[BlueSky: 5260] 1.ロシア森林劣化加速の恐れを孕む中ロ木材貿易の拡大2.インドネシアの違法伐採と日本の木材貿易


[From] "佐藤仁志" [Date] Tue, 29 Jul 2003 23:40:18 +0900

愛知県弥富町の佐藤仁志です

針葉樹人工林が悪者扱いされているようですが
針葉樹人工林が悪いのでなく、手入れし木材を利用してこなかった人間が悪いのでは
ないですか

以下の記事を事務局の了解を得て紹介します
無料ですので購読されたらいかがでしょうか


若干唐突な感じはしますが重要な記事のようか気がするのですがいかがでしょうか


http://www.fairwood.jp/

フェアウッドマガジン2号(記事の一部を引用します)

1.ロシア森林劣化加速の恐れを孕む中ロ木材貿易の拡大

  神奈川県自然環境保全センター研究部 山根 正伸 氏

1.はじめに

森林大国ロシアで、熱帯林とは異なったパターンの森林破壊が進んでいることは意外
に知られていない。大規模森林火災の頻発に粗放な商業伐採が加わって、人手の入ら
ない成熟林(天然林)が若い森林に置き換わる質的劣化が進んでいるのだ。この商業
伐採の加速要因として注目を集めているのが中国向け木材輸出の急速な拡大である。

中国のロシア材輸入量は、1996年以降、毎年平均40%以上の伸びで急速に拡大してき
た(図1)。2002年の輸入量は1,481万m3に達し、日本の輸入量の3倍以上になった。
2003年は2千万m3に及ぶ勢いで推移している。
図1 ロシア材輸入の推移(1992〜2002)

 本稿では、このような中国でのロシア材輸入急増の背景と実態を最近話題となって
いる違法材問題も含めて手短に紹介し、ロシア材の持続的木材貿易を考えてみたい。

2.ロシア材輸入急増の背景

中国は、国民一人あたりの木材消費量が約0.1m3と日本や米国と比べてまだかなり少
ないが、13億人近い人口の年間木材消費量は1億4千万m3を越え、世界有数の木材消費
国である。産業用途の原木は、国内の天然林から大半が調達されてきたが、このとこ
ろ輸入への依存度を高めている。とくに1996年以降に伸びが急激で、2001年の輸入量
は過去最高水準(1,686万m3)を更新し、2002年には2,433万m3にまで達して、世界の
木材市場に大きな影響を及ぼすようになっている。

このような急増の原因は需給両面がある。需要面では生活水準向上による住宅建設の
拡大、西部巨大開発や北京オリンピックといった国家プロジェクトによる建設用木材
の需要増加である。供給面では、過伐や大規模な森林火災による木材供給能力の大幅
な低下がある。また、「天然林保護プログラム」と呼ばれる森林保護政策が1998年に
始まり、天然林地帯で伐採禁止や伐採量削減が厳しく実施されたことが、天然林材の
供給低下に拍車をかけているのだ。中国政府は、木材需給バランスのため植林や代替
材利用などの対策も進めているが、短期的には木材輸入拡大が主力で、原木の関税撤
廃や国境貿易拡大政策などを順次打ち出してきた。

3.中ロ原木輸入の実態

ロシア産原木の輸入量シェアは2002年には6割を超えており、アカマツやカラマツな
どの針葉樹、タモやナラなど広葉樹の輸入材のほとんどがロシア産である。

これらは東シベリアや極東地域で生産され、大半が丸太のまま貨車あるいはトラック
により国境を越えて中国へ輸出される。黒龍江省の綏芬河、内蒙古自治区の満州里、
エレンホトが3大国境通過地点である。最も通関量が多い綏芬河は、豊かな森タイガ
を擁する極東南部地方と接している地理的関係から、広葉樹材の取扱量が際だって多
い。また、アムール川(黒龍江)やウスリー川をはさんで国境が長い黒龍江省には10
箇所以上の中小通関地点があり、少量だが輸入量は近年急速に伸びている。

輸入材は通関地点で一旦ストックされ業者が買い付け、北京などの大都市や木材加工
工場が多い沿岸地域に輸送後、建築用材やパネル、家具、床材など内装品に加工され
ている。中国製ロシア材製品の欧米や日本向けの輸出量は少なくない。木材市場は、
計画経済廃止後日が浅いため未発達で、ロシア材や製品の流通実態は不明な部分が多
い。
図2 ロシア国境通過駅から
中国に輸出されるロシア材
(沿海州グロデコボ駅、
1999年6月撮影)

4.違法材の輸入問題

ロシアでの木材の違法な伐採や輸送・輸出の横行は、ロシア側のほとんどの関係者が
認めている。しかし、その内容は、盗伐から伐採規則違反、税金逃れ、輸送許可書の
偽造など多様で、割合も1%から数十%まで調査主体や地域で大きく異なった推定値
がある。中国が輸入するロシア材にも、相当量の違法材が含まれており、中国国内で
不足し高値のタモやナラ、チョウセイゴヨウマツは、中ロ両国の闇社会も関わって組
織的な違法伐採・輸出が疑われている。これら樹種は、ロシアでは資源減少が進み森
林の質的劣化を招くとして伐採が制限・禁止されている。

中ロ両国政府は、政府間会合や国際会合などで問題対処を表明している。しかし、ロ
シアでは森林管理機構の弱体化や汚職・腐敗の蔓延などの構造的問題、不足する木材
の代替としてロシア材が欠かせない中国側の事情があり、4千kmに及ぶ中ロ国境、中
国企業のロシアでの活動活発化、零細な事業体中心の取引など多様な要因も加わっ
て、解決にはまだ時間がかかりそうだ。ロシア政府や森林管理当局、民間の林産企業
や輸入業者、環境NGOがロシア材の素性を洗う取り組みを始めたが、その効果はまだ
限定的である。

