[BlueSky: 4072] Re:4070 進化をまなぶ意味


[From] Ken Goto [Date] Mon, 22 Apr 2002 20:02:24 +0900

須賀さん、皆さん。
後藤@帯畜大です。

なかなか難しい問題ですね。

件の長谷川氏のコラム読んでみました。生物学としてのあるべき姿みた
いなことが論じられているようですが、それが「生物教育」とどう結び
つくのか、という視点はないようですね。

・・・生物学の基本概念であるからといって、また、それが社会的に有
用であるからといって、それを中等教育(中学・高校)で教える
べきである、という結論は導かれないでしょう。

物理学の基本概念であるエントロピーを理解することによって、
初めて生命の神秘の一端とその脆さを垣間見ることができると、
思われるのですが、これも、中等教育で教えるべきでしょうか?

須賀さん【4070】:
> 僕は長谷川氏の意見に賛成です。バクテリアにも樹にも人間にも
> DNAがある理由は進化を考えないとよくわかりません。そのことを
> ぬきにしてどうやってたとえば細胞や遺伝子のことを教えられる
> んだろう?
メカニズムの世界として十分に教えられる、と考えられます。

・・・もちろん、バクテリアと人間が祖先を共有することの科学的根拠
は理解できないでしょうが。

ところで、中学では、セントラルドグマを教えていますか?

須賀さん【4070】:
> があるように思います。「グローバル」な問題であって身近な話じゃ
> ないと思われてしまうことがある。ところが進化について知るとむしろ、
> それがローカルなできごとのつらなりとして大きな意味をもっている
> ことがわかります。
この部分、もう少し噛み砕いて説明していただけますか?

須賀さん【4070】:
> 学・進化学・生態学といったナチュラルヒストリーの分野についての
> イメージがないと、自然科学の輪郭に対するイメージそのものが
> その実際の姿よりもかなりちいさなものになってしまうのではない
> でしょうか。
この点はよく理解できますが、それと中等教育のあるべき姿と、どのよ
うに結びつくのでしょうか?

・・・例えば、中学生に「自然科学の輪郭に対する豊かなイメージ」を
もつことを期待しているのでしょうか?

なお、長谷川氏は【生物学が理論を欠いた暗記科目だと見なされる限り、
優秀な学生が生物学に集まることもないだろう。】と述べ、進化を教え
ない限り生物「学」は『暗期科目』になる、としています。

・・・ただし、高校では生物「学」ではなく、「生物」という科目になっ
ています。

現行(またはつい最近まで)の高校「生物教育」では、「進化」
は、ほとんどの(または、より多くの)生徒が履修するであろう
「生物IB」には載っておらず、余り履修するもののいない(ま
たはより少ない生徒しか履修しない)「生物II」の題材です。

「進化」を扱えば「生物」が暗記科目にならない、という保証は全くあ
りません。また、「進化」を扱わなくたって暗記科目に陥らない方策は
ありうるでしょう。また、現状では、多くの生徒の場合、「生物」は
「暗記科目」になっていると思いますが、それは、「進化」を勉強する
かしないかとは全く無関係でしょう。

・・・伝統的に「生物」は暗記科目でしたが、だからといって、「優秀
な学生」が生物学分野に参集しなかった、という事実はないでし
ょう。もちろん、「暗記科目」であってもいいと僕が考えている
わけではありませんし、「優秀な学生」を生物学分野に集めるた
めに「生物教育」がある、と考えているわけではありません。

以上、暗記がとても嫌いな後藤@帯畜大でした。

後藤 健
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生命を考える http://www.obihiro.ac.jp/~rhythms
帯畜大 生物リズム学 Phone (& Fax): 0155-49-5612


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