[BlueSky: 2969] RE 【 2188 】【 2193 】下水道と米の研ぎ汁


[From] "RIO" [Date] Sat, 24 Feb 2001 13:24:45 +0900

小澤<rio-ozawa@mub.biglobe.ne.jp>です。
初めまして。一介の米屋です。
最近の無洗米のCMを見ながら色々調べておりまして、
業界の情報も含めて、複雑系で話をさせていただければと思います。のっけからの長
文ですみません。

佐川さん【2188】:
>そう、みんなで“米とぎの文化”を断絶させるのです(^_^:)。
>都会のマンションという極めて新しい環境の中で、「米とぎ」
>という古い文化を引きずる必要はないのです。

葛貫さん【2193】:
>自己家畜化が進んだ都会で暮すことを選択したということは、自然
>な状態の流れとは一線を画した自分達なりの物質循環、エネルギ
>ーフロー・システムの中で暮し、フローが滞らないよう人工的に制御
>されたシステムを受入れることを選択した、ということと同義なのは
>ないか、と思われました。

I.米のとぎ汁の問題とは?

米のとぎ汁の問題は、なにより窒素・リンと考えてよろしいでしょうか?そう規定し
た上で。

以下は、横浜市下水道局の情報です。
【引用】
1 富栄養化原因物質の排出源について
富栄養化原因物質の排出割合は,横浜市内を例に概要を示します。
窒素の割合は,生活排水60%,工場排水20%,農業・畜産その他排水20%。
また,リンでは,生活排水50%,工場排水30%,農業・畜産その他排水20%。
(下水処理場に流入する排水は処理場での除去率−約50%−を加味したものです)

2 生活排水中のリンの排出源について
リンは生活排水中に成人1人当たり1日1.2g程度排出。
割合は,し尿が約75%,その他生活排水が25%。
(「流域別下水道整備総合計画調査−指針と解説」・・・・建設省監修)

http://www.city.yokohama.jp/me/cplan/mizu/mail31.html

【引用終了】

【引用】
1 家庭排水(台所、洗濯排水、風呂、トイレ)で,環境負荷の高いのはどの排水?

横浜市の家庭での最近の水使用量は1人・1日250リットル程度です。
その内訳の概要は,

台所 60リットル程度
洗濯 50リットル程度
風呂,洗面 110リットル程度
トイレ 20リットル程度
その他 10リットル程度

となっています
汚れの負荷は,一般に汚れの指標とされるBOD(BOD用語解説) ,窒素,リンでみ
てみますと一般的に,

BODの場合:炊事とトイレで約80%
窒素の場合:トイレからの排水量が最も多く全体の60%
リンの場合:トイレと洗濯で全体の約80%

を占めると言われています。
これらを見ますと,それぞれが汚れの発生源となりますが,トイレからの負荷が一番
高いと言えるかもしれません。

http://www.city.yokohama.jp/me/cplan/mizu/mail41.html

【引用終了】

【引用】

文献調査をしたところ「用水と廃水 VOL32 No5(1990)」に参考事例が掲載されていた
のでご紹介します。

1 米のとぎ汁の負荷量
米4合を合計4500mlの水で4回に分けてといだ場合の全排水の負荷量
捨てる量 4500mlに対して
BOD 10.8g
窒素  130mg
リン   35mg

2 粉石鹸の負荷量
捨てる量 50gに対して
BOD 38g
窒素 −
リン 2.9mg

http://www.city.yokohama.jp/me/cplan/mizu/mail89.html
【引用終了】

以上から判断すると、トイレからの負荷をどうするかの抜本的対策なしには、何も解
決しないのではと思ってしまいます。
また、問題を多少広げてBODでとらえても、野菜の皮の裏側(最も栄養価が高い)
を平気で水にさらしておいて、お米だけですか? とも感じます。
結局、無洗米は、環境意識はあるが実際には行動力のない消費者のための、また便利
を買うことに多少の後ろめたさを感じる消費者のための免罪符なのではないでしょう
か?

