[BlueSky: 3535] 日本の温暖化防止政策に関します要望書(要旨)


[From] "Hisao Fujii(藤井 久雄)" [Date] Sun, 15 Jul 2001 18:09:18 +0900

皆様
森林NGO緑友会 事務局 藤井久雄

 ご承知のとおり、温暖化防止のための気候変動枠組み条約は、アメリカの離脱
表明で京都議定書が危機に瀕したまま、まもなくボンでのCOP6Part2会
議を迎えようとしております。

 私ども森林NGO緑友会では、日本の生ぬるい温暖化防止政策を加速し、また
京都議定書に日本が率先して批准することを求めて、関係省庁と各党に要望書を
提出致しましたので転載致します。

 私共の要望書では、水力発電を除く自然エネルギー・再生可能エネルギー導入
率が世界的にも最低レベルで、環境に配慮した税制を殆ど導入していない希な先
進国である等、温暖化防止努力が著しく遅れている日本が、アメリカの離脱表明
・京都議定書存亡のキャスティングボートを悪用して、議定書を危機に瀕させ抜
け穴の拡大や自国に有利な条件の引き出しを画策していることを、国際的にも許
し難い非行と憂慮し、政府に率先しての京都議定書批准を求めています。

 国内の温暖化防止政策については、環境税の導入、自然エネルギーの積極導入
(具体的な大規模導入可能な自然エネルギーを列挙し、原子力発電を縮小・廃止
しての温暖化対策を求めています)、原子力発電の縮小・廃止(事故時に、放射
性物質汚染だけでなく、熱波等をもたらすことから温暖化対策に逆効果なのでは
ないかとの指摘をしています)、エコポイント・カードの全国的導入による環境
に優しい製品の販売拡大、等の真剣な努力により、原子力発電抜きでの温暖化対
策の実現を求めています。

 また京都議定書への対応に付き、早期批准をすべきこと、地球温暖化にはいく
つものポジティブフィードバック要因が有って、科学的予測が困難であり、対策
が遅れれば予期しない急速な温暖化が訪れて人類の生存が危機に瀕することも有
り得ること、森林等の吸収源の日本が求めている算入拡大は、伐採・更新等の実
際には吸収に貢献しない活動の算入であり、ましてや日本を特別扱いする理由は
なく、二重算入等の問題も引き起こし、また、持続的森林管理に悪影響を及ぼす
怖れが大きいため、算入を行なわないこと、日本の政府・産業界が主張してきて
いる過去の省エネ努力は、国情の特性による差異である部分が大きく日本が特に
省エネ努力が進んでいるとは言えない部分が多いこと、環境汚染問題は経済成長
にも大きな影響を与えており、環境対策を軽視した経済成長優先政策は、逆に重
大なつけをのちにもたらし、経済にもプラスでないこと等を記載しています。

 以下に私共の要望書の要旨部分を転載いたします。

 要望書本文は、次投稿に転載致します。私共の要望書全文はまた、htt
p://www2s.biglobe.ne.jp/~ryokuyu/tok0132.htm#yobo_jにも掲載してお
りますので、併せて御参照下さいませ。

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日本の温暖化防止政策に関します要望書

森林NGO緑友会

要望書要旨

1.環境税を早期に導入することを要望いたします。日本は、先進国の中でも環
境に配慮した税制が殆ど導入されていない、希な国になってしまっています。
1997年の環境庁の環境税検討では、2000年にCO2排出量を1990年水準に安定化
するための案として、ガソリン1リットルあたり2円(3,000円/tC)程度の環境
税を掛け税収(年間約1兆円)を補助金に使用する低税率型等の複数案の環境税
が検討され、これらいずれのやり方でも必要な温暖化対策が実現可能であり、低
税率型ではGDPへの影響も- 0.06%程度と小さいものとの試算がなされていま
す。

