[BlueSky: 184] 科学技術の進歩について


[From] can32960@pop07.odn.ne.jp (yuichiro) [Date] Tue, 27 Jul 1999 00:19:31 +0900

水崎さん、MLのみなさんこんにちは、小宮です。毎日暑い日が
続いていますね。

水崎さんwrote;
>我々が、少なくとも現在ぐらいの生活を子孫たちに残してやれると
>したら、より一層の利便性を求めるべきではないかもしれません。

水崎さんの御意見に全く僕も同意なのですが、これに関して少し
思うことを書いてみます。

僕は半導体関係のエンジニアなのですが、日系マイクロデバイスの
最近の記事に、このようなものがありました。

◯128M DRAMの生産量が1999年に急増,64M DRAMは短命に終わる

128MビットDRAMの生産量が1999年に急増し1億1700万個に達する
との予測を「日経マーケット・アクセス」が5月21日に発表した。DRAM
全体に占める128Mビット品の割合はビット換算で11.4%になる。64M
ビット品の価格が再び下落傾向に陥ったため,韓国Samsung
Electronics Co, Ltd.,NEC,東芝などの大手DRAMメーカーが採算性の
高い128Mビット品へ生産をシフトすることが背景にある。ー略ーこうし
た急激な生産シフトの結果,64Mビット品は16Mビット品と同様,短命
に終わる見込みになった。ー後略(木村 雅秀)

(ここでDRAMというのは、ダイナミック・ランダムアクセスメモリ
のことで、パソコンその他に使われている、現在の主要半導体メモリ
です。1ビットで1か0の情報をひとつ持ちます。)

128Mビット品が今後の主要なDRAM品種になる、ということですが、
ここで、DRAMが開発されてから今までの技術動向(学会発表)を
見てみます。

1948年 トランジスタ発明
1958年 1トランジスタメモリセル(1ビットのメモリ)発明
1970年 1KDRAM発表(1K=1000)
1972年 4KDRAM発表
1976年 16KDRAM発表
1978年 64KDRAM発表
1980年 256KDRAM発表
1984年 1MDRAM発表(1M=1000K=1000000)
1986年 4MDRAM発表
1987年 16MDRAM発表
1990年 64MDRAM発表
1993年 256MDRAM発表
「超LSIメモリ」伊東清男著 培風館より

表では分りづらいのですが、大体2.5年で4倍の容量増加を
しています。これは学会発表の資料ですが量産レベルでは、
だいたい3年で4倍になります。もちろんその背景には各企業の
涙ぐましい技術開発があるのですが、なぜこのように急激に
容量を向上させていかなければならないのでしょうか?
それは、前の記事でもありましたが、企業間の競争のため、
すぐにDRAMの値段が下がるから、容量を大きくした製品を
開発して、コストを下げなければならないからだと思います
(ちょうど4倍ずつになるのは、技術的な要因がある)。

さて、容量が3年で4倍ということは、大雑把にいうと、
3年たてばコンピュータの性能が4倍になる、ということです
(本当に大雑把な言い方ですが)。

メモリの容量だけで、科学技術の発展のスピードを計るのは
無理がありますが、どんな分野でもシュミレーションのため
にコンピュータを使用しているので、仮にコンピュータの
性能が科学技術の発展と比例するとした場合、科学技術の
進歩は一定の伸び率で向上しているのではなく、指数関数的
に急激に向上しているということになります。実際、僕と
してはこの考えは体感できます。子供のころの一年と今の
一年では技術の進み方が全然違います。そして、その進み方は
ますます早くなっている。

その進歩に伴い、我々にその恩恵、電気製品その他の様々な
製品が供給されます。我々が必要であろうとなかろうと、
大規模なマスコミのCMによって、我々の購買意欲を高められ
ます。売らなければ利益にならないのですから。科学技術の
進歩は昔は社会のニーズによって進められていたが、今は科学
技術の進歩によって我々のニーズが決定されているのです。

ところで、僕は今年はエアコンを使うまいと思って(水崎さんは
今まで使っていなかったのですね!)扇風機を買ったのですが、
最近の電気屋にある普通サイズの扇風機は全てマイコン制御に
なっていました。僕は結局リサイクルショップで昔の押しボタン
式のシンプルなものを買ったのですが、全く不具合はありません。
扇風機をマイコン制御にしてまで「便利な」製品を僕らに売り付
けなくてはいけないのでしょうかね(なんて、作っているのは僕
なんですが…)


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yuichiro komiya (小宮祐一郎)
e-mail:can32960@pop07.odn.ne.jp


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