[BlueSky: 4469] Re:4467 農業の新しい


[From] "Kaz. Yokoyama" [Date] Wed, 10 Jul 2002 13:20:28 +0900

五十嵐さんこんにちは。

> 横山さんにはお手数をおかけしますが、このメールも含め、
> 転送する価値があると評価していただけたのなら、
> 大変うれしく思います。

ご快諾頂きありがとうございます。早速転送しておきます。

> これを人間が「食べてみせる」ことで示される「安全性」や「安心感」って
> どういう程度のモノなのでしょうか?

たぶん野菜大産地では農家は市場に出す野菜を食べないと思います。
未来農業集団の皆さんの意図は、「私たちが普段食べているものと同じ物をお届けしま
す」というものです。食べ物の安全性に関しては、環境ホルモンの発見から「本当に安
全?」と聞かれても厳密に言えば答えられなくなりました。もちろん食べ物自体もリス
クを含んでいます。であれば、情報を公開して自分たちも食べていますと言うしかない
と考えています。
農薬名とかかった量、時期が分かれば、リスクについて自分で調べることも出来ます。

> に引き続いて牛肉を食べていたりするときと同様に、残留農薬の話の"後"に
> 生産者がトマトを実食する映像が来ると、おいしさをアピールする
> シーンとは受け止めにくくなるように思いますが、そのようには
> 思われませんでしたでしょうか?

成る程成る程、これは大いに参考になる意見ですね。

> というように編集した映像と、消費者からの質問のあとに、
> 生産者の実食が来るのとでは、受け手の印象がまるで違うと思います。
> 実際の放送ではビデオチャットの映像が2つ連続しているように
> 編集されて見えるので、まるで「食ってごまかした」かのように感じました。

これはディレクター氏も大いに唸るかもしれませんね(笑)。

> 「食ってごまかす」ような浅はかな方にはとても見えませんし、
> 「農家が食べてみせる」程度のことで保たれるような信頼感を、
> 都会の消費者と結ぼうなんて、さらさら思ってないだろうと言うことは、
> あの放送からでも理解できますし、葛貫さんからご紹介いただいた
> ページを少し眺めただけでも、WBSの放送映像から受けた印象の奇妙さが、
> 生産者の姿勢を反映したものではないことはわかります。

ま、ありていに言えばテレビ撮影と言うのはやらせの連続ですね。ディレクター氏の頭
にはストーリーが出来ていて、それが嘘でなければ「じゃ、それ今やってください」み
たいになるわけです。ま、農家も少々悪乗り気味でしたかね。

農家があのシステムで本当にしたいのは、消費者ともっと知りあいたいってことです。
それと同時に農業の現実ももっと知って理解してほしいと言うことです。もし、消費者
が「少々虫食ってても農薬かかってなくて、安い(農薬ははっきり言って高いです、農
業用資材の中で最も高価)食べ物が欲しい」って言ってくれたら、そう言うのを本当は
作りたいのです。

> 編集による意図的な映像だと僕が感じた部分を理解していただけなかった
> ようなので残念ですが、膨大な撮影時間の中から採用する映像として、
> もっとも農家の方々が放送して欲しかったシーンだったのでしょうか?

この点はちょっと複雑な心情ってところですね。

> 全く同じ映像でも、効果音やキャプションやシーン順番を変更すれば
> 番組から受ける印象はまるで変わってしまうことでしょう。

その通りですね。

> IT技術を持ったメーカーや商社が、先進的な農業者の生産現場を
> IT商品販売の新市場としてとらえているという、
> 販売サイドのビジネスではなく、
> 商社やメーカーが提案するIT技術を駆使した、生産者サイド
> のビジネスを取り上げるものだと、この放送に期待していたのが、
> 映像から受ける印象が大きく食い違った原因なのかも知れません。

この点はディレクター氏と話し合ってみたいです。氏も今回で終わりでなく、農家のド
キュメンタリー(最初の目論見)を別番組にしたいと言う意欲があるそうですので、今
回のご意見を大変参考にさせていただきます。

> たとえば虫食いのない「キレイ」なほうれん草が一把あったときに、それが
> 生産者のたゆまぬ虫取り努力の賜物なのか、殺虫剤のすばらしい薬効に
> よるものなのか、厳しい選果基準に選ばれたものなのか、はたまた虫が近づ
> けないような、何か装置工夫によるものなのか、などという事の判断に
> 利用できるのが、信頼される生産履歴のポイントなのではないのかと
> 思っています。

日ごろ健康や環境に大変興味を持っている人も、スーパーの野菜売り場での判断基準の
一番は見た目の綺麗さ、次が値段と言う結果が出ているそうです。多摩美術大の情報デ
ザイン学科と農業と情報技術と言う切り口で共同研究しているのですが、調査したとこ
ろ、当の学生さんのグループもまったく同じ判断基準で選んでいたと言う結果が出てい
ます。そして、そうして買った野菜を自分たちで料理して食べたときには、農業のこと
も野菜のことも全く話題に上らなかった。それに対して、未来農業集団さんの農産物を
使って同じことをした場合には、話題に農業のことや食べ物のこと、健康や環境と言っ
た話題になったとそうです。ちょっとでも情報が与えられていると、それが糸口になる
のだと言うことを実感したとレポートされていました。それと同時に、「スーパーの野
菜売り場には、先に上げた選択をしむける何か非常によく出来た情報風景があるのでは
?」と言う洞察には私も非常に興味を持ちました。

> わざわざ生産履歴の生きてこないやりとりを放送に採用したのは、
> 何故なのかはわかりませんが、積極的な情報公開に取り組んでいる
> 意識の高い生産者像とのずれでも描き出そうとしているのかと
> 思ってしまいます。

言われるまで気づきませんでした。この点もディレクター氏に聞いてみたいと思います


> シンポジウムで情報公開についてどのようなお話がなされたのか、
> 参加していないのでわかりませんが、誤解を招くような方法で
> 中途半端に情報を公開すると、その半端な部分に注目が集まってしまって、
> こんな事なら最初からもっともっと公開しておけば良かったと
> 「後悔」する羽目になるというお話は理解できます。
> 大阪雪印の社長が引き合いに出されたりしますよね。

それが全く逆なのですよ。
「消費者に情報を開示して、寝てる子を起こすことにならないか?」と言う「後悔」で
す。私は、「まだそんなこと言ってるのか」みたいに感じてがっかりしました。「公開
」の議論をすると必ず「これは別」みたいな特別枠を設けたがる動きがありますが、ち
ょっとでも隠したり、改ざんしたりしたら最早「公開」ではなくなるのであり、プライ
バシーに関することを除いて、全てを見せる点が重要なのだと考えています。これはこ
れからのもの作りの基本ではないかと思うのですが。

> 番組の編集をする方の苦労というのも並大抵のものではないのだな、
> と思いますが、残念ながら僕には制作者の真の意図はまるっきり
> 映像から読みとれていなかったようですね。

ディレクター氏の泣きっ面が見えるようですね。でも真摯に受け止めたいと思います。

> 長いメールになりましたが、いくら書いてもなかなかうまくまとまりません。
> 読みにくい文章を最後までお読みいただきありがとうございました。

こちらこと、多大な労力を払っていただき感激です。
これからも率直なご意見をお願いします。
横山和尚


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