2.自然エネルギーの導入増加を真剣に積極的に進めるべきです。日本の水力発
電を除く再生可能エネルギー・自然エネルギーの全エネルギー消費に占める割合
は、2%余で、世界的にも最低レベルであり、自然エネルギー導入への積極的取
り組みが非常に遅れている国と言えます。真剣に適切な政策が講じられれば、自
然エネルギー・省エネルギー・代替エネルギーによる原発抜きのエネルギー確保
・温暖化対策は可能であると思われます。環境税を目的税として導入し自然エネ
ルギー・代替エネルギー・省エネルギーへの適切な助成措置・補助措置を行い、
またその他の省エネルギー・自然エネルギー・代替エネルギー促進のための政策
を講じること等によって、これを達成することを求めます。そのためにも現在検
討されております適切な「自然エネルギー発電促進法案」の成立を要望いたしま
す。

 現在技術で実施可能な自然エネルギー・再生可能エネルギーとしまして、太陽
光発電、風力発電、地熱発電、太陽熱利用、熱帯材バイオマス発電、コジェネレー
ション等があり、中でも、太陽光発電、熱帯材バイオマス発電等は、わが国の現
在の原子力発電電力全部を置き換え可能なほど大きなポテンシャルを有していま
す。また、今後の技術開発により、高温岩体発電、農産物残さや廃材からの実用
コストで汚染物質を含まないアルコール製造、燃料電池、海底のメタンハイドレー
トの開発利用等が将来的には利用可能となる可能性が高いと考えられます。

3.原子力発電は、現在でも頻繁に放射能漏れ事故を繰り返しまた大規模事故も
起こしており大変危険であり、軽微な事故でも周辺に放射性物質汚染をもたらし
ますし、重大事故が起きれば国土の狭いわが国では安全に住めるとことが無くな
り日本全土の国民の健康・生命を脅かしかねませんので、対策として用いるべき
ではありません。また、原子力発電は気候変動にも良くない影響を与えている可
能性があり(重大な原子力発電所事故の後には、熱波が襲う傾向が認められます。
長期的な影響は明らかではありませんが、黒っぽい排出煙の影響、排出煙のオゾ
ン層破壊への影響等は、大変に危惧されます。また、熱波はさらにエネルギー消
費を助長もしますし、後述の地球の温暖化のポジティブフィードバック機構を誘
発する可能性があります)、温暖化対策になっているのかどうかさえ大変に疑わ
しいものです。とりわけプルサーマル、高速増殖炉は危険性が高いため、決して
運転するべきではありません。また特に、自国でも安全を保てていない原子力発
電を、CDMの対象に含め輸出することには強く反対いたします。

4.市場経済・貨幣経済の中に、環境価値を算入させて流通させることにより、
適切な環境政策を効率的に実現することを要望いたします。具体的案として、エ
コポイント・カードのような市場インセンティブ政策を導入し、温暖化対策に全
般的インセンティブを発揮させ、合わせてその他の面での環境保全も進めること
が有効だと思います。ポイントカードを、全国的に、環境に優しい商品でやった
ら良いと思います。環境に優しい商品を買ったら、環境への貢献度に応じてカー
ドにポイントが溜まって、溜まったポイントの高に応じてなにがしかの特典がも
らえる、といったシステムを全国的規模で導入すれば、環境に優しい商品の購入
拡大に大きく貢献するでしょう。このような方法は、環境税の様な大きな経済的
負担をもたらさずに、大規模・効率的な温暖化対策を行なえる可能性を秘めてい
ると思います。

5.日本は、4月の国会決議に従い、率先して京都議定書に批准するべきです。
現在の日本やアメリカの姿勢は、自国の経済ばかりに配慮して、京都議定書の抜
け穴を拡大しあるいは枠組みを壊そうとしているものとしか見えず、全世界的な
環境保全的見地や適正・公正な温暖化対策への配慮を欠いたものとしか言いよう
がありません。CO2削減努力が世界的にも著しく不足している日本が、アメリ
カの京都議定書離脱表明・京都議定書存亡のキャスティングボートを悪用して、
京都議定書の抜け穴を拡大し、あるいは自国に有利な条件を引き出そうとしてる
交渉姿勢は、国際的にも国際倫理上も許し難い行為と考えます。地球温暖化には
いくつものポジティブ・フィードバック要因が指摘されており、現在進行してい
る温暖化の今後の行方を確実に予測することは困難で、現在の予想以上の急激な
変化が生じ人類の生存を脅かす可能性が有ります。もしアメリカや日本の反対で
京都議定書が発効せず、対策が遅れれば、地球に急速な温暖化が訪れる日が来る
かも知れません。

