[BlueSky: 2353] Re:2350 地域社会と個人


[From] Minato Nakazawa [Date] Wed, 13 Sep 2000 16:57:47 +0900

中澤@東京大学人類生態です。

(件名:[BlueSky: 2350] Re:2345 地域社会と個人に於て)
Mon, 11 Sep 2000 20:43:20 +0900頃,gengorouさん:
> 「短気利己的な行為とは何か?!」を誰にでも理解できるように、
> 明確にされたら、いいのにと思ってしまいます。
似ていますが,短気ではなく,「短期的利己的行為」です。
前回のメールの内容からはちょっと外れるかもしれませんが,わか
りやすい例で説明しましょう。

たとえば,暑い日に道を歩いていて,ちょっと喉が渇いたときにど
うするか? を考えてみましょう。

お金を持っていれば,日本の都市では至るところに自動販売機があ
りますから,まあ自動販売機で缶ジュースを買うでしょう。歩きな
がら缶ジュースを飲んで,近くにゴミ箱がなければぽいっと捨てた
くなるかもしれません。いや,短期的利己的にしか考えなければ,
きっと捨てるでしょう。

ところが,そういう人がたくさんいると,いつの間にか公道は空き
缶だらけという惨状を呈することになります。そうなってみて,歩
きにくいし,汚いし,空き缶に溜まった水を使って繁殖した蚊がた
くさんいるし,で,厭だなあと思って後悔すると。
#もっとも,たまたまそこを通り過ぎるだけの人は,空き缶投げ捨
#ての結果としてその惨状が生まれたという因果関係を意識できな
#いかもしれません。地域社会の消失は,誰にとってもどの土地で
#も通過点に過ぎなくなってしまう危険を意味しますので,こうい
#う因果関係がわかりにくくなる可能性があります。

利己的でないこと,つまり,いわゆる公共心があれば,ぽいっと捨
てることはありませんから,この悲劇は避けることができます。ま
た,長期的にものごとを予測すれば,空き缶だらけになることを避
けるためにはぽい捨てをしない方が,★自分のためになる★という
ことに気づいて,やはりこの悲劇は避けることができます。公共心
というのは,実は長期的利己的戦略の集積としての歴史的知恵の体
系なのかもしれません。

なお,この場合,暑い日に長い間歩くなら喉が渇くことは予測でき
るので,長期的な知恵が十分にあれば,水筒に冷たい麦茶かなんか
を詰めて持ち歩くことができます。誰もがそうすれば,自動販売機
による利益が低下するので,大量の電力を消費して熱を発散する自
動販売機の設置台数が減って,暑ささえ軽減されるかもしれません。
水筒に飲み物を準備して持ち歩く面倒さと,長期的に得られるメリ
ットを天秤にかければ,ぼくなら多少面倒でも水筒を持ち歩きます
が,事情や立場によってはそう選択しない人もいるかもしれません
(その場所を一度だけ通り過ぎるだけの人とか,水筒が買えない人
とか,水筒を持ち運ぶのに障碍のある人とか)。
だからこそ擦り合わせが必要なのですが,地域に対する感覚が大き
く異なっていると,話し合いは平行線になりそうな気がします。地
球は地域の集積なので,より広く考えれば答えは明らかなような気
がしますが,地球社会という感覚は実感しにくいので,地域を再生
することが大事だと思うのです。

最後はちょっと話が拡散しましたが,お答えになったでしょうか?
>げんごろうさん。

=====
Minato Nakazawa, Ph.D. <minato@sv3.humeco.m.u-tokyo.ac.jp>
Department of Human Ecology, Univ. Tokyo
[WEB] http://sv2.humeco.m.u-tokyo.ac.jp/~minato/index-j.htm


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