[BlueSky: 1586] Re:1569 植物工場


[From] Akifumi Murase [Date] Mon, 27 Mar 2000 12:30:55 +0900

邑瀬(ムラセ)です。葛貫さん、みなさん、こんにちは。

植物工場は将来の農業のひとつの流れだと思います。

葛貫さん:
> 光植物工場実験施設を公開 飯田市 (中日新聞)
> 「農工商連携による環境関連産業の創造」を目指して、飯田市が開設した太陽光
> を全く当てず、ナトリウム光だけで葉菜類などを水耕栽培する施設のお話。
> ▽天候に左右されず計画栽培ができる▽無農薬栽培で安全―などのメリットがある。

「無農薬栽培で安全」という言葉が出ましたので、食品衛生の立場から念のた
めコメントしておきたいと思います。

室内で無農薬、電照栽培した野菜を食べる場合、農薬によるリスクはもちろん
ありませんが、微生物についてはまだ注意が必要に思います。培養液を如何に
無菌に近い状態に保つかというのが、植物工場学会などでもしばしば取り上げ
られています。特殊なケースを除き、環境中にいる細菌の多くは人為的に培養
できません。つまり、現在の検査法(寒天平板培地による培養法)ではごく一
部の細菌しか見ていないということです。これでも普通は大丈夫です。しかし、
水耕栽培では(微生物の多様性が高い土壌中に比べて)微生物間の競争が少な
いため、特定の細菌が増えてしまう可能性があります。したがって、「無農薬
だから洗わずに食べられる」という話をよく耳にしますが、衛生微生物学をや
っていた私の感覚では、「できれば洗っておいた方がいいよ。」と言いたくな
ります。よほどの施設(例えば、病原細菌やウイルスの研究所など)でない限
り、無菌というのはまずないと考えていいと思います。

即危ないという話ではありませんが、「野菜は食べる前に洗う」という基本的
なことは続けて欲しいと思います。

> 自然とは独立した人為的な管理の元で生産する、内水面養殖漁業と同じ方向性を
> 持つ、農作物の工場ですね。この産物を人間が食し、廃棄物・排泄物を肥料として
> 生産ラインに戻すという循環が成り立つなら、このような方法もいいのかも、と思い
> ました。

水耕栽培の培養液は通常は無機質肥料を使います。有機質肥料は高価ですし、
栄養成分のコントロールも難しいので安定した収量が望めません。(このこと
は実は普通の畑でも言えることですが。)無機質肥料でも施設内で循環させて
管理することで、畑に比べて効率よく使うことができます。しかし、培養液で
作物の病原菌が広がってしまうのを避けるため、循環にも限度があります。そ
こで、培養液の滅菌が重要になってきます。ですので、このような研究は「食
品衛生のため」というより、「植物の病気を防ぐため」ということになります
ね。

実際に施設に携わっておられる方がおられましたら、コメント頂ければと思い
ます。


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