[BlueSky: 2149] Re:2148 エコポイント・チェック( Re2133 )


[From] Minato Nakazawa [Date] Thu, 13 Jul 2000 18:25:51 +0900

中澤@東京大学人類生態です。

(件名:[BlueSky: 2148] Re:2147 エコポイント・チェック( Re2133 )
に於て)
Thu, 13 Jul 2000 17:52:38 +0900頃,Itsuki TANAKAさん:
> ところで、合成洗剤より石鹸の方が環境負荷が少ない理由が、
> 私には良くわかりません。使い方の問題であって、石鹸が優れているとは
> 思っていなかったのですが。勉強不足です。
出典である,高月紘編著「自分の暮らしがわかるエコロジー・テス
ト」講談社ブルーバックスを読むとわかるのですが(ぼくの読解力
が足りないのか,わかりにくい表現ですが),必ずしも石鹸がすぐ
れているわけではありませんし,評点のつけ方や項目は適宜見直し
を行うべきだということは著者たちも認識しています。

この評点は,コンパラティブ・リスク・アセスメントという手法に
従って,国立環境研究所を中心とした環境研究の専門家たちが行っ
たリスク評価による重み付けです。環境負荷そのものだけではなく,
ライフスタイルの変更へのターニングポイントとしての重要度など,
象徴的な意味も加味されているようです。

石鹸と合成洗剤については,「合成洗剤の方が石鹸よりBOD値が低
く(合成洗剤25 gで0.22 gTOC/g,石鹸45 gで0.47 gTOC/g),一見
環境にやさしそうに思える。しかし,合成洗剤は生物分解が難しい
ため,BOD値としては高くないが,逆に生態系には有害なものが多
い。そこで,ここでは水質汚染と有害化学物質の両面から取り上げ
た」と書かれていますが,奇しくも安井至さんのサイト「市民のた
めの環境学ガイド」の今日の記事でもこの問題が取り上げられてい
て,そこで引用されていた横浜国立大学の大矢勝さんのサイト
(http://liv.ed.ynu.ac.jp/~moya/index-j.html)
に詳しい説明があって参考になります。要は使用量とBOD,資源,
生態毒性などを総合的に考えて適材適所で適量使うべきというのが,
最近の環境科学ではほぼ合意のようです。イデオロギー的に石鹸○,
合成洗剤×,というのがあまりにもナイーブなのは明らかです(有
吉佐和子「複合汚染」でも既に指摘されていましたが)。

もっとも,学生実習で水道水のLASを測ってみると水質基準ぎりぎ
りの値がでてきたりするので(精度に問題はあるかもしれません
が),安井さんのサイトにあった「東京に住んでいるならシャンプ
ーなど石油系合成で我慢しろ」というのは,ちょっと言い過ぎのよ
うな気がします。少なくとも上水の取水口より上流に住んでいて下
水が整備されていないところ(東京には無いか?)の人には石油系
合成シャンプーは心情的に薦めたくないです。

=====
Minato Nakazawa, Ph.D. <minato@sv3.humeco.m.u-tokyo.ac.jp>
Department of Human Ecology, Univ. Tokyo
[WEB] http://sv2.humeco.m.u-tokyo.ac.jp/~minato/index-j.htm


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