[BlueSky: 2085] ミニマム・ゲノム・プロセス


[From] "Y.Kuzunuki" [Date] Sun, 18 Jun 2000 21:52:09 +0900

こんにちは、葛貫です。

「微生物でプラスチック 通産省「バイオ工場」研究に着手 」
という以下の記事が今日(6月18日)の朝日新聞に載っていました。

通産省は17日、遺伝子組み換え技術を使い、微生物にプラスチック
などの工業製品の原料を作らせる「バイオテクノロジー(生物工学)
工場」の技術開発を来年度から始める方針を明らかにした。
・・・中略・・・
 「ミニマム・ゲノム・プロセス」と呼ばれるバイオ工場の技術は、酵母
やバクテリアなどの微生物から、生存にかかわる遺伝子など最低限
必要な遺伝子以外を取り除き、工業原料を作り出すための土台となる
「汎用(はんよう)ホスト」と呼ばれる微生物を作り出す。この汎用ホスト
に特殊な酵素をつくる遺伝子を組み込み、化学工業製品の原料となる
「バイオポリエステル」などをつくる物質を分泌させたり、蓄積させたり
する。・・・後略・・・

工場の培養タンク等の閉鎖系で使われると思われるので、結果として
開放系で使われることになってしまうことであろう遺伝子操作動植物
より、抵抗が少なく感じられます。
しかし、生存にかかわる遺伝子など最低限必要な遺伝子以外を取り
除いた工業原料を作り出すための土台となる「汎用(はんよう)ホスト」
は、生物というより反応に必要な酵素系の入れ物ような感じなのでしょ
うね。(おまけに自ら恒常性を保とうとし、複製さえしてくれる)

つい先日まで、四方哲也さんの「眠れる遺伝子進化論」(講談社1997年)
を読んでいました。進化は目的論的に達成されるものではなく、必ずし
も「適者生存、効率化による勝ち残り」に向かうとは限らず、「生物間の
相互作用によりもたらされた複雑化による負けない生き残り」というシナ
リオも考えられる、という内容であったように思われました。

他者(種)との関係性を考慮に入れず、「適者生存、効率化による勝ち
残り」というシナリオに基づき、システムの単純化、効率化へ向かって
猪突猛進してきてしまったのではないか、条件を人為的に管理できる
工場では通用するかもしれないけれど、外部からの影響を受けざるを
得ない場合は、単純化された系は脆いのではないかと、心配です。




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