[BlueSky: 1939] Re:1938 中山間地農業


[From] fnemoto@agri-exp.pref.fukushima.jp [Date] Mon, 01 May 2000 09:36:21 +0900

佐川さん、さとうさん、みなさん、おはようございます。
ゴールデンウイークに突入しましたが、みなさんはいかがお過ごしですか

> 【佐川さんwrote】
> 現時点では、有機農法などは手間暇かかる割には儲けが少なく、誰もが気軽
> に出来るわけではないでしょう。
> そういう農法に敢えてチャレンジ出来るというのは、農業に対して特別な情熱

> 持っていて、かつ気力も体力も充実している“タフな人”だけですよね。その
ような
> 人を“強者”といったわけで、“タフな人”といった方がより適当かもしれま
>せんね。

確かにそのような人は、自分では成功していると思っているかもしれませんが、
農業というのは、日本の食料を生産しなくてはなりません。このためには、一部
の人が ”タフだから”とか”意志が強いから”成功したといっても、全部の人
がそれを真似ことはできません。
今、日本の農業の中核を担っているのは50代、60代の方々です。
また、農業を考える上で大切なのは、労働経費です。
サラリーマンは、自分の労働を売って賃金を得ていますが、これは、基本的には
農家も一緒です。生産物だけで農家の収益性の話はできません。これから、若い
人たちに農業を職業として取り組んでもらうためには、農業労働をきちんと経費
計算しなくては、いけないでしょう。若者に取り組んでもらうには、3Kでなく
て、自分の労働をきちっと評価してもらった上で、生産物があるというのがやる
気につながるのではないでしょうか。
日本の農業が自給率をこれまで以上に上げるためには、個々の農家がどうのとい
うのではなく、組織として生産性を上げていくのが大切だと思います。
個人でタフな人でも、生産性には限界があります。

以前、こんな話がありました。
ある大規模外食産業チェーンが、「有機無農薬の野菜でサラダを出したい」とい
い、農家と契約栽培をしました。契約ですがら、肥料や農薬等の使用にも制限が
あり、その上で、収穫量いくらに対して契約料いくらとやったようです。
ある年は、たまたま、大豊作で、野菜は市場で値崩れを起こし、農家が捨てるよ
うなことがあっても、契約農家では、契約した金額で生産物を売買でき、結構、
儲かったそうです。しかし、契約した企業としては、市場の倍近い価格で買わな
くてはいけなかったため、翌年は、やや値切ったそうです(それでも高い)。
ところが翌年は、不作で約束収量が上がらず、農家は契約違反だと言われた。
しかも、市場に出回る野菜が少なく、契約料の倍で市場で取り引きされ、農家と
してはそちらに売った方がいいのですが、契約栽培だからと言われ・・・。
ということで、それでなくても、「有機栽培」は通常栽培以上に労力がかかるの
で契約の継続を断念したということです。

また、有機農業、自然農業で作った作物は、通常の作物よりやや高く買ってもら
えます。これは、消費者ニーズに比較して生産量が少ないからです。
仮に、有機無農薬での栽培が増加したとしたら、どうなるでしょうか?
環境に優しくなるかもしれませんが、これまで、高く売っていた生産者の価格も
流通量が増加すれば、安くなります。そうなると、有機栽培のメリットはなくな
ります。これが一番の問題です。
今、円滑に 生産ー>流通ー>消費ー>廃棄ー>生産を進められるのは、農家と
消費者が、一つの輪になっていて、その中ですべてが完結するような生産&消費
社会(いわば、クローズドな社会)で、市場原理が働く社会では、生産者、消費
者ともに恩恵を受けられるのは、難しいかなと思っています。
それと、一般の農家に環境負荷軽減をうたい文句にして、収益が下がってもやっ
ていける人がどれくらいいるかということです。
環境負荷を抑えるということに対し、、そのような意識は、農業生産以外に十分
な収入源があって、農業で失敗しても食っていけるような人がやるもので、農業
で失敗したら生きていけないという農家は考えないと言う人もいます。
だから、、秋山さんの話も、あの人は、宇宙へいっていろいろ考えた人かもしれ
ないが、純粋に農業だけで食っていっている人ではなく、講演したり、本を書い
たり、ほかに収入源があるから、やっているんだといっている人もいるのは確か
です。(まあ、最初に新しく始めようと言う人は、とやかく言われるのもですが)

だらだら書きましたが、平成5年に、ニュースステーションという番組で、立松
和平氏が、宮城県の山間部で、有機無農薬の稲作りをして、環境負荷軽減を訴え
るという特集がありましたが、その年は、大冷害の年で、中山間地域は、冷害に
よる不稔といもち病という病気の大発生で収穫が殆どなかったところもありまし
た。特集では、無農薬で田植えして、草取りする・・・というところまでは番組
でやっていましたが、その後出穂期に「寒さで穂が出ません」というような内容
を最後にうち切ったように思います(記憶違いであれば申し訳ありませんが)。
私としては、その周りで、農薬を実際に使っている農家との比較、立松和平氏は
純粋の農家ではなく、作家なのでそっちの収益はあったかもしれないが、入り込
んだ農家がどうなったのかを聞きたかったです。
ご存じの方いたら、教えてください。
中山間地域の農業、有機農業というのは、いろいろな立場でいろいろな考えを持
っている人がたくさんいると思いますが、一番悪い?のは、どちらか一方の意見
しか伝えないマスコミじゃないでしょうか。
では。


▲前の記事へ ▼次の記事へ △記事索引へ △青空MLトップへ

(注)この記事が最新である場合,上記「次の記事へ」はデッドリンクです。