[BlueSky: 239] RE: [BlueSky: 219] RE: [BlueSky: 201]欧州の原発事情について


[From] "Noriaki Ikeda" [Date] Sun, 1 Aug 1999 16:21:20 +0200

細谷さん、玉奥さん、みなさん、こんにちは。
ドイツフライブルク大学森林学部の池田です。

細谷さん:
>玉奥さんwrote:
>>ドイツやヨーロッパ諸国はフランスの電力政策をどのように思って
>>いるのでしょうか。世間話ではどうでしょう−−−細谷さん

>あ,何かご指名が...,でも私よりフライブルク大学の池田さんの方が詳
>しいと思います(^^;)。うまく聞き出せんかった(;_;)。

私の専門ではないので、詳しくは知りませんが、ちょっとだけ新聞で読んだこと、
友人や知人から聞いた話しを書いてみます。

フライブルクは、フランスの原子力発電所に対して敏感にならざるを得ない町です
。というのは、フライブルクは、フランスのアルザス地方まで約20キロという、
地理的にも、文化的にもとても近いところにあります。アルザス地方のドイツ国境
沿いにある原子力発電所も目と鼻の先です。風は主に西のアルザス地方のほうから
東のフライブルクのほうに吹いてくるので、フライブルクは、何かあった時に被害
を受ける確率が非常に高い場所です。原発反対運動を行なっている市民グループも
いくつかあります。大方の市民は原発のことをあまりよく思っていないと思います


フライブルクで環境運動が活発になったも、「原発」がきっかけだったそうです。
70年代前半にフライブルクからさほど離れていないある町に原子力発電所の建設
計画が持ち上がりました。この時、学生を中心としていろいろな階層の市民が反対
運動を繰り広げ、連邦政府は結局計画を断念せざるを得ませんでした。

そのあとに起こったチェルノブイリ事故は、この問題に対する市民の意識をさらに
敏感にさせたそうです。この時、ドイツでは大規模なデモが行なわれたそうですが
、フランスではそれほど騒がれなかったそうです。

ドイツ人は議論好きな国民といわれます。実際、にぎやかなパーティーの席などで
も、社会問題、環境問題など真剣に議論しているドイツ人をよく見ます。友達どう
しでお互いを強く批判しあっていても、それはその場だけで、後で気まずくなると
いうことはほとんどありません。ただ、私は「せっかく楽しい席なんだからもう少
し楽しい話しをしてもいいじゃない。」と心の中で思うことがよくあります。それ
は私だけではないようで、他の外国人の留学生達も、ドイツ人の議論好きはちょっ
と極端すぎると思っているようです。ただそういうドイツ人気質のおかげで、ドイ
ツの治安が保たれ、環境運動が成功している、というのも事実です。

隣の国フランスでは環境運動は活発ではありません。治安もドイツと比べたら悪い
です。それは、フランス人の批判精神がドイツ人と比べて低いこと、彼らが、生活
と楽しむ、その場の雰囲気をよくすることに大きな価値を置いていることに、関係
しているのではないかと思います。パリに行った時に、そこに長く住んでいるある
日本人ガイドの方が次のようなことをおっしゃっていました。

「ここ(フランス)では、自分のすぐ傍で犯罪が起こっていても、規則を守らない
人がいても、誰も注意しない、見て見ぬ振りをする。ドイツでは違う。例え自分に
関係がなくても誰かしら注意するし、それでもだめだったら、すぐに警察に届ける
だろう。そうやってお互いに悪いことを注意し合いながら、治安が保たれている。


私も自転車で指定されていない道を走っていたり、信号を無視したりすると、時々
まったくの他人から怒られます。

少し横道にそれてしまいました。エネルギーの話に戻ります。
実は、皆さん驚くかも知れませんが、環境都市といわれているフライブルクも、電
力の約40パーセントをフランスやスイスの原子力発電所からまかなっています。
市のほうは、太陽熱発電、風力、水力発電、ゴミからでるメタンガスによる発電、
廃熱利用など推進していますが、経済的な理由から原子力とはまだ手を切れないで
いるみたいです。こういった複雑な理由から、政治家はフランスの原発を強くは批
判できないのではないかと思います。

また、もうすぐドイツでは電力市場が自由化されます。そうなると、安く電力を供
給できる大手の電力会社が有利になってきます。こういうところは、安い外国の発
電所(原発も含む)から電力を買っています。従来の市営、町営の電力供給会社は
存在の危機にさらされています。それら各地の小さな電力会社は、安さではどうし
ても大手に負けてしまうので、現在「クリーンなエネルギー」を売りに出すなど、
イメージ戦略を試みています。フライブルク市営の電力会社も、「Regio(地
域)」というのを今年の春からはじめました。これは、市民が自由意志によって電
力のタイプを選択できるというものです。「Regio」をせんたくすれば、自分
のところで使う電力はすべてフライブルク周辺のクリーンな発電所(太陽熱、風力
、水力など)から供給されます。また「Regio
プラス」というタイプを選べば、太陽熱だけから電力を供給できます。市民は自分
の意志によって、原子力発電から手を切れるわけです。普通の電気代よりちょっと
だけ割高になりますが、問い合わせは会社が予想したより高かったそうです。現在
、当初の目標顧客数は達成されたと聞いています。

以上が、私が現在知っていることです。政治的なことについては残念ながら詳しく
は知りません。何か情報が入れば、またお伝えします。


池田憲昭
Noriaki Ikeda
Peterbergstr. 31
79117 Freiburg, Germany
tel/fax. 0761/4002053
email. ikeda@uni-freiburg.de


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