[BlueSky: 196] Re:179 緑の革命/新しい形質の導入


[From] Shigeru Hoshino [Date] Wed, 28 Jul 1999 07:24:42 +0900

須賀さん、青空MLのみなさん
 はじめまして、本日、「青空MLが環境論MLの管理運営方針に対して厳しい
批判の意図を持っているものと判断しました。それ故、環境論MLの現会員の方で、
青空MLの発起人もしくは賛同者として名前を連ねている方については、環境論ML
の管理運営方針に賛同する意思をお持ちかどうかを確認するため、一時退会して
いただく手続きをとることとしました。」と言う理由で、環境論MLを強制脱会さ
せられた「星野」といいます。
 県の農業試験場で害虫(線虫を含む)の防除方法の研究をしております。
須賀さんの「緑の革命」に追加しようと思い、書きました。

suka@nacri.pref.nagano.jp (SUKA, Takeshi) さんは書きました:
>わたしもそんなにくわしくありませんよ。緑の革命の弊害そのものについては、
>農学関係の方とか、開発、食糧、人口などの問題の専門家の方がいらっしゃれば
>そういう方に説明していただくのがいいでしょうね。後藤さんがわたしの名前を
>だされたのは、生物多様性の観点からひとこと何かいいなさい、ということかな。
 
 これだけ書ければ農業の専門家の出る幕はありません。>


>人間は伝統的に多く種類の植物を野生・半栽培・栽培などのかたちで利用し、
>食糧や薬、その他さまざまな用途に役立ててきました。現代でも途上国の農民
>の多くは、自分たちの畑で意図的に多様な品種を残し、予期しない病虫害など
>に抵抗できるような遺伝的な多様性を保とうとしています。このようにして
>つくりあげられた作物の多様な品種は、バイオテクノロジーなどの近代的な
>技術をもちいて品種改良をおこなうときにも重要な遺伝子資源になります。
>しかし緑の革命をはじめとする近代的な農業改良政策は、品種改良によって
>つくられた単一の作物を広範囲に普及させようとします。
 
 IRRIが作った水稲品種IR8が緑の革命の中心でした。この品種で多収
するためには、灌漑設備の整備、化学肥料の投入が必要となり、今までの伝統
的農法(浮きイネの栽培など)を破壊してしまいました。
 
>化学肥料や農業機械などの導入とセットになっている場合が多いので、農業
>経営のありかたそのものを変えてしまい、その結果として伝統的な共同体を
>破壊し、先進国の企業への農民の従属をもたらし、貧富の差を拡大した、と
>いわれています。単一の品種を広い面積に植え付けると生態学的にも脆弱で、
>新しい病虫害などが発生したときに壊滅的な被害をうけやすくなります。

 緑の革命以降にも、トビイロウンカ抵抗性品種を導入していきましたが、抵
抗性打破系統が出現し、被害をもたらしています。単一品種を栽培して、抵抗
性打破されるというパターンの「育種と病害虫の鼬ごっこ」が今も全世界で続
いています。

>途上国の農民はこのような多様性をうみだし、維持するのに大きな役割を果た
>してきました。遺伝子工学などによって改良された作物には知的所有権がみと
>められるのに対し、途上国の農民にはそのような権利が十分にみとめられて
>いません。これは大きな問題です。しかし最近では、改良プロセスのあらゆる
>段階で農民がかかわるという農民参加型の品種改良などのこころみもはじまっ
>ているそうです。そうした農民参加型の品種改良では、「種の均質性には頼ら
>ず、地元で好まれる種を一揃い改良することができ、農地に現存する遺伝子の
>多様性を維持し、拡大さえする可能性を秘めている」とのことです。
 
 伝統的農法の中で使われてきた品種は、トビイロウンカ抵抗性品種でないに
もかかわらず、伝統的農法ではトビイロウンカの被害は出ていませんでした。
須賀さんの「農民参加型品種改良」とは「伝統的農法の高次段階」に向かうた
めの材料提供として必要なことです。
 伝統的農法の高次段階が「持続的農法」だと私は考えています。
>
>地球規模の生物多様性を保全するには、ローカルなレベルで生物相や生態学的
>なシステムの固有性を保全しなくてはなりません。そしてこれは、単に生物の
>絶滅をふせぐということだけではなく、地域の伝統的な生産様式や文化を尊重
>するということにもつながるものだと思います。生物多様性の保全という課題
>がグローバルな課題でありうるのは、こういう課題をもふくんだものだから
>なのではないかとわたしは考えています。

 USAの研究者が中心となって、持続的農法が研究されていますが、研究は中
南米、中国、東南アジアでの伝統的農法を生態学的にとらえることから始まって
います。日本では「椎葉村の焼き畑の生態学的な研究」や「自然農法、有機農法
稲作での生態学的な解明」などがありますが、この分野の研究はあまり進んでい
ません。

                        広島県立農業技術センター
                       環境研究部 星野 滋
                       739-0151東広島市八本松町原6869
                       TEL 0824-29-0521
                       FAX 0824-29-0551
hoshino@arc.pref.hiroshima.jp


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