[BlueSky: 2340] Re:2331 労働と教育


[From] "Y.Kuzunuki" [Date] Sat, 9 Sep 2000 10:59:24 +0900

こんにちは、葛貫@4児の母です。

>中澤さん【2331】:
>地域と社会が教育に冷たいという指摘
>は,多くの都市で地域社会が崩壊している現状を考えれば空疎に聞
>こえます。むしろ地域社会の再生を謳ってほしかったと思います。

この「地域の再生」にも、難しい問題があるように思われます。
「地域のため、皆のため」というスローガンは、耳に心地好いけれど、
私には、この言葉が、一種の脅迫のように聞こえます。
これらのスローガンを大義名分に、自他区別のつかない大人が、
混沌とした状態で自分の価値観を押し付けてきて、同調しない人間は、
「皆」からはずす。「自分のことしか考えていない。」と言われると、一瞬、
怯むのですが、少なくとも、自分のことは考え、自分に関しては責任を
とる覚悟のある人間を作ることが先決なのでは、と思ってしまいます。
地域の再生が、村社会への回帰ではなく、自律・自立した大人がつく
る地域社会を目指すものであってほしいなと思います。

子育て、仕事、介護、死に行く人を看とるということ、揺りかごから墓場
までの諸々のことは、本来、個人的な体験なのだと思います。

「星の王子様」(サン=テグジュペリ、岩波書店)の中に、

「あんたたち、ぼくのばらの花とは、まるっきりちがうよ。それじゃ、ただ
咲いているだけじゃないか。誰も、あんたたちとは仲よくしなかったし、
あんたたちのほうでも、だれとも仲よくしなかったんだからね。
ぼくがはじめて出くわした時分のきつねとおんなじさ。
あのキツネは、はじめ、十万ものキツネとおんなじだった。
だけど、いまじゃ、もう、ぼくの友だちになってるんだから、
この世に一ぴきしかいないキツネなんだよ。」

そういわれて、バラの花たちは、たいそうきまりわるがりました。

「あんたたちは美しいけど、ただ咲いているだけなんだね。あんたたち
のためには、死ぬ気になんかなれないよ。そりゃ、ぼくのバラの花も、
なんでもなく、そばを通ってゆく人が見たら、あんたたととおんなじ花だと
思うかもしれない。だけど、あの一輪の花が、ぼくには、あんたたちみん
なよりも、たいせつなんだ。だって、ぼくが水をかけた花なんだからね。
覆いガラスもかけてやったんだからね。ついたてで、風にあたらないよう
にしてやったんだからね。ケムシを-----二つ、三つはチョウになるよう
に殺さずにおいたけど-----殺してやった花なんだからね。不平もきい
てやったし、じまん話もきいてやったし、だまっているならいるで、時には、
どうしたのだろうと、きき耳をたててやった花なんだからね。
ぼくのものになった花なんだからね。」


・・・・中略・・・・


「あんたが、あんたのバラの花をとてもたいせつに思っているのはね、
そのバラの花のために、ひまつぶししたからだよ。」(キツネの言葉)

という一節があります。


生物は普通、生まれてきて、(育ててもらって)、産んで、(育てて)、
(看とって)、死ぬという経過をとる。( )は、しないものもいるし、
人は、産まないことを選択する場合もありますよね。
生物として、基本的なこと(食べるために働き、食べて、排泄して等々)
をこなす以外の時間を、何で暇潰しをするかは、基本的に個人の自由
なのだと思います。

でも、地域や公がサポートするなら、「だって、ぼくが水をかけた花なんだ
からね。覆いガラスもかけてやったんだからね。ついたてで、風にあたら
ないようにしてやったんだからね。ケムシを-----二つ、三つはチョウにな
るように殺さずにおいたけど-----殺してやった花なんだからね。不平も
きいてやったし、じまん話もきいてやったし、だまっているならいるで、時
には、どうしたのだろうと、きき耳をたててやった花なんだからね。」という
所謂、鬱陶しい役割を肩代わりするというかたちではなく、個人への過剰
な負荷を緩和しつつ、そのような鬱陶しいことを通して「大切に思う心」を
実感できる関係を育む方向へサポートした方がいいのでは、と思います。

自分にとって、特別なバラの花を持つことにより、他の十万のバラの花を、
それぞれ特別に思っている人がいるかもしれないことに気付き、それぞれ
の「想いや痛み」を想像できるようになり、他の十万のバラの花も大切に
するとまでは行かなくても、損なわないように気を付けるようになるのでは、
と思うのですが・・・・・。

地域や公が、親切そうな顔をして、家族のあり方や価値観に、どこまで
干渉してくるのか、ちょっと、怖いものがあります。



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