[BlueSky: 45] 南北問題と日本的生活スタイル、、 Re: [BlueSky: 29] Re: はじめまして


[From] Ken Goto [Date] Sat, 10 Jul 1999 23:17:48 +0900

後藤@帯畜大です

横山さん【19】からは、いきなり、最も基本的な課題が提起されました。
●南北問題と日本的生活スタイル、といったテーマでしょうか。

横山さん【19】:
> > 先進国では食料は過剰状態に見えますが,世界の飢餓人口は現時点でも約8億人に
> > 達し,来世紀の初頭から2020年付近をピークに食料の世界的逼迫が予測されて
> > います。その中で,耕地の不適切な管理や経済性の名の下に世界の耕作可能面積は
> > 年々減少し続けています。一方,日本では消費される豪華な食料を賄うために,国内の
> > 総耕地面積の約2.4倍(1200万ヘクタール)の農地を海外で使用しています。
> > このことを皆様はどのようにお感じになりますか?

紺野さん【29】:
> 私の感じていることと、大きく重なります。
>
> 青空自由大学に過日、投書した(投書したでいいのかな?)のは
> 「人間はわがままだ。これだけ人工が増えて、資源を使って自然がほしいという。
> 無い物ねだりだ。
> 自然の中では暮らせない。自然がなければ息が詰まる。なぜなのでしょうか?」
> です。
>
> 食糧難がくると言われています。食糧難がこないとしたら、そのとき地球の資源
> を食い尽くしているはずです。耕地にできるところは耕地にしているはずですか
> ら。食糧問題は地球規模で、かつ日本規模で、かつ個人規模で考えなくてはなら
> ないと思います。
>
> 中国人が日本人並の生活をしたら、地球環境はそうとう悪くなるはずです。個人
> あたり資源利用量は日本人が中国人並になる必要があります。

中澤さん【21】:
> 一番まずいのは,日本で消費されるために,海外の農地で,そこの気候
> 風土にあった作物でなく,輸出用に無理をしてプランテーションが
> 作られたりすることだと思います。当該地域の生業の持続性が失われる
> 危険が高くなりそうですし,そこに流れ込む金によって人々の生活も
> 変容しますね。そうして高脂肪・高カロリーの食事をとるようになった
> 人々は,糖尿病や心疾患になりがちです。
>
> ただ,そうした生活は,往々にして現地の人自身が選んでいるという
> のも,一面の事実なんですよね。

⇒⇒⇒僕がまず思い描いたのは、アメリカ(ないし多国籍企業)の世界的食糧戦
略の問題です。戦後日本は、この戦略に乗って、国内農業を切り捨てる一方、高
度経済成長を果たしました。最初は米国の農家の要請による、過剰小麦の輸入で
しょうか?

僕にとっての環境問題の原点は、この農業切り捨ての過程で進行していった近郊
市町村の住宅環境の悪化(田園破壊、里山破壊)に対する嘆きです。高度経済成
長を支える労働者が、地方の農村からどんどん都会に出てきたため、近郊市町村
はベッドタウン化していきました。農地を削られ、山を切開かれて、沿岸を埋め
立てられて、子どもが育つのに適していた環境がどんどんなくなってきたのです。

国家の指導者たちは、あの手この手を使って、産業構造の変換に努めてき、一応、
それは(国家の指導者たちにとっては)成功したといえるのでしょう。

  ※生活スタイルの洋式化(アメリカ化)を文化的生活と錯覚させるかのよう
   なことは、例えば、年代のいった人ほど西洋(人)コンプレックスが強い
   傾向にあることからも想像できます。

この産業構造の変換に庶民がどれだけ責任があるのか、、、難しい問題です。し
かし、この変換を推進するのに、地方の農民の貧困が(国家指導者にとって)好
都合であったであろう、ということだけは言えるような気がしています。

30年前、地方農家(といっても東北しか知りませんが)の冬場の出稼ぎはあり
ふれたことだったと思うし、地方からは中学卒業生が東京や大阪にたくさん集団
就職してきました。中卒生は「金の卵」って呼ばれてました。

一方、米国を中心とする多国籍企業の食糧戦略が、国際的飢餓の根本的要因とな
っています。日本は、したがって、国家としてその責任を負っている、というべ
きでしょう。

中澤さん【21】:
> ただ,そうした生活は,往々にして現地の人自身が選んでいるという
> のも,一面の事実なんですよね。

⇒⇒⇒この辺は、とても微妙な問題ですね。例えば、日本農民は高度経済成長の
過程で、都会に流出していったわけですが、それを完璧な自由意志でもって「選
びとって」行ったというわけでもない、と思うからです。いわば、単なる都会へ
の憧れだけが動機ではない。農業では食っていけない、そういうせっぱ詰まった
状況があったと思うのです。

同じようなことは後進国における土着農業の破壊と、プランテーション化(商品
作物栽培への移行)でも「緑の革命」でも起こってきたのではないでしょうか。
自らの生業を捨てざるを得ない社会環境を国家指導者(及び多国籍企業)が作っ
てしまう。これを、「現地の人自身が選んでいる」と言ってもよいですが、抵抗
する現地の人々「も」いる、というのも他面の事実なのでしょう。

   詳しくは、インドの女流哲学者 ヴァンダナ・シヴァ「生きる歓び」ーー
   イデオロギーとしての近代科学批判ーー(築地書館、2987円 原著1
   988)

以上、雑駁ですが、横山さんに提起して頂いた「南北問題と日本人の生活スタイ
ル」は、日本(あるいは後進国)の産業構造・社会構造の問題が歴史的にも社会
的にもより規定的なことなのではないか、という私見を述べてみました。


後藤 健
=========================
生命を考える http://www.obihiro.ac.jp/~rhythms
帯畜大 生物リズム学 Phone (& Fax): 0155-49-5612


▲前の記事へ ▼次の記事へ △記事索引へ △青空MLトップへ

(注)この記事が最新である場合,上記「次の記事へ」はデッドリンクです。