[BlueSky: 3602] Re:3601 環境教育など


[From] "Y.Kuzunuki" [Date] Fri, 24 Aug 2001 22:14:35 +0900

葛貫です。

和尚さんwrote:
> 「行動」への動機付けに繋がらない「知識」を「比較的容易」に
> 「伝達」する意味って何でしょうか?

私は、今、主に水産関係の研究報告書の抄録を作成する仕事を
しています。つい、昨日も某県の水産試験場の報告書を読んで、

平成**年度の**海域におけるノリ養殖の概況について報告した。
採苗期と育苗期に高水温が続き,比重は平年より低めで推移した。
DINは11,12月はかなり高めでその他の月は平年並であった。
ノリの胞子の放出が遅れ,採苗期間は長期におよび,芽付きは薄目
であった。冷凍網の入庫は11月5日から開始された。**漁場では
11月中旬にあかぐされ病が発生,高水温と低比重のためまん延し,
秋芽網の一斉撤去となった。**漁場以外では本被害は軽微であった。
2月以降は,低水温と栄養塩の減少のため生育が悪く,色調も不良
であった。**年度の生産枚数は**千枚(前年度比51%),平均
単価**円(96%)であった。

というノリ養殖に関する抄録や、海況を分析して養殖筏の配置法を
検討した研究、環境の変動や耐病性のある品種をつくりだすための
研究に関する抄録を作成していました。

科学技術振興事業団の文献情報部でデータベース化される客観的な
「事実」の伝達を目的にした情報なので、これは、これで良いのだ
と思います。

ただ、これらを読んで、その場で起こったことを知ったつもりに
なっちゃいけない、わかったつもりになっちゃいけない、と最近、
思うようになりました。

> そこに立ってみないと感じることが出来ない「臭い」の中に
> 大切なことがたくさんあることを日々感じています。

そうなんですよね。
主体としての人を含めた保護・保全を考える場合、横山さんが
仰しゃる「臭い」を除いたskillに偏った情報しか伝達されなかったら、
それは、仏つくって魂入れずになってしまうのだろうなと思います。

> せめて現実に立つことが出来ないのであれば、
> インターネットの力を借りても良いではないですか。理解したいと言う強烈な欲求
> があれば、PCの画面からでも臭いを嗅ぐことが出来ると信じています。

ここ数ヶ月、新聞(日本経済新聞?)で紹介された「Cyfar's diary」
という携帯電話を利用して現場で入力したリアルタイム農作業日記を
拝見していました。
不順な天候、害虫と日々向かい合いながら、営まれている農作業と
いうものがどういうものなのか、私達が、当たり前のように食べている
ものが、どのようにしてつくられているのか垣間見ることができました。

「麦秋」という言葉やその風景は知っていても、小麦の収穫期の農家の
方の徹夜状態の忙しさ、今迄、想像したこともありませんでした。

冬に猛吹雪がやって来て、雪掻きが間に合わなくて、頼まれた仲間が
救援に行きたいのも山々なのだけれど、二次遭難を避けるため助けに
来られず、家にあったビールとおつまみでその場を凌ぐ、なんてことが、
今、この時代の日本で起っているなんて、想像したこともありません
でした。

自分が知っている世界なんて、小さなものだな、その世界の価値観で
決めつけるような物言いをすることは、かなり恥ずかしいことだな、
と思いました。

> 今ちょうど農に関して同じ様な取り組みをしている「未来農業集団FFG」と言う
> 農家さんと一緒に仕事をしていて、彼らが「VOSバーチャルオーナーシステム」
> 面白い取り組みを始めたのでご紹介します。
・・・中略・・・
> 提供されるライブ情報には、携帯電話を利用して現場で入力したリアルタイム農作
> 業日記、その時の音声、画像から、インターネットライブ画像、imode掲示板を使っ
> ての農家との直接対話などです。何れも「臨場感」を最大限重視し、仮想でも現場
> の感覚をより生々しく味わって貰いたいと言う趣旨が伝わってくる内容です。

「全国の自然43カ所、固定カメラで生中継 環境省」
夏休みを前に、情報技術(IT)を使って自然の豊かさを知ってもらおうと、
環境省は、ホームページ「インターネット自然研究所」を20日から公開する。
北海道知床から沖縄県西表島まで、全国の国立公園の風景や野生生物の姿を
43カ所の固定カメラで生中継する。 映像は日中1時間おきに撮影、更新する。
データは蓄積し、過去の映像も引き出せるようにする。釧路のタンチョウや
尾瀬沼の風景、屋久島の山々などカメラが設置された三十数カ所から順次公開。
年明けまでに上高地のイワナや兵庫県竹野海中公園の海中林など水中カメラの
中継も始める。 アドレスは http://www.sizenken.biodic.go.jp.

という記事を7月13日の朝日新聞で見かけたのですが、
「主体としての人を含めた保護・保全を考える」には、自然の豊かさ
だけではなく、農業や水産業など、人と自然がせめぎ合う場所で、
何が起っているのかを知ることが、とても大切であるように思われ
ました。
小学校の生活科等の授業に取り入れ、自分達がオーナーになっている
(出資しているということで、真剣味が増す?)畑で働く農家の人の
「臭い」を感じさせてもらい、作物の成長の様子を見せてもらい、
収穫されたものを皆で味わうことは、環境教育のひとつのかたちに
なるのではないかな、と思いました。



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