[BlueSky: 4925] たし算かけ算


[From] "荻野 行雄" [Date] Wed, 26 Feb 2003 17:30:48 +0900

 こんな事がありました。

1. ある掲示板で、

 「1+1=2 というけど、
 実際の生活では、水に塩を溶かすときなど、
 そうならないことが結構ある。科学とか信用できない。」

  というような話が載りました。
   それで私は、

  「たし算というのは、ひとつの単位の世界の中で、
  その単位に沿って、ものを数えるということであり、
  溶かすというのは、そもそもたし算ではない。」

   と、指摘しておきました。
  もっとも今では、もうちょっと

  「水に塩を溶かす場合、体積ベースではたし算にならない
  しかし、重量ベースではたし算になる。
   このことを了解しすることで、溶かすという事、
  あるいはまた、重さ、体積というものの性質を
  より深く理解する事につながる」

   と書いておけばよかったかと思っています。

2. 知人宅に伺った際。

  「『2×0=0というような0のかけ算について、
  もともと2という数があるのに、なぜ答えが0
  になるのか分からない、0でなくて良いではないか』
  と書いてある本があったが、自分もそう思う、
  そのように答えは一つじゃないということを
  子供に教えようと思う。」

   と言われました。
  それで私は、

  「かけ算というのは、単位の異なる違う種類の数を
  組み合わせることにより、さらに違う種類(単位)の数が
  出てくるというもので、登場する数の単位が全部違います。
   だから0のかけ算というのは、組み合わせるべき
  一方が0で、そもそも組み合わせることができないので、
  新しいものは何もでてこない。だから答えは0です。
   子供に嘘教えては駄目でしょう。」

   といっておきました。

 さて、上記の何れも、言っている本人は比較的意識の高い
人という印象でした。
 そして、自分たちは、たし算・かけ算のことを知っている
つもりだったようです。実際は知らなかったのですが。

 この問題が深刻なのは、どうも学校で教える側もこのことを
きちんとは分かっていないらしいところにあります。

 最近ちょっと話に聞く小学校教師 陰山英男(漢字違うかも)
氏の本を、書店でちらっと見ましたが、単位が大事だと書いてあって
しかし、たしか薬の話で「1回3粒を1日2回」というのを
   3(粒)×2(回)=6(粒)
 と書いてありました。ガチョーン!!!
これだと最初の数の単位と答えの単位が一緒だという印象です。
 本当は
   3(粒/回)×2(回/日)=6(粒/日)
 であって、単位もちゃんとかけ算になります。
 このようにして、単位をちゃんと追っかければ、
その単位がどういう約束(測定法)で成り立って、
どう組み合わさっていくのか→「理科」
 単位を一旦外したところで、
どういう表現が可能か→「数学」
へ、無理なく発展させることができるはずです。

 しかし、そもそも「かけ算」すら、まともに教えられていない。
 たしかに子供には、いきなり先ほどの単位は難しいでしょうが、
それなら、一旦省略であることを断った上で
分数を習う際にでも、再び、本当はどうであるのかを
しっかり教えるべきです。

 また、個人(大人も子供も)の自衛策としては、
自分は何を知っていて何を知らないのか、
何を習って、何を習っていないのか、
「知っているつもりの自分」を一旦沈黙させて、
点検することだけが、間違えないための方法でしょう。
ほとんど不可能でしょうが。

 たし算もかけ算もまともに教えてもらえずに
子供にどんな学力が付くはずがあるのか、
私にはよく分かりません。

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| 荻野 行雄 ogino.yukio@nifty.ne.jp
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