[BlueSky: 3544] Re:3541 発効しなくても削減は出来る


[From] ICHINOSE-Takeshi [Date] Sun, 22 Jul 2001 23:33:15 +0900

尼崎市の一ノ瀬です。

 松尾さん、伊東さん、藤井さん、コメント有り難う御座いました。
 みなさんのコメントを読んで、

「京都議定書を発効させないと、EU等は温暖化ガス排出削減を始められない」

と考えておられることが判りました。
 何故、そう考えるのか、私には全く理解できません。

 通常、規制というものは、汚染物質の排出を削減したくない者に対して、強制
するから存在意義があるのです。
 今の場合、嫌がっているアメリカに、規制の網がかかるから意味がある。

 排出削減を積極的に主張する人達は、規制など無くても排出は削減します。
 仮にEUが、”議定書が発効されないから我々も削減できない”などと言い出
したら、その方がおかしい。

 EUの排出削減は、既に書いたようにかなりの水増しがあって、8割引ぐらい
で見ておく必要があります(*注)が、それでも、これは、世界の主要国に排出削
減に向けた政治的圧力をかける、大きな機会です。
 しかし、自国の水増し数値を掲げて、他国に対して高い削減率を強制しようと
しても、イヤだと言われてしまえば、それまでです。高い削減率に固執して、交
渉を袋小路に追い込んだ所で、得るものはありません。

 もともと、削減目標の数値は、それを超えて削減することには何の制約もない
のですから、目標数値を、思い切って引き下げることが現実的だと思います。ア
メリカの削減率を1%かそれ以下にまで引き下げたとしても、EUが自らの削減
目標を実行できなくなるわけではないし、たとえ1%でも、アメリカを野放しに
するよりは遥かにましです。

 こういう、当たり前の対応をとらずに、今や米国(そして日本も)が、まとも
には絶対に飲めない数値を掲げて引こうとしない、EUの態度には強い不審を感
じます。クロアチアやポーランドと言った国々への悪影響を懸念しているのかも
知れませんが、排出量から見て米国を引き留めることの方が遥かに重要です。

 米国の場合、昨年のカリフォルニア州の大停電事件を経験しています。電力自
由化が原因と報じられていますが、要は発電能力が絶対的に不足しているので
す。電力不足は、他の州でも心配されています。こういう状況下で、京都議定書
など、そのままでは飲める筈がない。飲めるはずがないと判っている条件を強要
することほど、愚かな交渉はありません。

 となると、温暖化ガス排出を少しでも多く減らそうとするならば、妥協に妥協
を重ねることもやむを得ない。
 しかし、EUはそれをしない。
 恐らく、地球環境問題を利用して、米国に対する政治的優位を確立しようとす
る意志が働いているのでしょう。
 EUと米国は、農産物や安全保障に関しても、しょっちゅう似たようなことを
やっていますから。


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(*注)の点について、藤井さんからコメントをいただいていますので(#3542)、別
途コメントします。


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