[BlueSky: 1639] Re:1634 農水省の資料から見た日本の食料事情


[From] Minato Nakazawa [Date] Tue, 04 Apr 2000 12:37:57 +0900

中澤@東京大学人類生態です。

(件名:[BlueSky: 1634] Re:1614 農水省の資料から見た日本の食料事情に於て)
Tue, 4 Apr 2000 00:38:54 +0900頃,Yoshiyuki Aizawaさん:
> 「将来食糧不足になるのは必ず動物性蛋白質である」
今日届いた本で,川端裕人「緑のマンハッタン」(文藝春秋)2000年3月20日刊行
は,ニューヨーク在住のディープエコロジストとかアニマルライツの人とかの
生活や考え方を追った本なのですが,中に完全菜食主義者であるveganを扱った
章があって,veganの運動家パメラ・ライスがveganを勧める根拠としていくつか
上げている中に,

(8)もし人類全員が菜食主義者になったら現在の農作物の生産量でも理論的
には百億の人々を養うことができる。これは二〇五〇年に人類が達すると考え
られている人口に等しい。しかし,現実には現在でも八億四千万人の人々が
栄養不足に苦しみ,五万人の人々が飢餓の状態にある。

というのがありました。たしかにveganであれば動物性タンパクの不足という
事態が来ても狼狽しなくて済みますし,みんながveganになれば動物性タンパク
だけは不足しないで済みそうです。もっとも,veganが健康で生きてゆくため
にはコバラミンのサプルメントを摂らなくてはいけないとか,また別の環境負荷
をかける可能性はあると思いますし,「みんなが」という点がローカリティを
無視あるいは軽視しているのが気になりますが。
#もっといえば,このMLで何度か指摘した分配の偏りや,食文化の
#問題を無視した議論なので,「理論的には」養えるということに
#どれほど意味があるのか疑問です。

ちなみに,栄養学的にきちんとした知識をもって厳密に管理して食べ物を
選べば,veganでもコバラミン以外は十分に摂取できるそうです(論文に
よってはヨードも欠乏する可能性があると指摘していますが)。いずれに
せよ,日本ではペスコベジタリアン(魚介類は食べる)的な食生活をすれば
いいのではないかと思うのですが,今度は環境ホルモンの汚染が心配とか
いう話になりそうで,なかなかうまい解決策はないですね。

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Minato Nakazawa, Ph.D. <minato@sv3.humeco.m.u-tokyo.ac.jp>
Department of Human Ecology, Univ. Tokyo
[WEB] http://sv2.humeco.m.u-tokyo.ac.jp/~minato/index-j.htm


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