[BlueSky: 2319] 社会参画・労働体験の義務付け Re:2318 学生にボランティア活動


[From] Minato Nakazawa [Date] Wed, 06 Sep 2000 12:29:57 +0900

中澤@東京大学人類生態です。

(件名:[BlueSky: 2318] 学生にボランティア活動に於て)
Wed, 6 Sep 2000 11:48:19 +0900頃,yuichiro komiyaさん:
> 学生にボランティア活動などの奉仕活動を義務づける法案が
> 検討されているそうです。
ボランティアは自由意志で行うものだから,義務づけられません。
語義矛盾します。

> 小・中学生には2週間、高校生には1カ月の奉仕活動、将来的に
> は、満18歳の全国民に1年間の奉仕活動などを義務づけること
> が提言されているとか。
元となった教育改革国民会議の第一分科会のレポート
http://www1.kantei.go.jp/jp/kyouiku/1bunkakai/1report.html
では,
|  そのために小学校と中学校では2週間、高校では1ヵ月間を奉
| 仕活動の期間として適用する。これは、すでに社会に出て働いて
| いる同年代の青年達を含めた国民すべてに適用する。そして農作
| 業や森林の整備、高齢者介護などの人道的作業に当たらせる。指
| 導には各業種の熟練者、青年海外協力隊員のOB、青少年活動指導
| 者の参加を求める。これは一定の試験期間をおいてできるだけ速
| やかに、満1年間の奉仕期間として義務付ける。  そこで初め
| て青年達は、自分を知るだろう。力と健康と忍耐する心を有して
| いることに満足し、受けるだけではなく、与えることが可能にな
| った大人の自分を発見する。
|
|  障害者もできる範囲ですべての奉仕活動に加わるから、彼らもま
| た新しい世界を発見し、多くの友人を得るだろう。
|
|  私たち人間はすべて生かされて生きている。
|
|  誰があなた達に、炊き立てのご飯を食べられるようにしてくれた
| か。誰があなた達に冷えたビールを飲める体制を作ってくれたか。
| そして何よりも、誰が安らかな眠りや、週末の旅行を可能なものに
| してくれたか。私たちは誰もが、そのことに感謝を忘れないことだ。
という曽野綾子さんの格調高い名文で語られている通り,生きると
はどういうことかを実感させるための社会参画・労働体験というの
が本旨のようです。この意味では,ぼくは,期間はともかく奉仕活
動(無償労働といった方が実態に即していると思いますが)の義務
付けには賛成したいです。

もっとも分科会内部での意見対立もいろいろあったようです。
第5回会議の議事内容(下記URL)をみると,
http://www1.kantei.go.jp/jp/kyouiku/dai5/5gaiyou.html
理系研究者や芸術家という道を定めた者にとって,18歳の1年間も
他の活動を義務付けられるのは問題だとか,2週間や1ヶ月なら可
能だが1年間の奉仕義務は現実に無理だとかいう意見が載っていま
した。

その意見ももっともだと思いますし,一方では,ゴミ処理とか高齢
者介護だったら1ヶ月でいいかもしれませんが,農作業については,
水田や畑でも1年間やらないとわからないような気もします。果樹
園だったらもっと長いスパンで考えなくてはいけないでしょう。期
間については難しいところです。

> どういった奉仕活動をさせるのか(消防団、予備自衛官、介護な
> どの案が出ているらしい)
案というよりも,朝日の記事では,ある与党幹部の談話となってい
ましたね。上に述べた提案主旨からすると,随分偏った談話と思い
ます。こうして原案が良くても政策レベルになるとゆがめられてい
くことは多いような気がします。注意深くチェックしていく必要が
あると思います。
# それでもこうしてWEBで原案を見られるようになったおかげで,
# 以前より随分ましですが。

なお,教育改革国民会議は「国民会議」という名称からしてPIを
やるべきだろうと思ったら,やはりやっていました。
http://www1.kantei.go.jp/jp/kyouiku/0905ikenbosyuu.html
によると,一日教育改革国民会議として,広く一般からの意見を募
集するそうです。

=====
Minato Nakazawa, Ph.D. <minato@sv3.humeco.m.u-tokyo.ac.jp>
Department of Human Ecology, Univ. Tokyo
[WEB] http://sv2.humeco.m.u-tokyo.ac.jp/~minato/index-j.htm


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