[BlueSky: 3661] Re:3657  プルトニウムテロ


[From] ICHINOSE-Takeshi [Date] Mon, 24 Sep 2001 19:57:10 +0900

尼崎市の一ノ瀬です。

横山さん#3657<
最後に考えたくないけど、不吉な予言を一言、私が相手ならもう空なんか見ませ
んね。本当の危機は足下。水ですね。比較的手薄で、大人口を抱える水源にPu
とか入れられたら恐ろしいことになりませんか?しかも分かったときにはもう遅
い。

 この"Pu"というのは、プルトニウムのことでしょうか?もしそうならば、ご
心配には及びません。
1)テロリスト達は、まず間違いなくそんなことはしません。
2)もし、kgオーダーの量のプルトニウムを実際に放り込んでくれたとしたら、
むしろ大いに喜ぶべき事です。テロリスト達は、原子爆弾を作る機会を失ったわ
けですから。
 プルトニウムの毒性の程度を念頭に置くと、このような結論になります。

 故高木仁三郎氏の本を読む限り、プルトニウムの”毒性”は、急性毒性ではあ
りません。「ある日突然、人々がバタバタ倒れる」などという、恐怖を煽るのに
打ってつけの状況は作り出せません。

 プルトニウムの毒性の実態は発がん性であって、取り込んだ後、5から10年
以上かかってガンに結びつきます。
 それも、高い発がん性が疑われているのは、微粒子として肺に吸い込んだ場合
です。微粒子が吸着した周辺のみ、局所的に長期間に亘ってダメージを与え続け
るため、同じ量の放射線を均一に被曝した場合よりも”何万倍も危険かもしれな
い”と言われています。

 水源にプルトニウムを投じ、水に溶けた状態で人体が吸収した場合は、吸収経
路が異なり、被曝形態は均一被曝になるので、プルトニウムだから特に危険だ、
という話は成立しなくなります。通常の放射性物質による体内被曝と同一基準で
考えて、危険度を見積もることが出来ます。(このように、同じ発ガン物質であ
っても、人体への吸収経路によって発ガン性に大きな差が出ることは、一般的な
現象です)
 しかもたとえ肺から吸い込んだ場合でも、”何万倍も危険”という話自体、か
なり怪しい面があるので、実際にやってみたら全然期待外れだった、と言うこと
が十分にあり得ます。

 こんな不確実な作戦に、貴重なプルトニウムを使うとは考えられないわけで
す。

 なお、東京の多摩川水系のダムを例に、流域住民がどの程度被曝してどの程度
危険なのか、概算してみました。

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1.ダム貯水量
 利根川水系のダムの貯水量は、矢木沢ダム11550万m^3 奈良俣ダム7200万m^3 
等、合計で34349万m^3
 貯水率が30%程度まで下がった渇水期を狙った場合でも、1億m^3の水を汚
染する必要がある。

2.汚染持続期間
 基本的にはダムの水は入れ替わっているので、長期間汚染させ続けるのは無
理。
 せいぜい、10日か? しかし、一旦大雨が降れば、1日で汚染水は推し流さ
れてしまうこともあり得る。 

3.汚染濃度及び人体被曝量
 10kgのPu239を何らかの形で貯水池の水に均一に溶け込ませ、途中の
浄水過程で一切それが失われることがないと仮定する。
 取り込んだ水に含まれるプルトニウムからのα線は、全て人体に吸収されると
仮定する
 この場合、
 Pu10kgの出すα線は、1年間の積算値で、3.3×10^5Svに達す

 水の総量は1×10^11リットルである
 水1リットル当たりでは、1年間同じ汚染度の水を飲み続けたとしても、0.
0033mSvにしかならない。
 実際にはせいぜい10日間、汚染を持続できるだけだろうから、0.0000
1mSvに満たない値にしかならない。

4.結論
 一般人が自然界に存在する放射線源から被曝する線量は年間1mSvであり、
Pu投入による被曝量増加は、これに比較してあまりに小さい。
 Puは、放射性を除けば、化学的にはCaと似通った性質を持っており、自然
界での濃縮は考えにくい(もしそんなことが簡単に起こるのなら、放射性物質の
回収が容易になって便利だが、、、、)
 健康被害は、いかに高精度の疫学的調査を行っても、検出不能であろう。
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 ちなみに、前にも書いたことですが、発がん性については、他の何物にも増し
て、タバコがケタ違いに強烈です。
 喫煙者の発ガンリスクを、放射線被曝で再現しようとすると、ヒロシマ、ナガ
サキ並の被曝が必要になります。
 プルトニウムの心配をする前に、喫煙者を抹殺するジハードをやった方がいい
んじゃないでしょうか、、、、
 


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