[BlueSky: 1258] ライフサイクルアセスメント


[From] samaki@hs.p.u-tokyo.ac.jp (左巻  [Date] Wed, 12 Jan 2000 20:07:29 +0900

 左巻健男です。
tetsuya_yamamoto@petc.re.nsc.co.jp さんは書きました:
>御略歴を拝見させていただくと、ライフサイクルアセスメントについて
>調査されておられるご様子で。
>
>私も、そのあたり基礎から勉強したいと思っておりますので
>是非私のような素人でもわかる程度で紹介していただけると
>助かりますが。
 まだ、素人同様です(^^;)。
 最初に興味をもったのが、日本化学会監修『リサイクルのすすめ』
(丸善 1995 \1600)の安井至さん@東大生産研の講演筆記を読ん
だからです。
 ある製品の地球へのインパクトをどうしたら減らせるか、を分析的
に検討するためにLCAは生まれたとのことです。
 
 さらにLCAに興味をもったのは、牛乳パック連・びん問題研究会
(森住明弘さん@阪大)が紙パックと牛乳びんが生まれてから廃棄さ
れるまでのエネルギーのプラスマイナスを追求してみたら紙パックの
ほうがちょっと優位、という結果を出していたことでした(『リサイ
クル文化』誌49号 1995)。

 それで、佐伯胖東京大学教育学部長の共同学習支援ソフト開発プロ
ジェクトに実証担当として参加して何をやろうかとやったときに中学
生なりにLCAをやらせてみようかと。
 ガラスびん、紙パック、アルミ缶、スチール缶、ペットボトルの5
種類の飲料容器を取り上げて、その容器の材料ができるところから容
器が廃棄されたりリサイクルされたりするまでの一生を考えて環境負
荷をトータルに考えて「それぞれの環境負荷の程度」を考えていくと
いうものです。その専門家の元川さん(日本生協連)の協力を得なが
ら調査や意見交換を行ってきました。いろいろな場面でのエネルギー
消費量を考えたりリサイクルのしやすさを考えたりして深めていく学
習です。
 思っていたより共同学習支援ソフトがちゃちいので(佐伯胖さん、
見てないだろうな)、内容よりそのソフトの使い方に時間をとられま
したが、今月中にはまとめをする予定です。

 つぎは、この学習の最初の頃に生徒に配ったプリントの一部です。

*「環境にやさしい」とは?
(1)リサイクルを考える視点
 私たちは、よく「環境にやさしい」と言いますが、「環境にやさし
い」とは、具体的にどのようなことを言うのでしょうか。
 例えば飲料容器を考えてみましょう。飲料容器が作られ、リサイク
ルされるまでには、いくつかの段階があります。
 1.資源を採る段階(原料は何でしょう?)
 2.容器を製造する段階(材料をつくる、容器をつくる)
 3.その容器をお店まで運ぶ(流通)段階
 4.私たちが使う段階
 5.使い終わって捨てる、あるいはリサイクルの段階
これらの各段階で、
 ・資源を無駄づかいしないか?
 ・水や空気を汚すもの(水環境汚染物質、大気環境汚染物質、温暖
  化原因物質)を出さないか?
 ・エネルギーをたくさん使わないか?
 ・生物に悪影響を与えないか?
 ・ゴミになりにくいか?
 ・リサイクルしやすいか?(必要エネルギーは少なくてすむか?)
などを考える必要があります(これをライフサイクルアセスメントと
言います)。
 先に各容器ごとの調査のポイントをあげましたが、これらが全体の
どの部分と関係してくるかをしっかりと理解しておくことが大切です。

(2)どの容器が「環境にやさしい」か?
 どの容器が他の容器と比べて「環境にやさしい」かどうかは、先に
みたように全体的にみないとわかりません。原料調達、製造、流通、
使用、廃棄、リサイクルの各段階と、それらを全体的にみて、「環境
にやさしい」かどうかを考えなければなりません。
 そのためには、その容器の原料採取から使い終わりリサイクルされ
るまでがどうなっているかを調べる必要があります。具体的には、
 ・原料は何か?
 ・原料から容器の材料(紙、金属、プラスチック)をどうつくるか?
 ・材料から容器をどうつくるか?
 ・流通のしくみはどうなっているか?
 ・使ったあとはどうなっているか?
 ・リサイクルはどのようになされているか?
 ・リサイクル率はどの程度か?
は、それぞれの容器についてまず知っておきたい事柄です。

■左巻健男(SAMAKI TAKEO)
■東京大学教育学部附属中・高等学校:化学・理科
■〒164-8654中野区南台1-15-1 電話 03-5351-9050(代)
■電話 03-5351-9659(教官室) FAX 03-3377-3415 
■E-MAIL:samaki@hs.p.u-tokyo.ac.jp
■法政大学工学部兼任講師(理科教育)


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