[BlueSky: 1595] 「遺伝子組換え作物をめぐる諸問題と政治・経済・社会」の報告


[From] Minato Nakazawa [Date] Tue, 28 Mar 2000 17:56:45 +0900

中澤@東京大学人類生態です。

Tue, 28 Mar 2000 10:42:48 +0900頃,Minato Nakazawa:
> 昨日のシンポジウムの報告は後ほど(今日は忙しいので
> 明日になるかもしれません)。
と書きましたが,何とか今日書けました。以下,
自分のWEB日記(http://sv2.humeco.m.u-tokyo.ac.jp/~minato/myfavor.htm
より転載します。

===(ここから)
予想したよりも聴衆は少なかったが,それなりに議論が盛り上
がって面白かった。呼んでいただいたことに感謝したいと思う>横山和尚さん。

簡単に感想を書いておく。秦野さんの主旨説明にあった,「みんな」のスローガン
という考え方は面白いのだけれど,伝統的な知という視点が入っていないのではな
いかと感じた。鈴木秀夫さんの「森林の思考,砂漠の思考」で分析されているよう
な,風土が自然観に及ぼす影響が,伝統的な知には表れているはずで,スローガン
の地域性はその影響を受けると思う。立川さんのブリーフィングは現状説明や論点
の整理については簡にして要を得たものだったと思うが,解釈のところで科学者と
市民の問題意識のずれがあるのでは? といったときの「科学者」は,技術開発者
のことなのだろうから,そういった方が良かったのではないかと思った。宮田さん
は話がうまかった(農耕が紀元前5000年から始まったという話には,パプアニュー
ギニア高地の根菜農耕はもっと前だとつっこみたくなったが,重箱の隅なので控えた)。現代の価値観を肯定するという前提で,現状の何が悪いかを指摘し,漠然と広まっ
ている誤解をとくのだ,というスタイルが明確で,その限りではわかりやすかった。
ぼくは現代の市場原理を根底に置く価値観そのものに疑問があるので,必ずしも
納得はしないのだが,たしかに科学的には正しい説明であった。もっとも,「子ど
もは組換え体なんです」という言明など,戦略的でありすぎるように思ったが(レ
トロウイルスによる形質導入があるにしてもそれは無作為なので,ヒトの意図とい
う点で見れば,子どもを産むという営為は伝統的な交雑育種と対応するというのが
素直な認知だし,そうであるなら,そもそもヒトの認知を問題にしている以上,
「種はない」という科学的な正しさを言っても,新しい技術の社会による受容には
意味をもたないように思うのだ)。蔦谷さんは米国やEUの長期的農業戦略という
立場からの説明で,それに対して日本の戦略は遅れているというのはもっともだと
思った。白幡さんは,林学の出身とのことだが,議論の建て方が直観的なのが宮田
さんと対極にあって面白かった。「もっともらしいキーワードを並べ立てるほど
うさんくさくなる」という名言が印象に残っているが,こういうふうに考える人
が多い社会に対しては,データで説得するというやり方がそもそも無理なのでは
なかろうか?
===(ここまで)

自分の発表については,
http://sv2.humeco.m.u-tokyo.ac.jp/~minato/gmsympo.html
に発表原案を載せておきました。当日かなり変わりましたが,もっとも言いたい
ことは変わっていません(最後のパラグラフの太字部分)。

=====
Minato Nakazawa, Ph.D. <minato@sv3.humeco.m.u-tokyo.ac.jp>
Department of Human Ecology, Univ. Tokyo
[WEB] http://sv2.humeco.m.u-tokyo.ac.jp/~minato/index-j.htm


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