[BlueSky: 3020] 銃・病原菌・鉄


[From] HIROKI Masato [Date] Thu, 1 Mar 2001 19:36:14 +0900

遅ればせながら、話題の本、「銃・病原菌・鉄」
(ジャレド・ダイアモンド著、倉骨彰訳、草思社)
読んでみました。
「なぜ、インカ帝国がスペインを占領したのではなく、
スペインがインカ帝国を占領したのか」
という問いに集約される、人類史における出来事の要因を、
生物地理学的アプローチによって検証しています。

「社会生物学的手法は、もっと人文科学、
社会化学の分野で活用されるべきである」
と、常日頃思っている私にとって、
本書における著者のアプローチは非常に共感できるものです。
すんなり読めました。
(社会生物学というよりは、進化生態学的アプローチですが)
「現在見られる地域間の不均衡は、過去における生物的資源の
分布の不均衡がもたらしたものである。」
という著者の結論も、納得が行くものとして説明されています。
ただ、著者は歴史学者ではなく、鳥類生態学出身ですから、
今後人文系の人に本書がどのように受容されて行くか興味深いところです。

むろん著者は現在の地域間不均衡を容認しているわけでは有りません。
たんに因果関係を示しただけ。
「人間放っときゃ、こうなるんだよー」ってとこか。
それに対してどう考えて行くかは、
本書を読んだ読者に与えられた課題、というところでしょうか。
皆さんにも一読をお勧めします。かなりの厚さの本ですけど。

はたしてEO Wilsonは、この本を読んでなんというだろう。

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広木眞達(HIROKI, Masato)
国際基督教大学生物学教室加藤研究室
〒181-8585 三鷹市大沢3-10-2
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