II.浄化槽について
石井式合併浄化槽についてこれまで話がされていないかと思います。
ご存知かもしれませんが、以下簡単に。

【引用】
項目1:処理水はBOD1ppmレベルを保持する。汚水を生物浄化させるための必要条件

(1)微生物の繁殖
(2)繁殖した微生物の活性化を進める。
この(1)、(2)を満足させるためには乳酸菌飲料に使った廃容器(ヤクルト容器な
ど、これに類するもの)をばっ気槽にランダムに投入すればよい。一般的なろ材で
は、ばっ気槽内の流速は平均毎分6.7m。これに対し、石井式では僅か0.3m/分であ
り、この遅い流速が生物群を固着させる。その上、ばっ気槽内の酸素(O2)が0から最
高の飽和まで一様に分布するため、各種の微生物が繁殖し、活性化を促し浄化力が最
高となる。

項目2:脱窒に好適
生物学的に脱窒をはかることが経済的な処理法である。それには脱窒菌を繁殖させる
こと、これには石井式が最適であり、先の河川学会で建設省技官が本システムの脱窒
率は71.9%と発表した。
(通常の脱窒率:下水道10〜20%、合併浄化槽10%以下)

項目3:処理水には大腸菌群が微少
東大、佐賀大の微生物研究者が、ある下水処理場と石井式の大腸菌群を比較したとこ
ろ、処理水1mlあたり260万個に対し、僅か33個であった。現法規では1mlあたり3000
個以内に消毒し放流するよう定められている。

http://www2.ktarn.or.jp/~jh6ibm/index.htm
http://www2.ktarn.or.jp/~jh6ibm/sub1.htm
http://www2.ktarn.or.jp/~jh6ibm/sub2.htm
【引用終了】

石井式合併浄化槽の拡大利用というのは不可能なんでしょうか?
流域下水道のような大規模でなくても、せせらぎ云々でなくても、ある程度の規模の
集合住宅への設置義務により、都会での利用も考えられるのではと感じます。
そして、こういう物こそ、将来的価値のある公共事業となり得るのではと思います。
景気対策という名目で無駄を承知で、一部企業が独占もしくは談合で業界だけで利益
を山分けしながら、外部不経済を撒き散らしながら、将来世代にメリットを上回る
ディメリットを残す、今の構造に比べると遥かに優れた政策だと思うのですが。景気
対策であり、雇用対策であり、中小企業対策であり、環境対策であり、環境教育にも
なるのでは。

III.設備・技術の集中化と遺伝子操作種子

何で突然こんな話題?
現在無洗米の精米方式には何種類かあります。
洗う、磨く、ぬかを粘土にしてそれで米粒に付着しているぬかを取る方式など。
この中で、粘土方式が最も優れています。
そして、そのメーカーが東洋精米機。
ライバル大手のサタケは、東洋から特許訴訟を受け敗訴。
今までの、精米機では、各品種毎に精米担当者が設定を行い、ノウハウとなっていま
したが、東洋精米機の場合、設定はブラックボックス。
品種を変える時は、メーカーから技術者が来ていじくって帰ってしまう。
なお、機械は億円オーダーでこの点でも今までよりはるかに高い。
私がつきあっている卸も、無洗米については、三つの精米工場に精米委託していま
す。でないと、種類が揃わない。

ここからは、想像の世界です。
アイディアマンで環境問題にも関心があった社長がいる限りそんなことはないでしょ
うが、将来アメリカの遺伝子操作種子メーカーが東洋を買収したとしましょう。
さて何が起きるでしょうか?

環境ISOを取得のために社員食堂に無洗米を導入している企業。
同様に炊飯業者。学校給食に生協。
米を研がない前提で変えられていった日本中の設備と意識と技術。

この状態で、果たしていったい何が起きるのか?

米は輸入すれば済む、そうかもしれません。
F1種子はいやだ、外国産でも有機米があると。

しかし、水循環の中で日本の農業が果たしている役割を考えると、それで済むので
しょうか?

都市に住む人間として、自分達の食料・飲料を保証している国土というものへの責任
を自覚することが、なにより必要なのではないでしょうか?
米研ぎの技術などという、自分にとっての有利不利という問題から、もっと広い視点
で見てみると、違った風景が見えてくるのではと思います。

下水処理水の水質から始めても、ここまで問題が広がりますね。
まさに、風が吹けば桶屋が儲かる、複雑系。

ps.
無洗米は、必ずまずくなるそうです。精米業者と社員食堂の担当者が言っていまし
た。
まずくならない、というのはうそ。そりゃそうです。同じ米で普通の精米と無洗米と
食べ比べなんかしないから。普通の消費者には。
一部生協では、ほとんど無洗米にした所もあるそうです。環境を前面に謳いながら缶
ビールを平気で売るんだから、その程度の環境意識ですね。麦芽100%ビールをう
たい文句にしてしまうあの感覚が信じられません。まさに免罪符の世界。

小澤 量@東京都府中市 満41歳(花の本厄年)


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