[BlueSky: 192] Re:186 技術万能論と自由意志


[From] can32960@pop07.odn.ne.jp (yuichiro) [Date] Tue, 27 Jul 1999 23:27:18 +0900

こんばんは、後藤さん。小宮です。

[186]感心して読ませていただきました。いろいろ思うこともあった
ので、全然まとまっていませんが、ちょっと思ったことを書いて
みたいと思います。

後藤さんwrote;
>なお、はじめに、【我が輩は猫である】の一節を引用しておきます
>(この部分だけは是非とも読んで欲しいと思ってます)。

これは知りませんでした。夏目漱石は明治時代に既に西洋イデオロギー
の破綻を予見していたのですね。


>(2)二つの自由(資本の自由競争と個人の自由意志)
>
>さて、話を戻します。
>西洋型テクノロジーの野放しの浸透・拡大という「自由」は、利潤
>追求の自由であって、個人の自由意志としての自由とは何の関係も
>ありません。ここら辺を錯覚していると、浸透・拡大の社会的規制
>に対して、「個人の自由」を侵害するものだ、という錯覚を抱いて
>しまうということは十分ありうることです。

>西洋型テクノロジーの野放しの浸透・拡大によって、奪われてきた
>ものはたくさんあります。その、「奪われた」側の個人の自由と人
>権を想定してみれば、むしろ話は逆なのだ、ということが明らかに
>なると思います。

>つまり、社会的弱者の個人の自由と人権を奪う形で、「技術の進歩」
>という利潤追求の自由が尊重されてきた、というのが現実の歴史と
>なっているわけです。そうであるにもかかわらず、「技術の進歩」
>に対する社会的規制を「自由意志の侵害」であると感じる人がいる
>とすれば、その人は、「技術賛美」を絶対善とする無定見、あるい
>は支配的イデオロギーに対する迎合を表明しているだけである、と
>いって差し支えないものと思います。

うーん、かなり厳しい御意見ですね(^^;企業に努めて給料をもらって
いる技術者としては、恥ずかしいばかりです。科学技術の進歩、利潤
追求の弊害に対しては僕も同じ意見なのですが、ちょっと西洋イデオ
ロギーの弁解もしておこうと思います。

西洋イデオロギーをその基本理念とする企業は確かに利益追求第一主義
で、様々な弊害を生んできました。しかし、これらの科学技術の発展、
経済発展の恩恵のことも我々は忘れてはならないと思います。企業に
よる経済発展は、我々に平和と安定をもたらし、飢餓や貧困を駆逐
しました。国民全体が飢えて、犯罪者がたくさんいるような社会より、
今のこの社会の方がましでしょう。家族と笑いながら暖かい御飯が
食べられるのも、とりあえず命の心配をすることもなくぐっすり眠れる
のも、全て経済発展のおかげ、西洋の技術賛美主義のおかげだと思い
ます。ただ、後藤さんがいわれるように、その技術賛美主義を手放し
で盲信してしまい、この平和な生活が何を犠牲にして成り立っているか、
ということから目をそむけてしまってはいけないと思います。

平和な生活が続くと、往々にして僕らはそれが当然当たり前の権利の
ように思ってしまいますが、この僕らの贅沢な生活のために、夏の
エアコン、豪勢な世界の珍味、様々な薬品、これらのためにいったい
どれだけの環境破壊が行われているか、どれだけの他の生物の命が犠牲
になっているかを自覚しなければならないでしょう。それから後、どう
いうライフスタイルを選ぶかは、個人の価値観の問題だと思いますが、
何も考えずマスコミの流す消費生活に身を委ねるのではなく、少なく
とも正しい知識を得て、自分で考えて自分のライフスタイルを選ぶこと
が大事だと思います。

技術者も、自分は政治家でなく技術者だから…といって何も考えず開発
するのではなく、自分が世界に与える影響の大きさを常に自覚しなけれ
ばいけないのでしょうね。例え企業の中では個人の意見は無力であった
としても。

後藤さんwrote;
>このこと(テーマの社会的規定性)は、企業内開発エンジニアの方々
>を想定すれば、より一層明白でしょう。ある商品(技術)を開発する
>ことは、社員としての義務(?)というか、上司の命令に背くことは、
>首きりを意味する、というか、「抵抗」の自由度は、大学教員や国公
>立研究機関の研究者よりはるかに小さい場合が多いでしょう。
>
> ・もちろん、開発の自由度は企業体質に大きく依存していると思い
> ますが、商品化されるためには企業の利潤目的に適合していなけ
> ればならない、という意味でも、自由度は小さい。

少なくとも、企業の中ではある商品(技術)を開発する目的はただひとつ、
「利益」ですからね。その枠組み、価値観の中ではある程度自由に開発
できるかもしれませんが、少なくとも企業の中にいて、世界平和のために、
とか、環境保全のために、とかの目的で開発はできないと思います。これ
はどこの企業も同じと思うのですが…もしそうでない方がいらっしゃった
ら教えて下さい。

だいぶとりとめのないレスになりましたが、とりあえず思ったことを
書いてみました。

#ところで余談ですが、人間のクローンは既に実用例があるのでしょうか?
この前本屋で人間のクローンのドキュメンタリーを書いていると思われる本を
見かけたのですが(中まで詳しくよまなかった)。もし御存じの方が
いらっしゃったら教えて下さい(単に好奇心で知りたいだけですけど)。

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yuichiro komiya (小宮祐一郎)
e-mail:can32960@pop07.odn.ne.jp


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