[BlueSky: 4060] [4057] 構造の変化。科学者の倫理。


[From] Abe Yasushi(阿部靖志) [Date] Tue, 09 Apr 2002 23:24:51 -0400

阿部@イジャペルです。

at [BlueSky: 4057] Re:4056  環境問題は方便 葛貫さん
> 阿部さんが書かれたことを読んで、私は構造の進化を抑えるというか、
> 今、現在の構成要素が存続できるよう治めたいという望みを持って
> いたんだなと改めて思いました。

 まぁ、それが普通だと思います。構造の進化は『痛み』を伴いま
すから。と言うか、システムの構成要素にとって振動は痛みです。
でも、ただ痛いだけじゃ救われないけど、構造の進化が有るので、
ムリヤリ良しとしよう、と言うことです(^^)。


> システム自体が持っている「生」の力のようなものを信じ、変化を
> 受け入れるというスタイルもあるんですよね。

 はい。諦めているだけ、と言えば怠け者の様ですが(悟りを開い
た、と言えば教祖様になれる(^^)かも)、出来るだけの事をやり尽
くしたら、どんな結果になろうとも、受け入れるしか無いです。


> とうか、どう足掻いたところで、結果として、そうなるんですよね。
> (投げ遣りな意味ではなく。)

 足掻いた分、結果は確実に変わっています。歴史を眺めると、一
つの過去が一つの未来にしか繋がらないように錯覚しがちですが、
可能性としての未来は無限に有って、その中の一つが選ばれたので、
それ以外は『あり得なかった話』に見えているだけです(判って居
られるとは思うのですが、念の為、です)。


 過去が判っていなければ、存在し得る過去も無限の可能性をもっ
ている、という話もありましたっけ(物理学的には、未来と過去は
時間軸方向への正と負の違いでしかない)。で、確率として存在す
る別の世界(並行世界)の話がSFにはいっぱい有りますねぇ(今日
は自分に茶々を入れる回数が多い)。

 何にせよ、時間軸を移動する術を持たない存在としては、変化し
た、あるいは変化しなかった結果としての世界を受け入れる以外、
選択肢が無い、ということは変えられない事実です(^^)。


> 昨夏、講演を聴きに行った時、「残念ながら、間もなく地球に大きな
> 隕石が激突することは避けられず、生物相は大きく変わることになる」
> と仰しゃった宇宙物理学者(佐治晴夫さん)は、学生の頃、お父さん
> に春の雑木林に連れて行かれ「木に耳をつけてご覧」と言われたそうです。
> その時は、お父さんの意図がわからず、何も聴き取れなかったそうです。
> 何を聴かせたかったのか、教えてもらって、はじめてその音が聴こえた
> そうです。いくら数学や理科ができても、いのちの音を感じ取れない奴が、
> 勉強しても、ひとの幸せにはつながらないなぁ、というようなことを、
> お父様は仰しゃったそうです。

 大学時代、後輩が樹に耳をあてて「聴こえる、聴こえる」と言っ
ていたのを「聴こえるか!」とツッコンで(聴診器が必要だと思っ
ていた)、直後に耳をあてたらホントに聴こえたことを想い出しま
した。『ゴーッ』という感じの音がしていて、その音の感じから、
樹は地底から空に向かって流れている川なんだな、と変に納得した
のでした。

 樹と言えば、風が無くても動くのを知っていますか?。雨の後の
良く晴れた日なんかには、伸びをする様にザワザワと動くんですよ。
人も思わず日向ぼっこをしたくなるような天気の時には、そーっと
覗いて見て下さい(^^)。


 失礼。話が逸れました。共通認識としての科学者として必須な倫
理は、科学史の長さの割には、未だに確立されていないようです。
勿論、多くの人々に倫理(場合によっては殺し合いの理由も)を提
供している宗教は、科学の現場では使用に堪えません。『疑う』事
で成立する科学の根本には、『信じる』事で成立する宗教を据える
訳には行かないからです。結局、科学者としての倫理体系は個々の
科学者が自分自身で構築して行かなくてはならないのです。佐治さ
んのお父様が佐治さんに教えようとしたのは、その根本の部分だっ
たのでしょう。


> 講演の中で金子みすゞの詩を紹介されていました。
>
> 「星とたんぽぽ」
>
> 青いお空のそこふかく
>  海の小石のそのように
>  夜がくるまでしずんでる
>  昼のお星はめにみえぬ
>   見えぬけれどもあるんだよ
>  見えぬものでもあるんだよ
>
> ・・・後略・・・
>
> 佐治さんは天文台で「昼間の星を観る会」を開かれているようです。

 お父様の教育は見事に実を結んだのに、大きな視点から話をすれ
ば小さな者を切り捨てるような発言に聞こえざるを得ない…。人類
の言語には、相反する事象を同時に表現すべきでないという制約が
有るので、仕方が無いことなのでしょう。


> 丸山さんも、違う場で、違う話の聞き方をしたら、もっと違う
> 語り口で、お話なさったのかもしれませんね。

 肯定。あのような語り口になったのは、インタビュアーの能力の
高さの証明なのかもしれません。


> 樹液の流れる音を聴いたり、昼間の星を見たりすると、世の中は、
> それまでとは、少し違って見えるかもしれませんね。

 これも肯定。そして、普通の人には見えないモノを見ようとして
いる科学者が見ている世界は、普通の人に見える世界とは少し違っ
て見えているのかもしれません。


それではまた。 阿部 靖志


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