[BlueSky: 4053] [3984] 環境問題は方便


[From] Abe Yasushi(阿部靖志) [Date] Fri, 05 Apr 2002 19:14:51 -0400

はじめまして。チリ共和国イジャペル市在住の阿部と申します。

 いつも楽しく議論を拝読させて頂いております。が、遅筆なもの
で、大抵の場合はレスを付ける前にスレッドの彼方に消え去ってし
まうので、ROMに徹していました。が、今回は割と引っ張られて
いるので、レスをつけてみたいと思いました。


*地球環境問題
 地球環境問題は、総論としては『生物圏の縮小』を問題にした議
論だと考えています。人類共通の深層心理には『生物圏の縮小は、
なんとなく嫌』という漠然とした想いが有り、にも拘らず生活を優
先させれば生物圏を食いつぶさねばならない、というジレンマがあ
りました。

 そのジレンマを乗り越えて、『生物圏の縮小を食い止めよう』と
いう話が『地球温暖化』を皮切りに科学者から提出され、地球環境
問題がある意味ブームになり、政治を動かしました。

 と言う訳で、地球温暖化に限らず全ての環境問題は、バックボー
ンに生物圏の存在を肯定する意志が存在します。逆に言えば、生物
圏の拡張を推進したいと言う希望を実現する為に、環境問題が人類
に及ぼす悪影響が喧伝されています。ぶっちゃけた話、環境問題は
方便です。


*ガイア理論
 生物圏の存在が環境の激変を抑制している、という理論が英国の
化学者から提出されました。この理論はガイア理論として知られて
います。この理論は『生物圏の縮小を食い止めよう』という運動の
中心理論になっても良さそうな話なのですが、実際には『誰もが知
っているけど改めて語られることがない』話になっています。

 これは『生物圏の縮小を食い止めよう』という方向性では合意が
あるので、改めてその必要性を話し合う必要が無い為だと私は見て
います。


*炭素収支
 大気中の二酸化炭素は光合成などによって生物に同化されますが、
それらの一部は循環から外れて化石燃料になります。これを長い時
間スケールで見れば、『生物を構成する材料が生物圏から失われて
行く』という事に他なりません。

 したがって、『人間活動による化石燃料の消費(燃やす事)』は、
『生物圏の循環から失われていた生物体の材料を供給する』という
意味を持っていると言えます。

 残念ながら、この役割を果たしている生物は、地球には人間以外
に存在しません(火山は生物じゃないと思います)。そのような意
味において、人間による化石燃料の消費は否定されるべき活動では
無いと私は考えます。


*速度比較
 化石燃料の消費は生物圏の拡張に資する活動であると言えますが、
大気中の二酸化炭素が増加を続けている現実は、循環に戻した筈の
炭素が生物圏の拡張に利用されていない事を示しています。つまり、

生物圏の拡張速度<化石燃料の消費速度

という不等式が現状では成立しており、等式にしない事には生物圏
が制御し得る環境の限界を越えてしまい、取り返しのつかない事に
なる、という予測(この予測はガイア理論などで説明されなくても、
誰もが漠然と感じて居ると思います)が『地球温暖化対策』を要求
しています。

 その予測の背景には、経済原則に任せれば『生物圏の拡張速度』
は減少を続け『化石燃料の消費速度』は減少しない、という経験的
事実が有ります。したがって全地球レベルでの政治的な対策が必要
とされています。


*京都議定書
 要求される政治的対策は短期の経済的利益と相反するので、競争
力を同様に削ぐルールでなくては競争が不平等になります。個人的
には、貿易障壁(製品の化石燃料消費量に依存する貿易規制など)
が京都議定書などより有効な対策になるのでは、と思いますが、そ
れは京都議定書を否定する理由にはなりません。

 京都議定書は、ようやく動き出した環境問題への政治的対策なの
で、否定すべきではないと思います。動く処から世界を動かして、
足りない処を付け加えて行けば良いのではないでしょうか?。

 人間は神様じゃありません(神様を作ったのが人間だ、という話
があっても)。大体の方向が間違っていなければ、進んでみれば良
いのでは無いでしょうか。フィードがなければフィードバックも出
来ませんから。


それではまた。 阿部 靖志


追伸:
 常識レベルの話を長々としてしまい、失礼ました。が、ホントに
言いたかったのは、『みんな緑が好きでしょ?。好きなら増やせば
いいじゃん』という話です。環境問題の原点はここに有る(エルゼ
アール・ヴィフィユという架空の男の話や多くの宮崎アニメが世界
中で受け入れられている現実は同じ原点を指し示している)と思う
のですが…。


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