[BlueSky: 3448] RE 3京都議定書


[From] "Takashi Goto" [Date] Thu, 14 Jun 2001 08:36:32 +0900

後藤@環境NPO研究会です。

京都議定書の件ですが、基本的なところを補足させてください。

> 地球温暖化対策でブッシュ大統領の米国が京都議定書を
> みとめない方向を出し、EUは米国ぬきで発効をめざす方向
> に動き、日本はその板ばさみになって方向がきまらずに
> いるようですね。みなさんはどう思われますか。
> この分野にくわしくないわたしは、米国抜きでも無意味ではない
> なら発効に動くべきでは、とやや短絡的に(?)思ってしまうの
> ですけれど。


まず大事なことは、京都議定書には確かに欠陥はありますが、
その最大の欠陥は、先進国に5%削減しか課していないこと
です。(日本が6%、アメリカ7%、ヨーロッパ8%)
しかも、自国内での排出削減にすごく努力しなくても、排出量
取り引きや、森林など吸収源をカウントすればよいことになって
いることだと思います。
当然京都議定書ですら、ここまで妥協の産物になるにはものす
ごい紆余曲折があったのですが、それでも1997年にああいう形
で議定書にまとまったのは大変重要なことで、地球環境の将来
を考える上で意義あることです。

また、京都議定書の合意に至るきっかけになった「気候変動枠
組条約第1回締約国会議(COP1)」=1995年3月〜4月、ベル
リン・ドイツでは、97年のCOP3で温室効果ガスの削減目標を盛
り込んだ新しい議定書を採択することについて議論され、地球温
暖化を防止するために、先進各国が2000年以降の温暖化対策
を、数値目標を定めて強化・実施することが必要という理由から、
新議定書のCOP3での採択を「ベルリン・マンデート」として決議
しましたが、最初の期間では途上国に義務を課さないことを合意
していて、当然アメリカもこの枠組みで合意してます。
 また、条約は先進国の途上国支援の義務について、先進国
が資金や技術移転を途上国に行って、その対策の支援を行うこ
とになっていますが、先進国は全然取り組んでいません。
つまり、ここですでに途上国支援については方向性がでている
のに、実施されていないのです。

ほかにも論点は山ほど有り、一番いいのは気候ネットワークが
中央法規から出している「よくわかる地球温暖化問題」を読むこと
だと思いますが、基本的には180カ国も参加している地球環境を
守るための国際条約で取り決めた削減目標が全然なされていな
いのに、アメリカのような超大国がそのさらなる緩和を強要してい
ること、また、途上国問題については支援すると決めたのにしな
いで、しかも自国の削減もしないくせに、「途上国にも削減義務
を課せ」と言っているところだと思います。

では日本はどうすれば、ということですが、ここでも大きな誤解が
あります。それは、なんだか議論を見ていると日本はニュートラル
な立場にいるようにとらえられる向きが多い様なんですがそうでは
なくて、まず2000年11月にオランダのハーグで行われた「気候変
動枠組条約第6回締約国会議(COP6)」を思い出してください。
あそこでは京都議定書の具体的な運用規則を策定するために、
京都議定書の早期発効と遵守、実効性の確保を目標にしました
が、森林吸収源について日、米、カナダとEUが激しく対立し、事
実上交渉決裂しました。
あの時日本が京都会議議長国としてどういう立場を取るか、が注
目されましたが、結局自国の主張、すなわち、日本の吸収源すべ
てを目標達成にカウントすることを認めろという、京都議定書を紙
切れにしてしまうような考えを押し通し、結果、COP6での合意は
失敗に終わったわけです。原子力にも執着しましたね。

こうしたアメリカのごり押しと日本のあいまいな態度の裏には、
温暖化交渉を地球環境問題としてではなく、外交カードとして
利用してやろう、というアメリカの腹の内と、それにどう対応する
かとにかくアメリカの出方を見て決めよう、という日本の情けない
姿勢があるのではないでしょうか。
事実、友人が8日の中央環境審議会地球環境部会を傍聴してき
たのですが、その席では「アメリカを説得するなら安全保障と関
連付けるべきだ」という意見がでていたそうで、本音のところは
そこにあるのでは、と思います。

川口大臣は、EUに対しては「アメリカも入れて発効を」といい、
アメリカに対しては追従姿勢を取っていますが、結局EUとアメリ
カの対立にかこつけて、日本の削減目標を骨抜きにしている
わけですから、「板挟み」というのは優しすぎます。
EU議長提案に対してシンクの件をごり押しして無理を通したり
しているわけで、本当にひどい大臣です。
また、川口氏のこうした行動は、4月に国会で決議された「京都
議定書発効のための国際合意の実現に関する決議」に反して
いるので国務大臣として重大な背反行為ですし、将来世代のため
の国益を大いに損なっています。
ぼくは川口大臣のCOP6からの再三再四の環境政策上の失策
は、もはや環境大臣としての適性がないものと判断し、罷免すべ
きだと考えています。

来月7月にCOP6再開会合が行われますが、やはり今までの
経緯を鑑みれば、アメリカに義務を負わせた上で、早い時期か
ら途上国にも義務を課さなくてはならないので、アメリカ抜きで
も京都議定書を批准して発効させた上で、先進国が国内削減
目標の達成に努力し、その上で途上国にも資金と技術援助を
、当初の取り決め通り行うことが必要だと考えます。

コワイのは、もしブッシュの次にチェイニー大統領なんかになった
ら、こんなことでは済まない、ということでしょうね。
乱文でしつれいしました。ではでは。


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後 藤   隆 [ Takashi Goto ]
[mailto:takapi-@sf6.so-net.ne.jp]
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