[BlueSky: 277] Re:275 自然農法について


[From] "IWAO, Keisuke" [Date] Tue, 3 Aug 1999 17:04:58 +0900

陸さん、BlueSkyのみなさま、

巖@桃山学院大学です。

 自然農法に対する疑念はまだ消えません。

KUGA, Hitoshiさんが99.8.3 3:44 PMに書きました:
>巖@桃山学院大学さん;
>>  この自然農法というやつなのですが、どうにも合点がいきません。耕さない、
>> 農薬を使わない、はいいのですが、追肥しないのにどうして収量が上がるでし
>> ょうか。
>
>「追肥しない」というのは説明が必要です。
>正確には、肥料としてその田畑外で人為的に作られたものを田畑に「追肥しない」と
>いうことです。
>
> 川口さんの方法では、作物を育てるときにその場に生えてくる種々の植物(いわゆ
>る雑草の類)を根を残して刈り取りその場に置きます。また、収穫物も利用しない部
>位はその畑に返します。それらが小さな生物たちに分解されることにより肥料分にな
>ります。
> 太陽の光を受けて次々に出てくる「雑草」の遺体が集積すればするほどよい「土」
>になっていくので、この方法を続ければそれだけ多くの養分が田畑にたまるというこ
>とになります。

 化学肥料の多用で荒れた土壌が、この方法に切り替えたあと雑草の遺体が分
解してできた有機物で次第によい土に帰っていく、というのなら納得できます。
でもそれは切り替え後一定期間だけの話です。ある程度有機物がたまったら、
あとは定常状態になるのではないのでしょうか。

 雑草も作物も土の中の栄養分を(窒素、リン、カリ)吸収して育つことにか
わりはありません。有機物が分解してできた栄養分を吸って育ったものをその
畑に戻してやるだけでは、栄養分は減らないだけで増えはしないはずです。外
から入ってこない以上、その畑に存在する栄養分の総量は一定ですから、収穫
物が人間に消費される分だけかならず減っていくと思うのですが。

 窒素固定菌などの働きにより、外部(大気中)から土中に供給されるのが大
きいのかな?しかしそれが収穫物による持ち出しを補うほどとは思えないし、
他の元素については成り立たないし。

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 私がよく耳にする自然農法は、福岡正信氏による不耕起、無肥料、無農薬、
無除草という農法で、陸さんが触れられている方法とは除草するかしないかが
違っていますが、まあ基本的に同じものでしょうね。福岡氏の「無為自然を本
義とする」哲学に基づく究極の理想の農法だそうです。少し前には、ビジネス
ジャンプにラデック鯨井氏作になる「SEED」という漫画が連載されていま
したが、この作者も福岡氏のこの農法に感銘を受けて、その辺のことをネタに
して物語を描いていました。市民公園の一角を主人公が草ぼうぼうにしたまま
その中に野菜を栽培しているシーンが何度も出てきました。

 人工的な物も行為もいっさい排除して自然に任せた農業をする、という思想
には感じるものがなくもないし感銘を受けて追従する信者が増えるのもわから
なくはないのですが、それが生産性をどんどん高めるというのには懐疑的にな
らざるをえません。持続可能な農業の一つの形ではあるでしょうが。


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