[BlueSky: 2247] Re:2212 Re2136 命の軽さ


[From] Ken Goto [Date] Sun, 20 Aug 2000 18:37:04 +0900

青空MLの皆さん
                     後藤@帯畜大です。

ゲンゴロウさん【2212】:
> 人にとっては、ある海(環境、組織、人)に自分の気持ちの全てを
> かけてしまうことが、危険かもしれないかもと考えてしまいます。
> 後藤さんがおっしゃっていた言葉「かわいい子には旅をさせよ」は、
> 海に頼るな、世界が変わってもぶら下がるのは自分だけにしろ!
> という意味なのかもしれません。
> しかし、これは皮肉なことです。
> 人には、禅問答のような結果になってしまうようです。
> 「海と同化しなければうまく泳げない!しかし海と同化し過ぎるな!」

「かわいい子には旅をさせよ」には、さまざまな意味があると思われま
す。先回に引用した理由は、親や周りの大人による「与えすぎ」を戒め
る意味合いにおいてでした。精神的な強さ、知的な強さの育成にとって
「与えすぎ」は弊害である、と。

今回、ゲンゴロウさんは、ちょっと違った意味合いで引用されましたの
で、その線で思いつくことを述べたいと思います。

環境に対する「同化」という点なのですが、、、

ゲンゴロウさんが取り上げた二律背反的な矛盾(皮肉)は、「海」という
言葉で一元的な環境を表現してしまったためだ、と考えることもできま
す。

つまり、旅に放り出された子どもが身につけることが「できるかもしれ
ない」ことのひとつは、多様な価値観との共存です。箱入り娘でも、多
様な価値観を認めることはできるかもしれないでしょうが、頭でっかち
になりがちでしょうから、「認める」レベルは理性的な段階にとどまり
がちでしょう。

これに対して、旅に出た子どもは、生活レベルで多様な価値観と折り合
いをつけざるを得ない状況におかれます。そこでは、人種、性、職業、
年齢、思想・信条を超えた、動物的生命としての「人間の基本」が重要
な因子になっているであろう、と思われます。

ゲンゴロウさん【2212】:
> 私の考えは、人間を優秀という視点から物事を考えていますが、
> そのことを小宮さんが「人間は動物と変わらないちっぽけな存在」と
> 言ったのことに気が付くと、なんか私と違った境地を感じざるを得ま
> せん。
煩悩の有無(または強さ)を「優秀性」の尺度とすれば、人間は確かに
優秀です、ね。

・・・ま、定義次第、ということです。「猿知恵」を優秀性の尺度とし
ても人間の方が優秀かな?「思想性」や「良心」を尺度とすれば、
人間は劣等かな(「思想性」については異議あるかも)。

さて、ご存知かもしれませんが、「利己的なサル、他人を思いやるサル」
(フランス・ドゥ・ヴァール著、西田利貞ほか訳、草思社、2200円)
をお奨めします(原著は、GOOD NATURED, The Origins of Right and
Wrong in Humans and Other Animals, Frans de Waal, Harvard Univ
Press, 1996)


後藤 健
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生命を考える http://www.obihiro.ac.jp/~rhythms
帯畜大 生物リズム学 Phone (& Fax): 0155-49-5612


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