[BlueSky: 2854] Re:2845 電力自由化


[From] "yuichiro komiya" [Date] Wed, 7 Feb 2001 00:14:41 +0900

こんにちは、兼平さん、小宮です。興味深い資料のご紹介ありがとう
ございました。(ちなみに、2845はリンクが古くなっていました。経済
産業省のHPで読むことができました。
http://www.meti.go.jp/kohosys/summary/0000831/index.html)

この資料で、電力の自由化のメリットと問題点がだいぶ理解できました。
自由化するメリットは、

・電気の供給を効率化させ、電気料金を下げ、日本産業の国際競争力をあげる
・電力ピーク時に市場効果によって電気料金が上がって、自然と節電を促す

ということですね(僕はそのほかにも、電気の価格を下げることにより、
景気を回復や雇用確保にも貢献すると思います)。この資料では、環境保全
と自由化を両立させるために「各電気事業者に、自社が発生させている社会
的費用をきちんと負担させた上で、あとは自由にやらせる」ということで、「公
益目的税(炭素税)」の導入を検討されていますが、確かにこれは有効な方
法かもしれません。ここでもいわれているように、企業は利益主導で動くの
で、炭素税がかかれば、自然とCO2排出量の少ない、クリーン電源の開発
競争の方に向かうでしょうから。

ただ、少し疑問に思う点もありました。まず、兼平さんが言われているように
炭素税の導入が簡単にできるか?ということです。電力に炭素税をかけると、
それは企業の負担になるだけではなく、消費者の負担にもなります。税が
かかった分、負担の一部が電気料金に転化されるからです。つまり、炭素
税は電気料金を引き上げ、自由化のメリットを打ち消す方向に働くのでは
ないでしょうか?どのくらいの炭素税をかけるか、クリーン電源の効率化が
どの程度進むかでまた変わってくると思いますが、基本的には景気回復を
妨げる日常必需品への税の導入が、そう簡単にいくとは思えません。

第二に、仮に炭素税が導入できても、電力会社が税によって利益が思うよ
うに挙げられないことから、市場へ参入しにくくなるのではないでしょうか。
カリフォルニアの例でも、自由化された後でも、厳しい環境規制などから
企業が市場に参入してこず、結果的に電力不足になったと聞きます。安定
供給という面からはマイナスになるのでは?

第三に、電力が自由化された時に、今回のカリフォルニアのような、急な電
気の需要に対応できるのでしょうか。自由化のもとでは企業は利益最優先
なので、むだな電力を生み出している発電所は閉鎖させて、経営の効率化
を図ると思われます。通常はそれでもかまわないのですが、いざ景気が回
復して電気の需要が増えたときに、供給が足りず、電気料金が高騰するの
ではないでしょうか。まあ、高騰したらその分節電が進んで需要が押さえら
れる、という考え方もありますが、今回のカリフォルニアの例を見ると、日本
でも消費者がおとなしく電気代の高騰をのんで、節電で耐えようとするとは
思えません(カリフォルニアでは電気料金を安価に供給するため、アラスカ
州の北極圏野生生物保護区の一部での石油採掘を解禁しようという案が
ブッシュ大統領から出されているそうです)。

第四に、炭素税が課せられると、原子力発電の開発が進むようになるので
は?まあ、これはいいことか悪いことかははっきりとは分かりませんが(ご
紹介の資料ではいいこととして書かれてあったように思います)。

まあ、結局はっきりとは分からないのですが、僕は炭素税を含んだ自由化
は市場効果がうまく働かずに、電力供給が不安定になるのではないか、そ
うすれば、環境問題を後回しにしてでも発電所の乱立が進むのではないか、
と少し心配です。


#アメリカでは、カリフォルニアの電力危機が、他州に波及する可能性が
でてきたそうです。

電力危機、他州にも波及−夏にはさらに深刻化も
(Technology News from SILICON VALLEY)
http://www.asahi.com/english/svn/0205/svn020501.html






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