こんな事がありました。
1. ある掲示板で、
「1+1=2 というけど、
実際の生活では、水に塩を溶かすときなど、
そうならないことが結構ある。科学とか信用できない。」
というような話が載りました。
それで私は、
「たし算というのは、ひとつの単位の世界の中で、
その単位に沿って、ものを数えるということであり、
溶かすというのは、そもそもたし算ではない。」
と、指摘しておきました。
もっとも今では、もうちょっと
「水に塩を溶かす場合、体積ベースではたし算にならない
しかし、重量ベースではたし算になる。
このことを了解しすることで、溶かすという事、
あるいはまた、重さ、体積というものの性質を
より深く理解する事につながる」
と書いておけばよかったかと思っています。
2. 知人宅に伺った際。
「『2×0=0というような0のかけ算について、
もともと2という数があるのに、なぜ答えが0
になるのか分からない、0でなくて良いではないか』
と書いてある本があったが、自分もそう思う、
そのように答えは一つじゃないということを
子供に教えようと思う。」
と言われました。
それで私は、
「かけ算というのは、単位の異なる違う種類の数を
組み合わせることにより、さらに違う種類(単位)の数が
出てくるというもので、登場する数の単位が全部違います。
だから0のかけ算というのは、組み合わせるべき
一方が0で、そもそも組み合わせることができないので、
新しいものは何もでてこない。だから答えは0です。
子供に嘘教えては駄目でしょう。」
といっておきました。
さて、上記の何れも、言っている本人は比較的意識の高い
人という印象でした。
そして、自分たちは、たし算・かけ算のことを知っている
つもりだったようです。実際は知らなかったのですが。
この問題が深刻なのは、どうも学校で教える側もこのことを
きちんとは分かっていないらしいところにあります。
最近ちょっと話に聞く小学校教師 陰山英男(漢字違うかも)
氏の本を、書店でちらっと見ましたが、単位が大事だと書いてあって
しかし、たしか薬の話で「1回3粒を1日2回」というのを
3(粒)×2(回)=6(粒)
と書いてありました。ガチョーン!!!
これだと最初の数の単位と答えの単位が一緒だという印象です。
本当は
3(粒/回)×2(回/日)=6(粒/日)
であって、単位もちゃんとかけ算になります。
このようにして、単位をちゃんと追っかければ、
その単位がどういう約束(測定法)で成り立って、
どう組み合わさっていくのか→「理科」
単位を一旦外したところで、
どういう表現が可能か→「数学」
へ、無理なく発展させることができるはずです。
しかし、そもそも「かけ算」すら、まともに教えられていない。
たしかに子供には、いきなり先ほどの単位は難しいでしょうが、
それなら、一旦省略であることを断った上で
分数を習う際にでも、再び、本当はどうであるのかを
しっかり教えるべきです。
また、個人(大人も子供も)の自衛策としては、
自分は何を知っていて何を知らないのか、
何を習って、何を習っていないのか、
「知っているつもりの自分」を一旦沈黙させて、
点検することだけが、間違えないための方法でしょう。
ほとんど不可能でしょうが。
たし算もかけ算もまともに教えてもらえずに
子供にどんな学力が付くはずがあるのか、
私にはよく分かりません。
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| 荻野 行雄 ogino.yukio@nifty.ne.jp
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