[BlueSky: 1988] Re:1984 少年犯罪


[From] Ken Goto [Date] Tue, 16 May 2000 16:34:28 +0900

青空MLの皆さん
                      後藤@帯畜大です。

お久しぶりです。

一ノ瀬さん【1981】:
>  犯罪白書のような、客観的な統計データを見る限り、少なくとも殺人事
> 件に限って言えば、少年犯罪は増えていません。
> (例えば、http://www.moj.go.jp/HOUSO/hakusho2.htm 少し見にくいが)
>
>  昭和30年代には、毎年400件前後の少年による殺人事件が起きてい
> たのに対して、50年代以降は、70〜100件前後で安定して推移してい
> ます。

ご紹介どうもありがとうございました。

同ページで【少年刑法犯の検挙人員及び人口比の推移(昭和21年〜平
成10年】のグラフ(↓)をみました。
http://www.moj.go.jp/HOUSO/1999/hk1_0.htm#z02

昭和30年代を通じて増加し昭和40年代にはほぼ一定(昭和30年の
倍ぐらい)の値を保っています。

昭和50年代の前半から検挙人員はまた上昇に転じていますが、50年
代後半には減少に転じています。ところが、平成7年からはまた上昇傾
向にあるようです(平成7年の検挙人員は、ほぼ一定値を保っていた昭
和40年代〜昭和50年代前半と同レベルです)。

戦後の全体的傾向としては上昇傾向にあることが読み取れます。
(ただし、昭和45年以降は交通関係業過を除いたグラフになっている
ので、この部分も考慮すると【昭和40年代にはほぼ一定】とはいえな
くなるものと思われます)。

なお、以上のようなパターンは、人口比で表してもほぼ同様な傾向を示
しています。

ところが、少年の凶悪犯(強盗・殺人)についてみると(↓)
http://www.moj.go.jp/HOUSO/1999/hk1_0.htm#z03
確かに、戦後(より正確には昭和30年代後半以降)減少傾向にあるよ
うです(強盗については、平成年代で急上昇しています)。

少年刑法犯は着実に増えているけど、犯罪が「こぶり」になってきた、
ということでしょうか?

いずれにせよ、こうした(公表された)統計的傾向からは読み取れない
事実があるという点も忘れてはならない事柄ではないでしょうか?

例えば校内暴力やいじめは、昭和50年代前半頃から目立ち始めた事象
です。こうした事柄は「刑法犯」扱いされませんが、より日常性が大き
いために人身に強く影響し、その影響範囲も膨大です。

大塚さん【1984】:
>  喧伝される「多発する少年の凶悪犯罪」を受けて、教育改革国民会議
> などにも提言が求められると思いますが、委員の方々には雰囲気に流さ
> れず「自分たちの世代の方が人殺しを多く出している」という冷静な認
> 識を持って審議してもらいたいと思います。

少年期の犯罪がその親の世代の世相を反映しているとすれば、「自分た
ちの世代の方が人殺しを多く出している」としても、その世相は当時の
少年たちにとっては不可抗力であったわけですから、反省材料にはなり
得ません。

ただ、なぜ、ことさらに「殺人犯」の過多だけを論じるのでしょうか?
「いじめ」を受けたものが自殺に追い込まれたり、或いは逆に殺人欲に
駆られたり、という状況が日常的になった昨今の世相は、子どもたちが
生きていくうえでとても苦しい状況にあるだろう、と僕は思うのです。

学校の様子も変わりましたし、家庭環境や地域環境も大きく変わりまし
た。この変化が総体として子供にプラスになるような変化だった、とは
到底思えません。

後藤 健
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生命を考える http://www.obihiro.ac.jp/~rhythms
帯畜大 生物リズム学 Phone (& Fax): 0155-49-5612


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