5.おわりに

国際社会は、ロシア木材資源の持続的利用に加えて、広大な森林の果たす炭素吸収源
としての役割や、生物多様性保全に強い関心を寄せており、ロシア材の持続的貿易の
実現への具体的行動を、関係各国に強く求めている。日本も、中国製ロシア材加工製
品の主要輸入国として、またロシア材の輸入大国として、関係各国と協調した積極的
取り組みが必要である。



2.インドネシアの違法伐採と日本の木材貿易

熱帯林行動ネットワーク(JATAN) 小浜 崇宏 氏

日本の主要な木材貿易相手国のひとつであるインドネシアは現在、伐採の持続可能性
や先住民族の権利といった重要な問題とは別に、違法伐採という大きな問題に頭を抱
えている。インドネシアは1980年代から1990年代にかけて合板産業や紙パルプ産業の
育成に成功し、木材産業が大きく成長した。その一方で、こうした木材産業による大
量の木材需要が生まれたことにより、伐採計画に違反した管理されていない森林伐採
や、伐採権のないグループによる違法な伐採が横行するようになった。

現在のインドネシア国内の木材加工産業の木材消費量は、最も少ない推測でも6300万
立方メートルとされているが、2002年に発給された伐採権に基づく木材生産量は1200
万立方メートルでしかなかった。
図3 森林保護区にもかかわらず
違法に伐採されてしまう
実に、木材需要の約8割が合法でない供給源からのものであったことになる。さら
に、今年の伐採権発給量は689万立方メートルと発表されていることから、その状況
はさらに悪化するものと思われる。

違法な伐採の形態は様々である。伐採権所有者によるものは、当局に提出した計画伐
採量を超えた伐採や、小径木や認可地域外の伐採があげられる。伐採権のないグルー
プによるものについては、地域の有力な実業家や軍などが地域の住民や他の地域から
の移民・出稼ぎ労働者を大規模に組織して行っているものや、隣国マレーシアの資本
家が関わっている事例が多々報告されている。国立公園などの保護区も例外でなく、
違法伐採が行われていない国立公園は1つだけであるとも言われている。こうした森
林破壊によって、5000万人とも言われる森林に依存している人々の生活が影響を受け
ているだけでなく、森林破壊が原因の洪水も多発し、多数の死者を出すなどの大きな
被害が発生している。

違法伐採は、主にラミン、ウリン、ケンパス、メランティなどの高値で売れる樹種が
対象となっている。特に、ラミンは伐採により急激に減少し、現在では国立公園以外
ではほとんど見られなくなったことから、2001年にワシントン条約に登録され、その
貿易が禁止されることになった。

違法に伐採された木材は、国内の加工工場に供給されるもののほか、隣国のマレーシ
アや中国などへ違法に輸出されるものもあり、違法な木材貿易の量は1000万立方メー
トルとも推測されている。マレーシアのサバとサラワクの木材加工産業はインドネシ
アの原木に大きく依存していると推測されており、マレーシアからはさらに、中国、
日本、台湾、香港などに輸出されていることが明らかになっている。

違法伐採の原因としては、政府職員による汚職や軍や警察による関与のほか、持続可
能な生産量をはるかに超えた木材産業の過大な木材需要があげられている。専門家の
間では、違法伐採の解決のためには、伐採現場よりも木材需要側(インドネシア国内
加工産業、海外需要を含む)における対策の方が重要であるという意見で一致してい
る。
図4 マレーシア向けに違法伐採
された木材を積み込んでいる現場
インドネシアの主要な木材製品である合板は、その約4割が日本に輸出されているこ
とを考えれば、消費国としての日本もインドネシアの違法伐採問題に大きく関わって
いると言える。インドネシア国内からも、「輸入国やユーザー企業も犯罪のパート
ナーである」といった声が聞かれる。

近年、欧米では、原生林(オールドグロス林)から産出された木材や紙の使用を停止
し、FSC(森林管理協議会)などの認証木材を利用する企業が急速に増加しており、
フォーチューン1000に選ばれている企業のうち、すでに50社以上がこうした取り組み
を行うことを発表している。一例として、アメリカ国内最大のホームセンターである
ホームデポ社は、今年1月に配布した報告書の中で、取り扱っている8900種類の木材
製品の原料供給源を把握し、インドネシア産木材の仕入れを70%削減したと報告し
た。現地の状況を考慮して、インドネシア材の取り扱いを停止する企業も出てきてい
る。

インドネシアの違法伐採をはじめとした世界の森林問題の解決のためには、実質的な
世界最大の木材輸入国である日本の取り組みが欠かせない。日本では熱帯材は、住宅
の下地材や造作材、ビルなどの建設時に使われるコンクリート型枠、家具などに用い
られているほか、ホームセンターなどでもラワン材などとして販売されている。熱帯
林行動ネットワークでは、政府が違法材と判明したものに対して輸入規制を行うこと
や、木材の各ユーザーが取り扱っている製品の原料の供給源を調査することによって
違法材や原生林材の利用を段階的に停止し、信頼できる制度によって認証された木材
や、製材残材・廃材などを利用した製品の利用を進める取り組みを提言している。

JATAN 違法材・原生林材不使用キャンペーンWEBサイト 
http://www.jca.apc.org/jatan/




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