6.温暖化防止京都議定書のわが国の削減目標の達成手段として、森林・土地利
用等吸収源の算入増を主張することに強く反対します。吸収源にわが国の削減目
標達成手段の一部を依存することは、科学的に正しくなく認められないものです。
森林の伐採−更新は数十年以上掛かって蓄積したCO2を伐採によって概ね短期間
に放出してしまい、森林の伐採−更新にともなって、CO2は通常吸収が増加す
るのでなく減少すると考えられ、伐採−更新を吸収源として算入せよという主張
は土台おかしいものです。CO2吸収に貢献する場合があるとすれば、利用部門
に於いてCO2削減に資する利用が十分に行われた場合だけで、これらは利用部
門の排出量で勘定されるべきものであり、また既に排出部門で勘定されるはずに
なっているものもあり、それらは森林等(LULUCF)吸収の算入を認めれば
二重算入の不正算入が生じることになります。また、追加的人為活動は、人為活
動によりどれだけ吸収量が増加したかで算定するべきもので、追加的人為活動を
行った森林のCO2吸収量すべてを算入することは道義的に許されるものではあ
りません。ましてや日本だけを特別扱いする理由はありません。削減割当量の実
行可能容易さ・過去の省エネ努力等を理由とする調整ならば、削減割当量の数字
をいくらにすべきかという議論で行なうのが本筋だと考えます。天然林施業(主
に伐採・更新)が算入対象となった場合には貴重な天然林の伐採が加速される怖
れがありますし、伐採−更新施業の算入を認めることは、世界的に伐採を促進し
材価を低迷させて、持続的森林管理が妨げられ、森林の劣化につながる怖れがあ
ります。

 日本政府・産業界は過去に省エネを進めてきていることを強調していますが、
日本は国土が狭く人口が密集しており輸送に掛かるエネルギーが少ないこと、冬
季に著しく寒い地域が少ないこと、GDPについては90年前に急速に円高が進み
また生活コストが諸先進国と比して高いと言わていることを考えると、日本の、
先進国平均よりやや低い程度の1人当たりエネルギー消費量、低いGDP当たり
エネルギー消費量は、必ずしも省エネ努力によるものとは言えず、割り引いて見
なければなりません。

7.世界的に環境汚染の影響は深刻化しており、これからの時代は、環境汚染に
配慮しなければ安定な経済成長も望めないと思われます。日本やアメリカのよう
な、経済成長優先の政策姿勢は、結局環境汚染を増加させ、そのために経済成長
を低下させるという、自らの首を絞める結果になり、経済優先・環境軽視の政策
を早急に見直さなければ、大変なつけがくると思います。例えば地球温暖化の影
響による、異常気象・気象災害の多発は、現在でも、生活・産業・エネルギー消
費・農林水産業等に多大な経済的損失をもたらしています。京都議定書の抜け穴
の拡大を画策している日本の姿勢は、米国同様、経済優先で環境への配慮を著し
く欠いたもので、環境省は産業界の片棒をかついでいるだけで殆ど環境を守ろう
としていないのではないかとの疑念を禁じ得ません。早期の真剣な取り組みによ
る環境技術の進歩は、将来、環境技術の輸出等を通して、経済にもプラスの影響
をもたらすはずです。


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  緑    友    会
−森林・林業・自然と研究のためのNGO−
http://www2s.biglobe.ne.jp/~ryokuyu/
E-mail ryokuyu@nisiq.net
事務局 藤井 久雄(fujiihi@nisiq.net)
tel:090-1800-4721
 郵便物は当面旧住所(〒305-0044つくば市並木2-14-301-802)宛で
 転送にて届きます
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