[BlueSky: 1311] Re:1295 遺伝子操作と農薬


[From] "IWAO, Keisuke" [Date] Thu, 20 Jan 2000 15:31:27 +0900

みなさん、こんにちは。

 いわおです。遺伝子組換えトウモロコシの制限に関しての解釈についてひと
こと。

小宮さんが00.1.19 0:57 AMに書きました:
>Btトウモロコシに関して、次のような記事がありました。
>
>米で殺虫作用ある遺伝子組み換えトウモロコシ栽培に制限 (1/17朝日新聞)
>http://www.asahi.com/0117/news/international17008.html
>
>米環境保護局(EPA)がBTトウモロコシの栽培方法を制限すると発表
>した、という記事です。。周辺で殺虫剤に耐性を持った昆虫が増えるの
>を防ぐため、栽培面積の20―50%を普通のトウモロコシにして緩衝
>地帯をつくるよう規制し、耐性を持った昆虫の出現の監視も求めたそう
>です。米農家も欧州での反発などにより、作物が売れなくなる不安から、
>従来種へ切り替える動きがでているらしいですね。BTトウモロコシは
>最近根からも毒素を抽出していることがわかったのですが、その環境に
>与える影響を考慮して(大きな影響を与えるかどうかははっきり分かって
>いなかったと思いますが)、のことなのでしょうか。

 栽培面積の一部に組換えでない普通の品種を植えさせるのは、ひとえに殺虫
剤抵抗性の害虫の出現を遅らせて、BT組換え作物をより長く使い続けられる
ようにするための予防措置であって、組換え作物が危険だとかそういうことと
はまったく無関係です。そのへんのところ、朝日新聞の記事を書いた人も全然
わかってないようです。

 害虫は、頻繁に同じ殺虫剤をかけられていると、たまたま抵抗性を持ってい
た個体だけが生き残って繁殖し、次第にその殺虫剤をかけられても死なないよ
うに進化していきます。今までの化学農薬では、虫によっては2ー3年で殺せ
なくなってしまいます。BTトウモロコシは農薬を内蔵しているわけですから、
これを食べようとする害虫は下手をすればあっという間に抵抗性を発達させて
しまうことが予測されていて、それを防ぐ一つの手段としてBTを内蔵してい
ない品種を部分的に混ぜて植えることが以前から勧められてきました。

 当然そういう品種は害虫に喰われやすいわけですから、農家としてはなるべ
く植えたくなくて、5%ぐらいでどうか、いやそれでは少なすぎる、とさかん
に議論されていました。今回20ー50%という比率を打ち出したのはかなり
大幅なものですから、それで農家が了承するのだとしたら、その背景には組換
え作物が各国で拒否されているという圧力があるのかも知れません。むろん、
従来の品種の部分には化学農薬を使うことになるでしょう。

 ついでに、
>                  BTトウモロコシは
>最近根からも毒素を抽出していることがわかったのですが、

という点についてもひとこと。「根でもBT遺伝子が機能して毒素を生産して
いる」ということであって、根からその毒素が土中へ放出されているというこ
とではないですよね? つまり、葉だけでなく根も守られている、というだけ
のこと。土中の環境に影響を与えると考える理由はないでしょう。それにその
遺伝子の元になった細菌はもともと土の中に住んでいるんだから、多少土中に
出てもどうということはない。さらにいえば、毒素といってもこの遺伝子産物
は、ガやチョウの幼虫に食べられて中腸で分解されてからしか毒性を持ちませ
んから、影響を考える方が難しいぐらい。

 どうも遺伝子組換え作物に対する批判は的外れなものが多くて、気になりま
す。あ、別に小宮さんが、というのでなくマスコミの論調などがです。

いわお@ももやま


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