[BlueSky: 4269] 海の生物をまもるには


[From] "Y.Kuzunuki" [Date] Tue, 28 May 2002 13:01:29 +0900

おはようございます、葛貫です。
水産関係の文献を読んで、抄録を作成する仕事をしています。
そのような立場から、調査捕鯨問題について思っていることを
書いてみます。
# 現場の研究者ではなく、現場から上がってくる《一部》の
# 文献を読んでいるだけなので、誤りがあったらご指摘を。

国際海洋法が施行され、持続的な資源の利用のため科学的な
資源評価に基づいて、ある漁期、ある水域における天然水産
資源の漁獲可能量を算出しようとする試みがなされています。
一昨年、【2369】 http://sv2.humeco.m.u-tokyo.ac.jp/mllogs/bluesky/2369.html 
にも書きましたが、今のところ、資源変動を予測し、漁獲可
能量を算出するシミュレーション方法を開発するため、物理・
化学・生物学的データを収集している段階にあるというのが
実情です。今のところ、観賞に耐える(?)鯨類の資源評価
ができるとは思えません。

クジラやイルカが浅瀬に乗り上げ死ぬ《一 因》として、
「エサの深追い」「シャチなどの外敵に追われて」「船舶による
騒音や撹乱」「耳に寄生する寄生虫」等とともに、貝類の毒化を
引き起こすことで知られる赤潮プランクトンの影響も考えられて
いるようです。

「海洋微生物生態学入門」
5.有害藻類の発生と海洋生態系への影響
http://home.hiroshima-u.ac.jp/hubol/mme.pdf

獲りさえしなければ、鯨類等、海獣が安泰というわけでもない。
海の生物を守るためには、その生息環境の保全が大切なわけで。

小澤さん:
> 日本における山から海までの水循環がおかしくなっているから
> 近海漁業がふるわない、のではと考えています。

流入河川からの影響のみでなく、過密養殖、過剰給餌等、今迄の
ラフな養殖管理により、水質・低質が悪化し、魚病が多発したり、
赤潮や貧酸素水塊が発生したりで、内湾域は使い物にならなくなり
つつあるようです。

その対策として、養殖施設を陸上に上げ徹底した水質管理を行い
ながら養殖を行う「閉鎖循環式陸上養殖システム」へと向かう方向と、
内湾がダメなら、丈夫な養殖施設を開発して、海水交換の良い沖合
で養殖するさ(一種の垂れ流し?)という方向への研究が進んで
います。

米国では、役目を終えた石油リグのプラットフォームにふ化場や
親魚の養成施設を設け,周辺海上に網いけすを設置,プラット
フォームから給餌を遠隔自動管理する、というシステムの研究が
はじまっているようです。

これらの研究方向は、環境の保全というより、養殖業者が、
どう生き残るかという問題が主題となっているように感じられます。
(食糧供給という意味で、それも大切だけれど)

小澤さんが仰しゃるように、流域の土地利用の影響を受けつつ
海へ流れ込む河川の水質は、沿岸や閉鎖性の強い内湾域の漁業
に大きな影響を与えています。
数年前から、水源から沿岸域までをひとつの系として物質の流れ
をみる調査・研究が、散見されるようになりました。
このような、広い範囲、いろいろな層のつながりを観ようとする
取り組みにより、「環境の保全」や「資源の持続的利用」に近付く
ことができるのでは、と思いました。
(かなり面倒くさくて難解だけれど)




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