[BlueSky: 3613] トルコの千年建築と交通  Re:3610 環境教育など


[From] "suka" [Date] Tue, 28 Aug 2001 21:47:46 +0900

中澤さん 葛貫さん 和尚さん みなさん

   須賀です。

中澤さんが紹介された千年住宅・千年建築ということばで
思い出しました。7月に10日ほどトルコ共和国に観光旅行に
行ってきました。そのとき、世界遺産にもなっている有名な
観光地のカッパドキアで、石をくりぬいてつくった家や教会、
そして紀元前からの記録があるという岩にうがたれた地下
都市をみてきました。

このあたりの夏の気候は乾燥していて、僕が旅行した時期
には一面に色づいた麦畑がひろがっていました。カッパドキア
からさらに東にいくとチグリス・ユーフラテス川の上流があり、
世界でもっとも早い時期から農耕がはじまった場所のひとつ
のようです。

ある家は円錐形をふくらませたようなとんがり帽子のかたち
の岩で、部屋や階段、テーブルなどがそのなかにくりぬかれ、
アリかシロアリの巣のように部屋と部屋のあいだがつながって
いました。外は暑いのになかは涼しく、「テラス」にはそよ風
が吹いていました。冬は雪もふるそうですが、部屋のなかは
あたたかいのだという話でした。もっとも地震などで一部の家
はくずれて離村したところもあるようです。

地下都市もつくりかたはほぼ同じで、まさにアリの巣です。
確か地下6階までありました。一時期はアラブ人から逃れた
キリスト教徒がすんでいたとのことです。

ここからもうかがえるように、トルコはたいへん多彩な歴史を
もった国です。

今トルコ共和国になっている地域は、ギリシャ、シリア、イラク、
イランなどと接していて、博物館にはヒッタイト、ギリシャ、ローマ
などの遺物もならんでいました。地中海に面した古代都市の
エフェソスにも行きましたが、ここは古代ギリシャ文明の遺跡
でした。しかも近くには聖母マリアが晩年住んだという家まで
ありました。

1453年、コンスタンティノープル(現在のイスタンブール)は
オスマントルコの攻撃で陥落し、ギリシャ正教の総本山であった
アヤソフィアはモスクに改装されました。アヤソフィアは537
年に現在の大聖堂ができたそうですから、これも千年建築
ですね。

(そういえば、10年以上前にスペインを旅行したとき、コルドバ
で一部分が教会に改装されたモスクをみました。逆のことを
やってるわけですね。コルドバはイスラムの学問が栄えた街で、
中世ヨーロッパの知識人はここで古代からの自然科学や哲学
などを学んだそうですね。)

このような多彩な文明と文化が交錯したトルコですが、現在は
「車社会」に突入していました。イスタンブールの街中は自動車
だらけ、都市間の長距離移動は夜行バスがたよりです(8日間
の滞在のあいだ3泊が移動の夜行バスだったのできつかった)。

イスタンブールにはトヨタかホンダの工場があるという話もきき
ました。

カッパドキアで小川に沿った渓谷を歩いたとき、むこうからロバ
にのった少年がやってきました。けれども観光客が写真をとる
とお金をとっていましたから、純粋に交通手段としてつかって
いるわけでもないのかもしれないと思いました。

でもたった8日間の旅行で、これほど長い歴史をもった大きな
世界について何かわかったように思うのは、大胆スギルことに
ちがいありません。

レヴィ・ストロースの『悲しき熱帯』を訳した川田順造はこんな
ことを書いています(ふたりとも高名な文化人類学者です)。

「様々な文化との短期間の接触の中から、鋭い感受性と洞察力
(この点で、レヴィ=ストロースがいかに恵まれた資質を具えて
いるかは、本書でも明らかだ)によって、指標となるべき兆候を
見出してゆく習練を、レヴィ=ストロースはブラジルでの広域の
調査旅行の過程で積んだようにみえる。ただしこうした方法が、
研究者の特殊な才能を必要とし、しかもその適用に大きな制約
と危険が伴うことは、本書の記述からもあきらかに読み取れる。
時にそれは、断片的な資料の過剰解釈ともなり、研究者の論理
の整合性が、対象に内在する構造と、そのまま同一視されかね
ない。」

文化人類学の高度な方法論にしてこれなのですから、まして
僕のいうことをどの程度信用したらいいかはみなさんおわかり
いただけますね。

それでもイスタンブールのじゅうたん屋さんに勤めているある
青年(32)と交わした会話がわすれられず、みなさんに紹介
したくてたまりません。

青年「僕もいつか日本に行きたいな。飛行機は高いだろうから
 船で行く。」
須賀「船? それはちょっとむずかしいんじゃないかな。」
青年「でもペルシャ湾あたりから日本行きの船がいっぱい出て
 るだろう。」
須賀「それはタンカーだよ。石油を運ぶんだ。」
青年「石油といえば、ホンダが電池で動く車を売りだすんだって?
 新聞でみたぞ。もう石油の時代はおわりだ。」
須賀「・・・・・」

でもみなさん、レヴィ=ストロースの方法について述べた川田順造
のことばを思い出してくださいね。

それではまた。

   須賀 丈
 










> ご無沙汰しています。横道にそれますが。
>
> (件名:[BlueSky: 3609] Re:3606 環境教育などに於て)
> Mon, 27 Aug 2001 10:55:20 +0900頃,Kaz. Yokoyamaさん:
> > まだ建設続行中のガウディのサグラダ・ファミリア教会
> > ですが、納骨堂だと小耳に挟んだことがあります(本当かどうか
> > 不明)。
> 友人の竹川大介氏によれば,ガウディ自身の棺が入っているそうで
> す。彼が最近そこを訪れて作ったサイト
> http://neo.human.ne.jp/~daisuke/spain/index.htm
> は刺激的です。
>
> 最近,『「千年住宅」を建てる』という本を読んだのですが,そこ
> でもサグダラ・ファミリアは「ゆっくりつくる千年建築」として紹
> 介されていました。完成まであと200年か300年かかるらしいです。
>
> さらに余談ですが,この本は環境と住居の関係を考える上でお薦め
> です。多少初期コストがかかっても,60年も経てば錆びて駄目にな
> ってしまう普通の鉄筋コンクリート(最初はアルカリ性なので防錆
> 効果をもっているコンクリートが二酸化炭素を吸収して中和を続け,
> 約72年で完全に中性化するので中の鉄筋が錆びるそうです)よりも,
> ステンレス筋で,かつ表面を煉瓦かタイルで覆って空気との接触を
> 減らすといった工夫をした方が,長い目でみれば安上がりだとか,
> 日本の木造建築や世界中の古い建築物に使われた自然素材が科学的
> に如何に理にかなったものか,といったことがわかりやすくかかれ
> ていました。
>
> =====
> Minato Nakazawa, Ph.D. <minato@sv3.humeco.m.u-tokyo.ac.jp>
> Department of Human Ecology, Univ. Tokyo
> [WEB] http://sv2.humeco.m.u-tokyo.ac.jp/~minato/index-j.htm
>
>



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