[BlueSky: 4303] Re:4295 京都議定書を批准しても対策は幻


[From] "yuichiro komiya" [Date] Thu, 30 May 2002 23:06:05 +0900

こんにちは、小宮です。

佐藤さん:
> 話は変わりますが、団藤保晴氏の「インターネットで読み解く!」で、
> とても分かりやすい京都議定書の解説が載っていました。
> http://www.dandoweb.com/backno/20020530.htm
> これなどを読むと、如何に日本政府が深謀遠慮なしに政策を
> 決めているのか分かる気がします。自分で自分の国の首を
> 絞めるような事をしてるんだなぁと理解してきました。国民の個人個人
> の受け取り方や、意識を問題にするのではなく、国としてどうすれば
> よいか問う姿勢はさすがジャーナリストだなぁと思いました。

日本政府が深謀遠慮なしに政策を決めている、というのは、ちょっと
いいすぎなのではないでしょうか。京都議定書が日本にとって厳しい
ものであることは最初から分かっていましたし、環境省でも何度となく
報告されていました。目標達成のためには相当ドラスティックな政策
を行う必要があり、それによって我々日本に住む人の生活が大きく
変わる可能性があるのは周知のことだと思っていたのですが…。
川口前環境大臣や小泉首相が批准に慎重だったのも、そのことが
よく分かっていたからだと思います。それでも世論がほとんど批准
賛成に傾いていて、最終的に批准にこぎついたということは、
日本国民が自分達の生活の変化を受け入れてでも温暖化対策を行う
という決意があったからだと思ったのですが(違うかな?)。

批准しないアメリカをさんざん批判しておいて、いざ日本の立場に
なると、増税はいやだ、節約はしたくない、ではとおらないでしょうね。
僕は少なくとも批准に賛成した国会議員は、長野モデルでも示されて
いるような増税、規制案に反対するような矛盾した行為はとるべき
ではないと思います。

さて、議定書の目標達成の方法ですが、以前もこのMLに出ていましたが、
環境省に議定書達成のための国内制度に関する資料が出ていました。

「京都議定書の締結に向けた国内制度の在り方に関する答申」について
http://www.env.go.jp/press/press.php3?serial=3104

2002年から第1約束期間終了までの間3ステップに区分し、
それぞれのステップ毎に対策・施策を柔軟に導入していく
ということです(問題を先送りしている感もないでは
ないですが)。確かにこの資料でも具体的な方法などは
詳しく検討されてはいませんが。


それと、日本のこれからの社会システムによって排出量が
どう変わるかという検討もされていました[3945]。

4つの社会・経済シナリオについて
−「温室効果ガス排出量削減シナリオ策定調査報告書」−
http://www.env.go.jp/press/press.php3?serial=2696


将来の日本の社会経済の発展のタイプをどのようなもの
にするかで二酸化炭素排出量がどのように変わるかを
予測したものです。

「A1:世界市場主義シナリオ」
・効率性を重視した市場を中心とした経済へシフトし、最適な
資本配分を実施され、グローバル経済の中で我が国の経済も
活況を呈する。
・人口が巨大都市に集中。
・経済の好況に伴い国内総支出増加。特に民間支出増加。

「A2:地域・伝統重視シナリオ」
・現状の社会や経済の構造が大きく変化しない。
・人口が複数都市圏に集中。
・経済の停滞に伴い国内総支出減少。
・政府部門の役割が大きくなるため、民間支出より
公的支出の伸びが大きい。

「B1:環境技術牽引シナリオ」
・経済構造の中に環境が内包された形で経済発展が成し遂げられていく。
・循環型経済の構築によって、資源効率が高まる。
・都市のコンパクト化。県内の人口分布は、限られた地域に集約的に分布。
・経済の好況に伴い国内総支出増加。
・循環型社会へのインフラ整備に投資が行われるため、資本形成に
対する支出が大きい。

「B2:新地域自立シナリオ」
・余り高い労働生産性の向上は見られない。
・福祉環境の改善やワークシェアリングの導入により、女性や高齢者の
労働力が増加する。
・人口分布は田園都市に向けて多極化し、三大都市圏への人口
集中は緩和される。
・大量消費ライフスタイルから脱却するため、国内総支出は
全体的に小さくなる。

それぞれの2030年までの二酸化炭素排出量を予測は、基準年(1990年)の
排出量を100とすると、

A1…144
A2…114
B1…103
B2…94

となっています。まあどこまで正確な予測かは分かりませんが、
少なくとも社会システムを変えることができれば、-6%も実現不可能
な値ではなくなるのではないでしょうか(ちなみにB2の経済成長率
は毎年0.5〜0.6%程度)。



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