[BlueSky: 1612] 農水省の資料から見た日本の食料事情 ( 食料自給問題)


[From] can32960@pop07.odn.ne.jp (yuichiro) [Date] Thu, 30 Mar 2000 23:46:44 +0900

みなさんこんにちは。小宮です。

[1469]で長縄さんが話されていた日本の食料自給問題をずっと考えていたのですが、
[1596]で紹介した「お米のまめ雑学」のサイトに、日本の食料自給率の推移の
グラフ(農水省資料)が載っていました。それによると、

○食料自給率の推移
1960年 82%(カロリー自給率)-79%(穀物自給率)
1975年 50%-30%
1997年 42%-29%

1960年から日本の食料自給率はずっと下がり続けています。これはなぜなのか?
農水省のサイトに日本人の食生活の変化の資料があったのですが、

○食料需給表 1人1日当たり供給熱量の推移(Kcal)
http://www.maff.go.jp/soshiki/kambou/tyousa/day-cal.html
------------
1965年-1,089.7(米)-156.9(畜産物)-159.0(油脂類)-292.3(小麦)
1980年- 770.0(米)-307.8(畜産物)-319.5(油脂類)-325.0(小麦)
1989年- 686.4(米)-390.2(畜産物)-360.7(油脂類)-319.2(小麦)
1995年- 659.6(米)-433.8(畜産物)- 367.6(油脂類)-329.7(小麦)

1965年-130.5(いも・でんぷん)-196.3(砂糖類)- 98.5(魚介類)-2,458.8(計)
1980年-151.8(いも・でんぷん)-244.8(砂糖類)-133.4(魚介類)-2,561.5(計)
1989年-200.6(いも・でんぷん)-220.8(砂糖類)-133.2(魚介類)-2,634.0(計)
1995年-199.3(いも・でんぷん)-200.5(砂糖類)-138.9(魚介類)-2,637.8(計)
-----------

30年で、米の消費量は60%に減少、代わりに肉類は280%、油脂類は230%まで
増加しています。他はさほど変化がないので、米を食べなくなった分、肉、油脂
類の摂取が増えたということでしょう。1965年は、総摂取カロリーの1/2弱を米
からとっていたので、水田も多く必要だったが、だんだん皆の米消費量が減って
いったため、米が余り、生産を抑えて米の価格を安定させるため減反せざるをえ
なくなった。そして、足りない畜産物の飼料を、海外から輸入するようになって
自給率が下がっていった、というところでしょうか。1993年からミニマムアク
セスがかせられ、また関税による輸入自由化もはじまるため、国内の水田の面積
はますます減少していき、転作等の措置をとらない限り、自給率低下はますます
加速されるように思えます。

また、次の資料(「お米のまめ雑学」-農水省資料)では、

○海外に依存している作付け面積1200万ヘクタール(平成8年)
小麦242
とうもろこし215
大豆199
その他作物204
飼料360

国内作付け面積495万ヘクタール(平成8年)

日本が輸入している全作物の作付け面積は、現在の日本の総作付け面積の2.4倍!で
あることが分かります。これでは、日本の農地をフル回転しても、輸入なしでは全国
民を養うことが出来ない。我々はすでに、自国での供給能力を超える量の食物を輸入
していることになります。つまり、輸入が止まれば、あっというまに日本の食料事情
は破綻するということでしょう。

では、その海外の食料生産の状況はどうなのか?

http://www.maff.go.jp/soshiki/kambou/kikaku/chousakai/3kaisiryou/siryou1/I-4
.html(農水省資料)

○世界の穀物の生産量、収穫面積の推移
(1961年を100としたときの1994年値)
生産量 100→222
収穫面積100→106

○一人当たり収穫面積(アール/人) 
21.0(1961年)→12.2(1994年)

30年間で、作物の収穫面積はほとんど変わっていないのに、生産量が2.2倍になって
いる。つまり、人口が増えた分の食料を単位面積当たりの収穫量を増やすことで、い
いかえれば、農業の大規模化や品種改良などの技術力でカバーしていっているという
ことでしょう。しかし、

[1592]大塚さん
>傾斜地をそのまま畑にしたところで、表土の流出が起こっているよう
>です。合衆国の農業は歴史が浅く、一部では表土の流出が問題になって
>いると聞いていました。どうもその現場を見てしまったようです。

僕もこれが心配です。果たしてこのまま、人口増加に比例して収穫率をあげつつ
けることができるのでしょうか?

農業が原因の土壌劣化の資料も農水省の資料にありました。
http://www.maff.go.jp/soshiki/kambou/kikaku/chousakai/3kaisiryou/siryou1/mokuji.html

○不適切なかんがい管理、肥料の多投入、過放牧、森林の過伐等により砂漠化している面積

 合計      500万ha/年以上
 うちかんがい農地  100〜130万ha/年
 天水農地    350〜400万ha/年
 この他、放牧地でも多くの面積が砂漠化

(資料)UNEP「Status of Desertification and Implementation of the United Nations
Plan of Action to Combat Desertification」(1991年)

◯過放牧及び不適切な農業活動による土壌劣化面積の農用地面積に対する割合
 
 アジア:28%
 ヨーロッパ:19%
 北中米:20%
 南米:22%
 アフリカ:34%
 豪州:19%

(資料)UNEP(1990年)

やはり、無茶な農業は、土壌の劣化を招いていると思われます。

人口増加、表土の流出にいつか技術力がおいつけなくなったとき、世界の食料
生産は破綻すると思われます。そして、前の資料から分かるように、輸入に大
きく依存している日本は、その影響を直に受けるのではないでしょうか?


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小宮 祐一郎
メールアドレス:can32960@pop07.odn.ne.jp


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