[BlueSky: 2067] Re:2059 実話:見ようとしなければ、けっして見えない環境


[From] "Sato, Kenji" [Date] Wed, 7 Jun 2000 12:56:37 -0400

ゲンゴロウさん、
米国ミシガンに住む、佐藤ともうします。
非常に重い、人に話すには苦しいであろう体験をお話し頂き、ありがとうござい
ます。あまりにも深刻な問題で、ゲンゴロウさんの思いの数パーセントしか私自身に
は到底わからないでしょうが、それでも、何とかレスポンスしたくて、書いていま
す。
ゲンゴロウさんが示唆されている教育問題は、個々の先生の資質とか適性とか、
男女の比率とかの表面的なものではなく、日本の社会のあり方そのものの歪みや閉鎖
性によって現出する、構造的なものであると私は読みとりました。社会のあり方や歪
みなどというと、非常に概念的ですが、「身内を守る」という組織至上主義の気持ち
(組織に対する忠誠心)が個人の論理性や正義感を越えて多くの人の行動を決めてい
るとか、そこまでいかなくても、自分にとってどうでもいいことには、とりあえず多
数の方に付くという日本人の多くが持つ一般的傾向が、学校や地方教育委員会や警察
の対応に現れてしまうんじゃないかと考えました。これらの傾向は「臭い物には蓋
を」、「見て見ぬ振り」を助長します。ゲンゴロウさんが件名につけた”見ようとし
なければ決して見えない”は、非常に示唆に富む言葉です。日本がファシズムに陥っ
た性向は今でも温存されているように思います。いや、むしろ、「会社人間」を培う
ことで強化されているのかもしれません。”人間は他の人や物事に責任が転嫁出来れ
ば(人殺しでも・・)何でもやる”と少し齧った心理学の本か何かで読みましたが、
組織至上主義者はこの落とし穴に嵌りやすいんでしょうね。
私は海外に住み始めて十数年にしかなりませんが、日本人の集団への帰属指向は
強く気付かされます。帰属指向がよい方向に向けば企業の強さになり、集団としての
まとまりの良さになるのでしょうが、悪い方に向けば個の圧殺や、怒濤のように一方
向になだれ込むレミングになってしまう。中国人も、アメリカ人も、ヨーロッパ人に
も、これほど組織に対して従順な人々はいないように思います。どうして、日本人は
これほど集団に帰属したがるのでしょう?”仲間はずれ”を怖がるのでしょう?

話は変わります。私の8歳になる息子は現地の英語の学校で教育を受けていま
す。こちらの学校で驚かされる事は、学校に親が見学に行くのは何時でも自由です。
それどころか、親がクラスに入って手伝う事を勧めています。非常にオープンなので
す。親の要求によって先生が代えられたり、学校を移ったりと言うことも結構あると
聞きました。親たちも自分の金(税)で学校を運営しているという意識が高いのか、
よく行事に参加しています。(ファンドレージングとか言ってよく寄付を募られます
が。)・・・まぁ、今まで息子に問題がないようなので、ゲンゴロウさんのような暗
部を見ていないだけかもしれません。でも、このオープンさや、自分たちのお金で学
校を運営しているという意識の何分の一かでも、日本に持ち込めたら少しは日本の、
ガチガチに凝り固まった学校組織を変えられる・・・・かも。密室は、そこに住む人
に都合のいいように作り替えられます。子供や親の先生への評価が、先生の人事や月
給に反映されなければ変だ!と思う人は、保護者の何パーセントいるのでしょうか
?...かと言って、これから日本に帰って学校組織を変える運動を始める意欲を、
私は持ち合わせていません。ああ!そうか!保護者の多くが、小学校6年生の保護者
であるのは1年限りでしかなく、学校を変えるより、頬被りをして過ぎ去るのを待つ
のが当たり前なのかもしれない。事態はますます深刻化しますねぇこれじゃ。

とりとめのない話になりましたが、日本の様々な教育議論を聞くにつけ、自分の
息子がこちらでお気楽な少年期を過ごしている事をうれしく思います。日本では、夕
刻に市民公園で子供たちが遊んでいる姿をついぞ見なかった。なんか、変だよ日本の
子供。ちなみに、デンマークでは7歳になるまで一切の教育をすることは禁止されて
いるそうで、14歳になるまでいかなる試験も受けないそうです。子供は子供らしく
遊べと言うことらしいです。

佐藤
米国ミシガン州


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