土田さん、
> ちなみに、福岡県の施策は有明海に撒砂をし、アサリを撒くというもので、20
> 億円以上の費用をかけた施策です。普賢岳噴火の大分前から有明海の二枚貝は壊
> 滅に近い状態で、そんな所に貝を撒くという事は、貝に死ねといっているのと同
> じ事です。担当者と話しても埒はあきませんでした。NHKでその少し前に実験を
> 放送したのですが、それに感化でもされたものでしょうか。
アサリ資源は高度成長時代とバブル期の沿岸環境破壊をしのいで存続していました。
しかし、バブル崩壊後に、急速に、全国的に資源崩壊が進んでいるようです。最近、
水産関係者がこれをテーマにしたシンポジウムを開催したと記憶しています。
アカガイやハマグリがほとんど消滅した後でも残っていたアサリが、いったい何故
消えつつあるのか、それを根本的に解明しようとしないで、いきなりどこから持って
来るか知りませんが(海外から?)貝をまこうとするのは大変乱暴なことです。
砂もどこからか海砂を採掘するのでしょうが、沖合いでの採取が沿岸域の砂浜の
環境を破壊します。もともと、河川が運んでいた土砂をさえぎったのが河口干潟
の環境を変えた大きな要因のはずです。公的に二重三重の環境破壊を許すような
構造を根本から立て直すべきです。
有明海ではアゲマキもタイラギもほとんど消えてしまったようですが、それらも
含めて干潟から沿岸域までの貝類が再生産する生態的な仕組みを具体的に理解
しないままで、小手先でしのごうとする行政担当者(とそれをアドバイスしているか
も
しれない御用学者さん?、もしいたらごめん)にはあきれるばかりです。
アサリの生態は比較的良く研究されていますが、浮遊幼生から定着初期の研究が
日本では乏しいようです。(三重県の鈴鹿センターが最近がんばっているようで
す。)
アサリは海外に移植されて重要資源になっていて、ハワイを含むアメリカ各地と
フランスなどで基礎研究が進んでいて、日本で欠落していた生態情報があります。
アゲマキやハマグリなどは定着後の初期稚貝時代に移動能力を持っていて、
集団で生息場所を変える行動を見せるようですが、アサリは幼生が定着した
場所がその後の生育場所になります。そこで、生息場所の干潟で何が起こって
いるのか、問題を解明してからにしないと、移植放流は無駄になるはずです。
ハマグリが消えた場所でも、稚貝時代の生息場所である干潟の潮間帯、特に
澪筋の環境がどうなっていたのかを知る必要があります。
沖縄のいくつかの干潟からも10年くらい前頃にアラスジケマンガイ、シラオガイ、
アリソガイ、オキシジミその他の二枚貝が一斉に消えていますので、その原因に
ついて調査しています。これらの貝類集団は潮干狩りで採取されていましたが、
貝が減ると採取圧が減り、集団がリバウンドするという、水産資源に良く見られ
る生態的なサイクルがあったと思います。しかし、私が調べて見ている場所では
消えたままで、しかも残党が見つからない消滅状態が続いています。
干潟に流入する河川や農業廃水路で流れているかも知れない最近の農薬類
(人にはよりやさしく、水生生物には大変厳しいものが多くなっています)が
悪影響を及ぼしている可能性が考えられるので、それを調べ始めているところ
です。
山口正士
903-0213 沖縄県中頭郡西原町千原1
琉球大学理学部海洋自然科学科
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