地域のことに外のひとが関わることそれ自体は、単純によからぬ
ことともいえないのかもしれませんね。むしろ大切なのは、どのように
関わるか、という参加のなかみについて考えることなのでしょう。
地域住民をまきこんだコスタリカ・グアナカステ保全エリアの試みは、
国外からの寄付による基金とその利子にささえられています。

ひとのふるまいのあり方へのするどい洞察をふくんだ葛貫さんの
ご返事、ぼやけた頭にはあまりよくスジをたどることができません
でしたが、どういうわけか、とてもはげまされた気分になりました。
ありがとうございます。

コスタリカでなぜエコツーリズムがかなりの成功をおさめたか、
その理由ついては、ひとつかなりはっきりと確認できたような気の
することがあります。生物学や自然史についての膨大な研究の
蓄積があって、それがしっかりしたかたちで利用できるようになって
いることです。主として欧米の研究者によるものですが、図鑑や
書籍などが、主だった生物保護区では売店などで簡単に入手
できますし、そうした情報は、ツアーのガイドの方々によっても
利用されていました。ラセルバ研究施設のツアーガイドの方は、
コスタリカの大学でツーリズモを専攻した、生物学は専門じゃない
とおっしゃっていましたが、熱帯林をあるきながら解説してくださる
内容は、本格的な生態学の研究成果をふまえたものでした。
そういう解説があると、森のなかでみえてくるものが全然ちがって
きますし、格段に面白くなります。

コスタリカは、熱帯林の生物学的な研究がもっともよくおこなわれ
てきた国のひとつですから、その点では幸運だったといえるかも
しれません。

以前、マレー半島にあるタマンネガラ国立公園にある熱帯雨林
を休暇でおとずれたとき、欧米でひろくよまれている旅行ガイド
ブックに、ちょっとがっかりさせられる、といったことが書かれて
いて、気になったことがあります。この公園の熱帯雨林そのもの
は、その奥にまだトラが何十頭もいるというすごいもので、明け方
の鳥の声など、本当に圧倒される思いがしたものです。何ががっかり
するのかわからないな、などと思っていたのですが、コスタリカを
旅行してみて、自然解説の情報の密度のちがいかもしれないな、
と思いました。

マレーシアや日本をふくめて、エコツーリズムを地域発展の鍵に
できないかと考えている場所は少なくないと思います。それを
ささえる生物学や自然史の情報の大切さについてはどのくらい
認識されているのだろう。そんなこともちょっと気になります。

こんなことを書くと、昆虫の研究もごくたまにすることもある(?)
わたしのいうことですから、その意図はみえみえじゃないか、
ということになりますが、それはそういうこととして、みなさんも
ぜひ一度熱帯林のエコツーリズムを体験してみてください。

それではまた。

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須賀 丈(すかたけし)
長野県自然保護研究所
電話026-239-1031
Fax026-239-2929




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