[BlueSky: 1465] Re:1464 遺伝子操作と農薬


[From] Akifumi Murase [Date] Sun, 05 Mar 2000 16:17:54 +0900

ムラセです。山崎さん、こんにちは。

> 1.食品としての安全性
> 導入したい遺伝子がどこに入るかわからないので、予期せぬ物ができるかもし
> れないというのは、確かに今までの育種と違う点です。しかしながら、予期せ
> ぬものができて、しかもそれが有害である確率は非常に低いと思われます。
>
> どうして確率が低くなるんでしょうか、少し詳しく説明していただけませんか?

目的の遺伝子がどこかに挿入されたとします。GMとして使うものはその遺伝子
が発現して、目的のタンパク質ができている株のみです。この時点では、目的
の遺伝子に関しては予定通り読まれていることになりますね。問題は、遺伝子
を挿入するときに前後の余計な配列も一緒に入ってしまうことです。その余計
な部分が意味を持った遺伝子として読まれ、アミノ酸配列(タンパク質)に翻
訳されるためには、さらにその前後に開始コドンと終止コドン(読み始めと読
み終わりを示す塩基配列)が存在する必要があります。この条件を満たし、仮
に予期せぬタンパク質ができたとします。しかし、タンパク質は食べれば通常
ほとんど消化されてしまいます。つまり、(1) 予期せぬタンパク質ができて、
それが (2) 有害でなおかつ (3) 消化されにくい可能性は、ないとは言えませ
んがほとんど無視できると考えられます。ここで強調したいのは、天然の食品
に含まれる有害物質のリスクを考えれば、上のようなリスクはすごく小さいと
いうことです。

この小さな差をも考慮するかどうかは、GMの必要性の程度とのバランスで決ま
ってくると思います。言い換えれば、プラスαのリスクを冒してまでGMが必要
なのかということです。現時点ではGMが必須だとは思いませんし、生態系への
影響も考えられるので、よりリスクの少ない天然ものを選択します。

> GMを反対する意見の多くは、遺伝子操作という「よく分からない物」を敬遠す
> る本能からきているように思います。
>
> 僕もその本能から敬遠してるのだと思います。ただ、「よく分からない物」
> だからこそ一部の関係者の間で話しが進んでいくのはやはり不安です。
> また、なんとなく慣れて分かった気になってしまうのはもっと恐いです。
> この不安を取り除いていくことも、とても大切だと思います。

同感です。しかし、繰り返しになりますが、天然ものも実は分かっているよう
で分かっていないのです。「なんとなく慣れて分かった気になって」いるのは
ほとんどの食品について言えることで、(ほかを軽視して)GMだけを特別視す
べきではないと思っています。一方で、「一部の関係者」が商業目的だけの集
団になり、データがねじ曲げられる危険性があるので、これについては厳しく
監視していく必要があります。技術が正しく使われているかどうかを審判する
ことも科学者の義務だと思っています。

実際にGMの研究開発に携わっている方がおられましたら、ぜひコメントをお願
いします。


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