[BlueSky: 1374] Re:1373 あまり雇用を生まない土建業


[From] "一ノ瀬 威" [Date] Fri, 04 Feb 2000 01:23:36 +0900

一ノ瀬(尼崎市)です。

 公共土木事業に関する葛貫さんのご意見は、

「無駄な公共事業は将来的には無くして行くべきだが、
 当面、続けざるを得ない。」

という事になるのかと思います。
 実は、このような主張は、私には大変理解し難いのです。そのため、いさ
さか、誤解しておりました。
 例えば、

「将来は無くす」

というのならば、期限を明示するか、無くす際の具体的な条件も明示される
べきだと思います。
 それがなければ、官僚がよく使う、

「前向きに対処する」

っていう言い回しと同じになってしまうのではないでしょうか?
 今出来ないことが、何も変えずにいて、将来になったら出来るようになる
筈がありません。
 「当面は止められない」と言った瞬間に、将来の可能性を葬り去っている
ようにしか、私には見えないのです。
 これは、
「誰あるいは何処が、その案を実行するのか?」
を議論する以前の問題であると考えています。

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「代替案が必要である」という指摘はごもっともです。
 ただ、葛貫さんが求める「代替案」とは、公共事業の廃止に伴う経済・社
会への影響の内、どのような部分についてそれを補うことを求めておられる
のか、実はよく理解できていません。
 とりあえず、以下に一般論を書いてみました。お時間のあるときに、何ら
かのコメントでもいただければ幸いです。


 大まかな方向性として、

1.国全体の経済活動レベルの維持
2.雇用の確保
3.低所得層の生活レベルの維持

の3つのパターンがあり得ると思います。

 1については、これは金の流れる量を維持することと等価ですから、10
00億円の公共事業の中止分を補うためには、別途、何でもいいから100
0億円、国が使うしかありません。
 でも、これでは財政が保ちませんから、減額するしかありません。結局、
何の工夫もしなければ、雇用への悪影響が心配されることになります。

 しかし、同じ金額を政府が使う場合でも、雇用の創出効果は分野によって
異なります。
 減額が避けられなければ、雇用創出効果の高い分野に重点的に政府資金を
投じてやることで、雇用減を抑制することが出来ます。
 これが2の場合で、雇用創出係数を比較して、その高い分野を探す必要が
あります。

 土木建設業は、この雇用創出係数が高い、という主張があるのですが、い
わゆる”関係者”の主張であって、無条件には信用できません。
 売り上げ当たりの雇用数で言えば、一般の製造業は、土木建設よりも小さ
いのですが、より労働集約的な、小売り、サービス業、或いは、介護事業な
どは、もっと雇用数が大きくなります。
 関連産業への波及効果まで含めてみても、土木建設業への重点投下がより
効率的であるといえるかどうか、大変に怪しいと思います。(なお、波及効
果まで含めて雇用数を見積もることは、私には無理です。或いは、横山さん
からその手のデータが出るかと期待したのですが、これも無理だったようで
す。)

 例えば、介護事業にテコ入れした場合、社会全体で見た失業率を、より少
ない金額で、効率的に引き下げることは可能だと思います。(土木建設に携
わっていた方々が、介護業務に従事できるのかどうか、私には分かりません
。が、何れにせよ、何らかの転職は必要であることを、前提とします。同じ
事を続けていては、現状を抜け出すことは出来ません。)

 3は、社会保障費用の増額を意味します。
 [1345]でも述べたように、低所得層の収入を増やすことが目的ならば、社
会保障による給付が、最も無駄が無く効率的です。
 社会保障費用の増額は、国の財政を大きく圧迫していますが、同様の効果
を、土木建設事業で得るよりは、遥かに少ない予算で済みます。
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 と、まあ、具体性のない話ばかりで恐縮ですが、少なくとも、

「土木建設業の雇用創出効果は高いとは言えない」

という点は、頭の隅に置いておいていただきたいと思います。私は、これを
証す、信頼に足るデータを見たことがないので。

”そんなことはないよ”という事を示すデータがもしお持ちで有れば、紹介
していただければ幸いです。


(なお私は「150年に1度の水害に備えるための治水対策など必要ない」
という立場なので、上記では、治水の件は、無視しています。)


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